やさしい異世界転移

みなと

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第1章 転移!学園!そして……

【13話】 戦闘訓練

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 次の試験の部屋へと歩く。
 すると変わった空間に出る。
 そこにはいくつもの小部屋があった。

 どうやら最後の試験はこの空間で行われるらしい。
 それにしても、試験生……減ったな。
 100人程いた試験生は失格によりいまや60人まで減っていた。

 そしてアーニスが試験生達の前に出てきていつも通り試験の説明を始める。

「さぁ遂に最後の試験だな。それでは最終試験、実力試験の説明を行う。試験内容は単純こちらで呼んだ試験生2人で戦闘を行なってもらう。その勝ち負けによって採点する。
別に負けても失格となる訳ではない。
それでは禁止事項についてだが、ここでの禁止事項は対戦相手の殺害!
再起不能になるまでの攻撃!
そして勝負がついた後の攻撃!
こちらを確認し次第その者は失格とする。
それでは開始する。まずは、2人1組で10組の20人を呼び出す。」

 それでは試験を始める説明が終わって、2人1組で試験生が呼ばれて行った。
 試験を行う部屋は10部屋あり、1部屋につき1組が試験を行うようだ。
 そして……

「次、ユウトとザーコオ4号室で試験を行う来い。」

 意外と早くに呼ばれて俺は指定された4号室の前へと行った。
 4号室の前には男が立って待っていた、それ以外には試験生はいないので俺はその男がザーコオだとわかった。
 そのザーコオという奴に俺は見覚えがあった丸々と太った体型に人を見下した様な顔……

 ザーコオという男は昨日、俺を庭まで呼び出して色々と言ってきた2人組の内の太った方だった。

「来たか異世界人、ようやく調子乗ってるお前を俺がボコボコに出来るぜ。」

 俺を見るなりザーコオは昨日と同じようにニタニタと笑いながら言ってくる。
 また訳のわからない事を言ってる……やっぱり俺こいつ苦手だわ。

「あーはいはい、さっさと部屋入るぞ。」

 真面目に付き合っていると面倒と感じて俺は軽く流して部屋に入る。
 試験する部屋の中は主に白色で思いっきり体を動かせる広さの部屋だった。

 更に部屋には窓が付いており、外からでも試験の様子が見られる感じだった。
 俺達は部屋の真ん中にザーコオとは少し離れて向かい合うように並ぶ、そして試験官が俺とザーコオの間に立つ。

「実力試験を開始する!魔性輪の準備を。」

 そう言われザーコオは魔性輪を指にはめて長い木製の棒がザーコオの手に握られていた。

 そして俺も魔性輪を取り出して指にはめようとするが、やはり魔法が使えないのをバレるのが嫌だが、これ以上待たせる訳にもいかず仕方なく魔性輪を指にはめて俺の人器である錆びた大剣を取り出した。

 その瞬間……

「ギャハハハハ!なんだよその人器!」

 大爆笑しながらザーコオが俺を馬鹿にする。
 やっぱりこの人器を見たら速攻で魔法が使えないのがバレるのか……窓で見ている外の奴等も笑っているのが見えた。

「いやぁ……これは楽勝かな?
魔法の使えない雑魚に俺が負ける筈がないもんな、異世界人とか言われてるけど実際大した事はないね」

 ザーコオは水を得た魚のように畳みかけて俺を侮辱する。
 馬鹿にされるのはいいが、流石にうるさすぎて気分が悪くなりそうだ。
 これ以上こいつに好き勝手言わせない為にも俺は負ける訳にはいかない。

「静かに、それでは実力試験を開始する。始め!」

 そう試験官が宣言され俺は攻撃しようとしたが……
 ズドドドドドッ!
 前から何か飛んできたのを感じバックステップで後方に下がりながら避けた。

 どうやらザーコオの魔法は遠距離攻撃型らしくさっき飛んできたのもそれだ。

 俺はその攻撃を躱わす。
 ……あれ?思ってたより遅い?

 ザーコオが放った魔法の弾は遅く回避するのは全然余裕だった。

 これなら……そう思って大剣を床に置き去りにしてザーコオへと駆ける。

「なっ!?」

 攻撃を避けられまくってるザーコオはその光景に絶句する。

「なんで避けるんだぁ!!」

 やけになったザーコオは魔法での攻撃を続ける、しかしそれは全てを俺は回避する。

「んなぁぁぁぁぁ!!!くるなぁ!!」

 転移補正と数日のディーオンとの特訓で身体能力が上がったおかげでザーコオの攻撃を避け、容易に接近できたのだ。

 ガシッ

 いきなり俺が前に現れた事に困惑して思考が止まって動きが止まったザーコオの右肩を左手でガッツリと掴んだ。

 俺とザーコオの間は近距離であり、このままザーコオが魔法で俺を攻撃したら自分まで巻き添えをくらってしまうと思いザーコオは自分の魔法が出せないと予想した。

 ヒェッと肩を掴まれて怯えた声を出したザーコオ、その顔を見るにもうザーコオは俺に対しての恐怖でもう戦意は無くなっているみたいだ。
 こんなに戦意が無くなっているんだ、これ以上の攻めはいいだろう、このまま腹パンしようとして、その直前で寸止めして降参させるだけで充分だ。

 俺はそう思って右拳を握り締めてザーコオの腹部を殴る素振りをして直前で寸止めしようとした。
 しかし俺はとある勘違いをしていたのだ。

 俺はこの世界に来て手加減をした事が無かったのだ、ディーオンとの特訓はいつも全力で手加減しようものなら死にかねなかったからだ。
 この世界で全力しか出さなかった俺は転移補正によって高くなっていた身体能力を上手く力加減が出来なかったのだ。

 その結果……本来止めるはずだったところを俺の拳は過ぎて行きザーコオの丸々とした腹部に直撃したのだ。

「ガッッッハッッッ……」

 俺の攻撃をもろにくらったザーコオは一撃でノックアウトしたようでそのままザーコオは床に倒れた。
 マジで当てるつもりは無かったのにと俺は困惑しながら倒れているザーコオを見ていた。

「ザーコオ戦闘不能!よってこの勝負ユウトの勝利!」

 そう試験官は宣言した。
 どうやら勝負は俺の勝ちに決まったようだ。
 少し複雑な気持ちではあるが、勝ちは勝ちである。

「ご、ごめんな。本当は当てるつもりは無かったんだ……じゃ、じゃあ先に外に出てるから……」

 と倒れているザーコオに謝罪の言葉を述べて俺は部屋を出ようとした……その時だった。

「俺が……こんな雑魚に……負ける筈が……ないんだァァァ!」

 後ろからザーコオの声が聞こえて魔法の球が俺の横を通り過ぎて行った。
 俺は咄嗟にザーコオの方に振り返って後ろに思いっきり飛んで距離を取って反撃をしようと構えようとしたその時だった……

「捕えろ《スネーク》。」

 俺が後ろに飛んで空中にいる最中に後ろから声が聞こえてたと思ったら俺の横を何かが通り過ぎて行ったのが見えた。
 そして気付いた時にはザーコオは何かに体に巻き付かれて身動きが取れずにその場に倒れ込んでのたうち回っていた。
 よく見るとザーコオに巻きついているものは蛇のようなものだった。
 ただ、普通の蛇とは色合いや姿も違う、それに微かにこの蛇からは魔力が感じられた。
 恐らくこれは誰かの魔法なのだろうと俺はすぐに理解した。 

 カツン、カツンと後ろからその魔法を使ったであろう人物が来る気配がして俺は後ろを振り返った。
 そこにいたのはアーニスだった。
 その表情は誰が見てもわかるような怒りを表していた。

「おい、私は勝負がついた後の攻撃は反則って言ったよな?」

 アーニスのその怒りがこもったセリフによって、ザーコオどころか俺やその場にいた試験官までもが体を固まらせていた。

「ザーコオ、貴様を失格とする。
今すぐ寮に戻り荷物をまとめるんだな。
つれて行け。」

 その場にいた試験官がアーニスの指示によって蛇が巻きついたままのザーコオの体を持って連れて言った。
 途中ザーコオが何か言いだけだったが、アーニスの気迫により話せずじまいでその場を去って行った。

 さっきの魔法はアーニスの魔法なのだろうか?動物を出す魔法かな?

「何をしている、さっさとこの部屋から出て行け。次の試験の邪魔だ。」

 少し考察している俺にアーニスは厳しく俺にそう言い放った。
 俺はその声の気迫に恐怖してすぐさま部屋を出て行った。
 するとすぐに。

「よう、勝ったなユウト。最初はどうなる事かと思ったぜ。」

 出てきた俺に向かってデイが早速話しかけてきた。

「まぁな、それよりそっちは?」

 俺は軽く返事をしてデイの方を聞いた。

「まだだけど……そろそろ……」

 と会話している最中だった。
 デイが試験官に呼ばれて、さっきまで俺が使っていた4号室に入って行った。
 デイの対戦相手は昨日ザーコオと一緒にいた細長いヒョロヒョロの男だった。
 そしてその対戦の結果はというと。

 デイの圧勝であった。

 対戦が開始したと同時にデイの魔法である雷を使った遠距離からの電気ショックにより相手の動きを止めて、そのまま接近して近距離でボコボコにしてほぼ秒殺であった。

 魔力も高くて戦闘面でも強く何より容姿もいいとか結構スペック高すぎたろアイツ……
 そしてすぐにデイが戻ってきて他の試験生のも見てみようという話になり他の試験生を見に行った。
 その中で俺は1つの部屋に目が行った。

 レイナが試験を行なっている部屋だ。

 その部屋の中はなんと猛吹雪が吹いていた。
 どうやらこれはレイナの魔法らしく、吹雪によって相手を近づけてさせ難くして近距離攻撃を防ぎ、遠距離からの攻撃に関しては、レイナが俺との初対面の時に見せた雪の結晶のような盾でガードしていた。

 この対戦は長時間行われていたみたいで相手の魔力が切れたのか、相手は降参をしてこの対戦はレイナの勝ちとなった。

 その後も他の試験生達を見て過ごしていた。
 そして試験も終わりに近付いた頃ある動きがあった。
 試験を行なっていたこの空間がザワついた。
 試験生達が何かを見ている、俺達も試験生達と同じものを見た。

 その試験生達が見ていたのは赤色の髪の少女とキッチリとした服装をした老人の2人組だった。
 そして赤色の少女がこの雰囲気の中、口を開きこう言い放った。

「愚民ども、跪きなさいませ。貴方達が今見ているのはこのパゼーレでも高貴なウォルノン家のヴァーリン・ウォルノンです事よ。」

 何か違和感のありまくりな言葉遣いだがその他人を見下したかのような表情を見てこれだけはわかった……

 あぁめんどくさいのが来たなと。
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