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第2章 マジックフェスティバル
【70話】 強くあれ
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真っ赤な夕日に照らされる都市バットル
ゴルディンという都市も、そこが壊滅したなど知る由もない俺はとある場所に来ていた。
というのも昨日、クラックと一緒にいる女子からもらった手紙には特定の場所で待っているようにと書かれてあったのだ。
その場所というのが、試合がやる会場外の裏側というので俺は大人しくそれに従っていた。
ここは少し複雑な構造をしており、出っ張った壁があり周りからはあまり見えない様になっている。
そもそも周りをみるに、ここへ来る人はあまりいないようだった。
俺がそこへ来ると、その出っ張った壁の奥から何やら口論が聞こえてきたのだ。
声的には男と女の声で、色恋沙汰なのだと俺は考えた。
こういう事はプライバシーとかあるだろうから聞かない方がいいと思うのだが、こっちも待ち合わせがある為離れる訳にはいかないのだ。
けれども、俺はこの口論している声をどこかで聞いた気がした。
俺はおそるおそる壁から顔を覗かせて口論している人物をみた。
なんと!そこにいたのは、俺にここへ来るようにと手紙を出した女子とクラックだったのだ!!
なんで言い争いをしているかわからない。
もしかして、あの女子の用事ってこれと関係する事なのだろうか?
「100回くらい言っただろリリノ、俺は決勝戦を辞退しない」
「でも!!それじゃあ……」
決勝を辞退?いったい何の話だ。
「クラックが死んじゃう……」
たった一言が俺の背筋を凍らせた。
「別に問題ない、もういいだろ。」
「よくないよ!!これ以上戦ったら……」
「それに……昨日の試合だって発作が出てたでしょ?」
あぁそういうことか。
昨日のクラックの試合での疑問が解けた。
「お前、いつもより……まさか!」
あっこれヤバいやつ。
「おい!!そこにいるんだろ?出てこいよ!!」
クラックはリリノがいつもと違うのを感じ取ったのか俺の方に向かって呼びかけた。
本当なら出てこない方がいいんだろうけど、出てこなかったらめんどうな事になりそうだと思ったから俺は2人の前に姿をあらわした。
「ッッ!!リリノ、お前やっぱり!!」
俺を見た途端、リリノがやろうとした事を察したクラックはリリノに激昂してリリノに向かって手をあげようとする。
「待て、その手をおろせ」
俺はクラックがリリノを叩く為に上げた手を降ろすように言った。
それは俺がリリノの気持ちを理解出来たからだ。だけども……
「お前とは……全力で戦う」
「そうか……帰るぞリリノ」
俺の少し間があった返事を聞いたクラックは少しガッカリした顔で俺の横を過ぎて帰って行った。
その顔を……俺はどこかで見たような気がした。
少し留まったリリノに対して
「……ごめん」
リリノは何も話さずに早足で俺の横を過ぎて行った。
1人になった俺は帰ろうと振り返って帰寮しようとした。
「デ?ケッキョク ドウスルンダ?」
後ろから声が聞こえた。
俺や、クラックにも気付けなかった存在がここにはいたのだ。
しかも、この片言は……
俺は振り返ってその声の主の顔を見た。
かなり印象的な喋り方と褐色の肌が記憶に残っていた。
そこにいたのは、俺たちを馬車でここまで送ってくれた人だったのだ。
「……ぜ、全力で戦うつもりですけど」
少しぎこちない様に質問を返した。
「イイヤ、ウソダネ。オマエハアイツニマケヨウトシテル」
指を思いっきり指されはっきりと俺に物申した。その言葉に棘を感じた。
正直な話、この人の言ってる事は図星だ。俺はたしかにクラックに負けようとしていた。
「オマエ、ジブンノキモチニクライ ショウジキニナレヨ」
その人は、一言俺に告げた。
その時だった、クラックが俺に見せた表情を前に見た場所を思い出したのは。
中学生最後の体育祭、そこの短距離走で俺はその表情を見たんだった。
俺と走った奴は、俺の事を(相手から一方的な)ライバルと思ってくれて、俺との最後の勝負をしたんだ。
しかしその体育祭の数日前、彼はとある事情で足を怪我してしまった。
みんなが止める中、彼は走った。
そんな彼に勝たせたくて俺は、手を抜いたのだ。それが正しい事なんだと思っていた。
その短距離走の後、彼が俺に向けた表情がまさにさっきのクラックと同じだった。
俺は……その表情と心のどこかにあるモヤモヤの意味が理解出来なかった。
彼の気持ちとその時の俺の気持ちが今なら少しはわかる。
なら、俺がすべきは……
「オマエニタズネル、オマエハドウシタイ?」
その人は、俺を見て笑いながら俺の覚悟を問いただす。
俺のしたい事……それは……
「俺は……勝ちたい!!勝って、もっと強くなりたい!!」
そうだ、俺はあの時本当は勝ちたかったのだ。
彼があそこまでして全力で戦いたいという気持ちに全力で応えたかったのだ。
「ナゼ、ツヨクナリタイ?」
「強くなって……俺は誰かの力になりたい!!」
それに、俺の力はまだ未熟で誰かに助けられてばっかりだ。だからこそ、今度は俺が誰かを助ける番なんだ。
「……ソウカ」
俺と問答をして、男は少し安心したような顔をする。
「ナラ、ハヤクカエッテ アシタノジュンビヲスルンダナ」
さっきまでとは違い、言葉がやさしく感じた。
「わかった!」
そう言ってその場を立ち去る、その心にはきた時よりも強い決心がそこにあった。
◇ ◇ ◇
ユウトを見送った男は深く息を吐いた。
「フゥ、マッタク オレガアンナヤツニ ココマデスルナンテナ……」
「マァ、コレモ"ドウキョウ"ノ ヨシミッテヤツダナ」
彼の名はボーリー、とある国から友人と日本へ留学で来た時に友人と共にこの世界に来た
異世界人である。
ゴルディンという都市も、そこが壊滅したなど知る由もない俺はとある場所に来ていた。
というのも昨日、クラックと一緒にいる女子からもらった手紙には特定の場所で待っているようにと書かれてあったのだ。
その場所というのが、試合がやる会場外の裏側というので俺は大人しくそれに従っていた。
ここは少し複雑な構造をしており、出っ張った壁があり周りからはあまり見えない様になっている。
そもそも周りをみるに、ここへ来る人はあまりいないようだった。
俺がそこへ来ると、その出っ張った壁の奥から何やら口論が聞こえてきたのだ。
声的には男と女の声で、色恋沙汰なのだと俺は考えた。
こういう事はプライバシーとかあるだろうから聞かない方がいいと思うのだが、こっちも待ち合わせがある為離れる訳にはいかないのだ。
けれども、俺はこの口論している声をどこかで聞いた気がした。
俺はおそるおそる壁から顔を覗かせて口論している人物をみた。
なんと!そこにいたのは、俺にここへ来るようにと手紙を出した女子とクラックだったのだ!!
なんで言い争いをしているかわからない。
もしかして、あの女子の用事ってこれと関係する事なのだろうか?
「100回くらい言っただろリリノ、俺は決勝戦を辞退しない」
「でも!!それじゃあ……」
決勝を辞退?いったい何の話だ。
「クラックが死んじゃう……」
たった一言が俺の背筋を凍らせた。
「別に問題ない、もういいだろ。」
「よくないよ!!これ以上戦ったら……」
「それに……昨日の試合だって発作が出てたでしょ?」
あぁそういうことか。
昨日のクラックの試合での疑問が解けた。
「お前、いつもより……まさか!」
あっこれヤバいやつ。
「おい!!そこにいるんだろ?出てこいよ!!」
クラックはリリノがいつもと違うのを感じ取ったのか俺の方に向かって呼びかけた。
本当なら出てこない方がいいんだろうけど、出てこなかったらめんどうな事になりそうだと思ったから俺は2人の前に姿をあらわした。
「ッッ!!リリノ、お前やっぱり!!」
俺を見た途端、リリノがやろうとした事を察したクラックはリリノに激昂してリリノに向かって手をあげようとする。
「待て、その手をおろせ」
俺はクラックがリリノを叩く為に上げた手を降ろすように言った。
それは俺がリリノの気持ちを理解出来たからだ。だけども……
「お前とは……全力で戦う」
「そうか……帰るぞリリノ」
俺の少し間があった返事を聞いたクラックは少しガッカリした顔で俺の横を過ぎて帰って行った。
その顔を……俺はどこかで見たような気がした。
少し留まったリリノに対して
「……ごめん」
リリノは何も話さずに早足で俺の横を過ぎて行った。
1人になった俺は帰ろうと振り返って帰寮しようとした。
「デ?ケッキョク ドウスルンダ?」
後ろから声が聞こえた。
俺や、クラックにも気付けなかった存在がここにはいたのだ。
しかも、この片言は……
俺は振り返ってその声の主の顔を見た。
かなり印象的な喋り方と褐色の肌が記憶に残っていた。
そこにいたのは、俺たちを馬車でここまで送ってくれた人だったのだ。
「……ぜ、全力で戦うつもりですけど」
少しぎこちない様に質問を返した。
「イイヤ、ウソダネ。オマエハアイツニマケヨウトシテル」
指を思いっきり指されはっきりと俺に物申した。その言葉に棘を感じた。
正直な話、この人の言ってる事は図星だ。俺はたしかにクラックに負けようとしていた。
「オマエ、ジブンノキモチニクライ ショウジキニナレヨ」
その人は、一言俺に告げた。
その時だった、クラックが俺に見せた表情を前に見た場所を思い出したのは。
中学生最後の体育祭、そこの短距離走で俺はその表情を見たんだった。
俺と走った奴は、俺の事を(相手から一方的な)ライバルと思ってくれて、俺との最後の勝負をしたんだ。
しかしその体育祭の数日前、彼はとある事情で足を怪我してしまった。
みんなが止める中、彼は走った。
そんな彼に勝たせたくて俺は、手を抜いたのだ。それが正しい事なんだと思っていた。
その短距離走の後、彼が俺に向けた表情がまさにさっきのクラックと同じだった。
俺は……その表情と心のどこかにあるモヤモヤの意味が理解出来なかった。
彼の気持ちとその時の俺の気持ちが今なら少しはわかる。
なら、俺がすべきは……
「オマエニタズネル、オマエハドウシタイ?」
その人は、俺を見て笑いながら俺の覚悟を問いただす。
俺のしたい事……それは……
「俺は……勝ちたい!!勝って、もっと強くなりたい!!」
そうだ、俺はあの時本当は勝ちたかったのだ。
彼があそこまでして全力で戦いたいという気持ちに全力で応えたかったのだ。
「ナゼ、ツヨクナリタイ?」
「強くなって……俺は誰かの力になりたい!!」
それに、俺の力はまだ未熟で誰かに助けられてばっかりだ。だからこそ、今度は俺が誰かを助ける番なんだ。
「……ソウカ」
俺と問答をして、男は少し安心したような顔をする。
「ナラ、ハヤクカエッテ アシタノジュンビヲスルンダナ」
さっきまでとは違い、言葉がやさしく感じた。
「わかった!」
そう言ってその場を立ち去る、その心にはきた時よりも強い決心がそこにあった。
◇ ◇ ◇
ユウトを見送った男は深く息を吐いた。
「フゥ、マッタク オレガアンナヤツニ ココマデスルナンテナ……」
「マァ、コレモ"ドウキョウ"ノ ヨシミッテヤツダナ」
彼の名はボーリー、とある国から友人と日本へ留学で来た時に友人と共にこの世界に来た
異世界人である。
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