108 / 189
第3章 パゼーレ魔法騎士団
【107話】 サザレ隊での任務
しおりを挟む
第4中隊・ササレ隊に配属された俺とヴァーリンは今日パゼーレ近辺にて出没して行商人を襲っている獣の猪の討伐の任務を行っていた。
獣は人々を襲う害獣だ。
その中でも猪は人に突撃して死なせたり、物を破壊したりする危険な生物だ。
けれども猪程度なら魔法使いならば恐るるに足らない生物である。
実際にも俺達の隊は既に相当数の猪を討伐していた。
しかし数が多く若干の知性も併せ持つようで猪達はバラバラに散ってすぐ近くの森へと逃げていったのだ。
俺たちも猪達を追ってバラけてしまう、その時偶然にもヴァーリンと2人っきりになってしまうのであった。
「…………っと、これで終わりか?」
逃げていた猪の最後の一頭にトドメを刺した俺は辺りを見渡す。
そこには猪はおらず、俺とヴァーリンだけしかいなかった。
「か、片付いたな……」
猪等の毛皮やら肉は都市に持ち帰り有効活用するらしいため死骸は持って帰る事になっている。そして俺は猪の死骸を集めながらヴァーリンに話しかけた。
「そうですわね、それでは私は隊長達に報告しにいきますね」
ヴァーリンは隊長達と合流して、状況の報告の為、俺から背を向けて離れていく……
「ま、待って……!」
ヴァーリンが俺から離れて行くのがどこか寂しく感じてしまい、俺はヴァーリンを引き止めてしまった。
「なんで──」
ヴァーリンは振り返って止めた理由を聞こうとした次の瞬間だった、ヴァーリン前方の木々が何かしらの衝撃によって一瞬にして吹き飛ばされた。
あと一歩ヴァーリンが前に進んでいたらこの衝撃でとんでもない事になっていたかもしれなかった。
けれど今はそんな事を考えている場合ではない。
この衝撃は誰が出したものなのか、今重要なのはそこだった。
薙ぎ倒された木々の奥から出てきたのは先ほどまで俺たちが倒していた猪の数倍大きい巨大な猪だった。
しかもその猪は魔力を纏っていたのだ。
獣の中にも魔力を扱う存在がいると聞いた事がある、その名は魔獣。
そう俺たちは今、魔獣と対峙してしまったのだ。
魔獣が真っ先に狙ったのはすぐ目の前にいたヴァーリン、彼女に向かって魔力が込められた突進を魔獣は繰り出した。
「──避けろっ!!」
咄嗟にヴァーリンに魔獣の攻撃を避けるように叫んだ。
ヴァーリンはすぐに魔獣の攻撃を避けようと即座に横方向へと飛んだ。
魔獣の攻撃自体はギリギリで避けられたのだが、魔獣の放つ魔力がヴァーリンを襲う。
吹き飛ばされ木に背中から衝突する。
魔獣はさらにヴァーリンに追撃を加えようとしていた。
ヴァーリンは先の衝突による衝撃のせいで魔獣の追撃を避ける事がままならない様子だった。
俺の足はすぐに動いた、魔獣を止めてヴァーリンを助けるために。
魔力を足に流し、通常よりも速く動けるようにして俺はヴァーリンと魔獣の間に入る事が出来た。
後はこの魔獣からヴァーリンを守る事だ。
俺が魔法ブッパしたら辺りに飛び散って被害を出す可能性がある、ならどうするかというと。
魔力を一点に集中させるのが1番だ。
俺は両手を前に突き出してくっ付ける。そして自身の魔力をくっ付けた手に合わせる。
攻撃の矛先を魔獣に向ける。
この瞬間、俺は今まで放った魔法の中で1番の威力を出す。
「──レールガン」
両手の間から放たれた稲妻は一直線上に魔獣の頭部を貫き、魔獣の後方にあった木々をも貫いていった。
大きな音を立て倒れ絶命する魔獣。
とりあえず俺は魔獣を討伐し、ヴァーリンを助けた事に安堵して腰を下ろす。
「あ、ありがとうございました」
後ろから助けてくれた事に対しての感謝の言葉をかけてくれるヴァーリン。
その言葉を聞けるだけでも魔獣を倒した甲斐があったものだ。
今なら……行けるだろうか?
魔獣を倒した事で少し興奮状態に陥っている俺はヴァーリンの方を振り返って……
「よ、よければ今度の休み街に行かないか?」
休日にヴァーリンをデートに誘おうと提案をした。
ヴァーリンの表情は驚いていた、それはそうか。ついさっきまで魔獣と戦っていて倒したらすぐに休日にデートに誘うとか正気ではないな。
「ええっ!いいですわ!!」
しかしヴァーリンの返答は快く承諾だった。
マジか!?OK貰えた!!と内心で俺は喜んだ。
そしてヴァーリンは嬉しそうに……
「それじゃあ私から他のみんなに伝えておきますね!!」
と俺に向かって話した。
……アレ?おかしいな??
「えっっと……みんなって?」
俺はヴァーリンに言葉の意味を聞く。
「ユウトやパートリー、ヘルメンとラードフ……後は一応レイナさんですけど……?」
ヴァーリンはさも不思議そうに学園時代の同期の名前を出した。
デイは知らなかったのだ。ヴァーリンが箱入り娘であり、そういった誘いをデートとして認識出来ないという事に。
「それじゃあ、楽しみにしてますね!!」
笑顔でデイに笑いかけるヴァーリン。
その表情にデイはどこか違和感を感じた。
ヴァーリンは笑っているはずなのに……どこか悲しそうな顔に見えたのだ。
獣は人々を襲う害獣だ。
その中でも猪は人に突撃して死なせたり、物を破壊したりする危険な生物だ。
けれども猪程度なら魔法使いならば恐るるに足らない生物である。
実際にも俺達の隊は既に相当数の猪を討伐していた。
しかし数が多く若干の知性も併せ持つようで猪達はバラバラに散ってすぐ近くの森へと逃げていったのだ。
俺たちも猪達を追ってバラけてしまう、その時偶然にもヴァーリンと2人っきりになってしまうのであった。
「…………っと、これで終わりか?」
逃げていた猪の最後の一頭にトドメを刺した俺は辺りを見渡す。
そこには猪はおらず、俺とヴァーリンだけしかいなかった。
「か、片付いたな……」
猪等の毛皮やら肉は都市に持ち帰り有効活用するらしいため死骸は持って帰る事になっている。そして俺は猪の死骸を集めながらヴァーリンに話しかけた。
「そうですわね、それでは私は隊長達に報告しにいきますね」
ヴァーリンは隊長達と合流して、状況の報告の為、俺から背を向けて離れていく……
「ま、待って……!」
ヴァーリンが俺から離れて行くのがどこか寂しく感じてしまい、俺はヴァーリンを引き止めてしまった。
「なんで──」
ヴァーリンは振り返って止めた理由を聞こうとした次の瞬間だった、ヴァーリン前方の木々が何かしらの衝撃によって一瞬にして吹き飛ばされた。
あと一歩ヴァーリンが前に進んでいたらこの衝撃でとんでもない事になっていたかもしれなかった。
けれど今はそんな事を考えている場合ではない。
この衝撃は誰が出したものなのか、今重要なのはそこだった。
薙ぎ倒された木々の奥から出てきたのは先ほどまで俺たちが倒していた猪の数倍大きい巨大な猪だった。
しかもその猪は魔力を纏っていたのだ。
獣の中にも魔力を扱う存在がいると聞いた事がある、その名は魔獣。
そう俺たちは今、魔獣と対峙してしまったのだ。
魔獣が真っ先に狙ったのはすぐ目の前にいたヴァーリン、彼女に向かって魔力が込められた突進を魔獣は繰り出した。
「──避けろっ!!」
咄嗟にヴァーリンに魔獣の攻撃を避けるように叫んだ。
ヴァーリンはすぐに魔獣の攻撃を避けようと即座に横方向へと飛んだ。
魔獣の攻撃自体はギリギリで避けられたのだが、魔獣の放つ魔力がヴァーリンを襲う。
吹き飛ばされ木に背中から衝突する。
魔獣はさらにヴァーリンに追撃を加えようとしていた。
ヴァーリンは先の衝突による衝撃のせいで魔獣の追撃を避ける事がままならない様子だった。
俺の足はすぐに動いた、魔獣を止めてヴァーリンを助けるために。
魔力を足に流し、通常よりも速く動けるようにして俺はヴァーリンと魔獣の間に入る事が出来た。
後はこの魔獣からヴァーリンを守る事だ。
俺が魔法ブッパしたら辺りに飛び散って被害を出す可能性がある、ならどうするかというと。
魔力を一点に集中させるのが1番だ。
俺は両手を前に突き出してくっ付ける。そして自身の魔力をくっ付けた手に合わせる。
攻撃の矛先を魔獣に向ける。
この瞬間、俺は今まで放った魔法の中で1番の威力を出す。
「──レールガン」
両手の間から放たれた稲妻は一直線上に魔獣の頭部を貫き、魔獣の後方にあった木々をも貫いていった。
大きな音を立て倒れ絶命する魔獣。
とりあえず俺は魔獣を討伐し、ヴァーリンを助けた事に安堵して腰を下ろす。
「あ、ありがとうございました」
後ろから助けてくれた事に対しての感謝の言葉をかけてくれるヴァーリン。
その言葉を聞けるだけでも魔獣を倒した甲斐があったものだ。
今なら……行けるだろうか?
魔獣を倒した事で少し興奮状態に陥っている俺はヴァーリンの方を振り返って……
「よ、よければ今度の休み街に行かないか?」
休日にヴァーリンをデートに誘おうと提案をした。
ヴァーリンの表情は驚いていた、それはそうか。ついさっきまで魔獣と戦っていて倒したらすぐに休日にデートに誘うとか正気ではないな。
「ええっ!いいですわ!!」
しかしヴァーリンの返答は快く承諾だった。
マジか!?OK貰えた!!と内心で俺は喜んだ。
そしてヴァーリンは嬉しそうに……
「それじゃあ私から他のみんなに伝えておきますね!!」
と俺に向かって話した。
……アレ?おかしいな??
「えっっと……みんなって?」
俺はヴァーリンに言葉の意味を聞く。
「ユウトやパートリー、ヘルメンとラードフ……後は一応レイナさんですけど……?」
ヴァーリンはさも不思議そうに学園時代の同期の名前を出した。
デイは知らなかったのだ。ヴァーリンが箱入り娘であり、そういった誘いをデートとして認識出来ないという事に。
「それじゃあ、楽しみにしてますね!!」
笑顔でデイに笑いかけるヴァーリン。
その表情にデイはどこか違和感を感じた。
ヴァーリンは笑っているはずなのに……どこか悲しそうな顔に見えたのだ。
0
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説

初めての異世界転生
藤井 サトル
ファンタジー
その日、幸村 大地(ゆきむら だいち)は女神に選ばれた。
女神とのやり取りの末、大地は女神の手によって異世界へと転生する。その身には女神にいくつもの能力を授かって。
まさにファンタジーの世界へ来た大地は聖女を始めにいろんな人に出会い、出会い金を稼いだり、稼いだ金が直ぐに消えたり、路上で寝たり、チート能力を振るったりと、たぶん楽しく世界を謳歌する。
このお話は【転生者】大地と【聖女】リリア。そこに女神成分をひとつまみが合わさった異世界騒動物語である。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる