やさしい異世界転移

みなと

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第1章 転移!学園!そして……

【11話】 試験開始!

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 支度を終えた俺は受付会場である食堂へと向かった。
 食堂では受験を受けるべく集まった多くの人がいた。
 見た感じ100人程いて、それ程の人数が受付までの間仲の良い者同士で話しあっており、食堂中にはその話し声で響いていた。

 俺は人混みの中を端から見渡すと黄色い髪が見えひとまず俺はその男の方へと行くことにした。

「おはようデイ、今日は頑張ろうな」

 と昨日知り合ったデイに近づきながら話かける。
 他の人といたら話しかけづらいか、幸いにもデイは一人で受付開始まで待っていた為気軽に話しかけられた。
 デイは俺に呼ばれたのにすぐ気付いて俺の方を向いた。

「おう、ユウト試験の対策は十分か?」

 と親切にもデイは俺への返しでそう聞いてきた。

「まぁ……完璧とまではいかないけどそこそこ自信はあるかな。」

 と答える。
 レイナに勉強を数日間教わってもらって結構多くの事を知る事が出来た。
 そのおかげで筆記の試験に対する不安はあっても自信は結構ついた、レイナがいなかったら俺はこんなに自信はつかなかっただろう。

「そうか……あれ?そういえばお前転移者だよな。勉強はどうした?」

 とデイが何か話そうとした時だった。
 閉まっていた食堂の扉がドーンッ!と勢いよく開いた。
 それに驚いてその場にいた全員がその扉の方を向く。

「おはよう!諸君!!試験の準備はバッチリか!!」

 扉が開いて食堂中に大声が響き渡る。
 その声に驚いて大声の主以外は言葉を失って全員黙った。
 扉の方にはガッツリとした体をした男をはじめとした複数の人が立っていた。

「我々は君達が入学を希望する学園に勤めている教職員だ!今日は君達の試験の試験官としてやって来た!!」

 と物凄くうるさい声で男が話した。
 俺達試験を受ける生徒はともかくその男の周りにいた教職員達までもがその声をうるさそうにして耳を塞いぎ俺を含めた複数人が顔を逸らしていた。
 しかしそんな事を気にもしない男は話をまだ続ける。

「よし!それじゃあ早速試験会場に行……」

「るこーど、お前は黙ってろ」

 先程までうるさくしていた男の声がいきなり止まった。
 なんだと思って俺は顔をその試験官達の方へと向けた。
 先程ルコードと呼ばれた男の前にその男の一回りくらい小さい女性が男の前に進んでいたのだ。

「ここでしきゃいけない説明をすっ飛ばしたな。後は私がやっておく、コイツの頭を冷やさせろ」

 そう女性が言った瞬間、他の試験官がルコードを取り押さえる。

「ちょ、ちょっと待てぇ!まだ試験生達と交流が!!」

 と言いルコードは必死に抵抗するも多勢に無勢、すぐに他の試験官に引っ張られながらうるさく食堂を出て行った。
 それを見送った女性はため息を吐いて試験生達の方を見た。

「それではひとまず自己紹介させてもらおう、私はたった今不甲斐ない試験官のルコードと変わったアーニスだ、試験生の諸君よろしく」

 とさっきのうるさい感じの試験官とは違い冷静で厳しそうな感じの人が出てきた。

「それでは試験の説明を始める。」

 そして試験の説明が始まる。
 さっきのうるさそうな試験官からまともそうな人に変わったからか気分を楽にした人もいたが、アーニスの険しい威圧感が食堂中に蔓延して試験生達はその威圧感を感じる。
 試験生達は威圧感でさっきまで楽な気分だったのが一瞬で真剣な雰囲気になった。

「まずは試験の内容についてだ、試験は3つに分けられて行われる。
 1つ目は筆記試験、これはお前達の学力が我が学園のレベルに付いていけるかを測る試験だ。
 次に魔力値検査、これはお前達の魔法使いとしての潜在能力を確かめる為の検査だ。
 そして最後に実力試験これでお前達の今現在の実力を測らせてもらうこの3つの試験の結果でお前達の合否は決まる。
何か質問のある者はいるか!?」

 と説明が物凄い速さでされた。
 色々な事を言われて試験生達は困惑して何を質問したらいいかわからず質問する人はいなかった。

「よし、質問のある者はいないな!試験の禁止事項等は試験時に確認する。それでは試験会場へと向かう、ついて来い!」

 どうやら試験会場は別の場所らしくアーニスは食堂の扉を開け試験生達をその会場に案内するようでアーニスが先に食堂から出ていき試験生達はその後を続いて歩いていく。
 俺は少しその試験生達に遅れてついて行こうとした時だった。

「ユート、おはよう。」

 と後ろから声をかけられる。
 その声に反応して俺は後ろを振り返って声の主を見た。
 後ろから声をかけてくれたのは綺麗な銀髪が特徴的な可憐な見た目をしているレイナだった。

「おう、おはようレイナ。」

 と見つめている場合ではなかった。
 俺は挨拶を返した。

「試験はどう?大丈夫そう?」

 俺を心配してくれてかレイナが聞いてくれた。
 心配な部分はあるがそれもレイナが勉強を教えてくれた為そんなに心配という程ではなくなったし、レイナの前だから安心させるように。

「あぁ、教えてくれたおかげ様で試験を頑張れそうだよ。ありがとうな。」

 と返しながら感謝の気持ちを伝える。
 それを聞いたレイナは嬉しそうに笑った。

「ユウト……こいつは?」

 俺とレイナが話しているのを見て置いてきぼりになったのを感じたのかデイが話に入ってくる。

「そうかデイとレイナは初対面だったな、紹介するよこっちはデイ、昨日ちょっと世話になってな。」

 俺は2人の紹介をしようとしてまずは掌をデイの方へと向けレイナにデイを紹介した。

「そしてこっちがレイナ。この寮に来て初めて知り合ったんだ。勉強とかも教えてくれてとても親切な子なんだ。」

 今度はデイにレイナの事を紹介した。
 レイナは親切と言われて嬉しいのか少し照れくさそうな仕草を可愛らしくした。
 俺が紹介が終わった後レイナとデイは「よろしく」とお互いに挨拶する。
 2人の挨拶が終わり試験会場へ行こうとアーニスが行った外へ出て前の試験生の後を3人でついて行った。

 しばらく外を集団で歩く。
 その間、俺達3人で話をしながら歩く。

「いやー俺の親勉強教えるのとか下手でさーあんまり成績良くてさ。」

 とデイは歩きながら話す。
 デイやレイナの話を聞くとどうやらこの世界の教育は俺がいた世界とは違って、1小さい頃から家庭で親が教育して15歳になったら学園で教育を受けるという流れらしい。

 この世界いつものとは違う文化を聞いたりして段々とこの世界の事を知っていくのはなんだかいい気分がするな……と思いながら俺もこっちの世界の教育の話をして盛り上がる。

 やっぱり小さい頃から学校に行ってるという事に興味を持っているようだ。
 そんな事を話していると……。

「ねぇ、あれ見て!」

 レイナが前方に指を指して言った。
 その指の先にあったのは白を基調とした大きな建物だった。
 前にいる試験生の集団がその建物に行っているから恐らくそこが試験会場だとわかる。
 その集団は白い建物へと入る。
 中は相当広くて綺麗で見惚れてしまうがそれでも集団はそのまま奥へと歩いて行くので仕方なくそれについて行った。

 しばらく歩いて行くと机が大学の机みたいにたくさん並んでいる部屋に着いた。
 恐らく全ての試験生が入ったのだろう扉が閉まった。

「全員着いたな。
それではこの部屋で第一の試験筆記試験を開始する為に試験の説明をする。
机にそれぞれの名前が書いてあるから自分の名前が書いてある机に座れ。」

 そうアーニスからの指示があり俺達はひとまず分かれて自分の席を探す事にした。
 100人分も席がある為か探すのに手間が掛かったがようやく自分の席を見つけられた。

 俺の席は大体真ん中から少し外れた所にあった。
 そこへ腰をかけて次の指示を待つ。
 次々に試験生達が自分の席を見つけて座っていくのが俺の席から見えた。
 そして全員座ったのが確認出来たのかアーニスが前の教壇へと上がった。

 他の試験官もいたがアーニスのように前に出ず試験会場の両端に監視をするかのように立っていた。

「全員座ったな、それでは筆記試験の説明から始める試験は50分で一回だけ行う。
 次は禁止事項について話す禁止されている事は主に2つある。
 1つ目はカンニング行為だ。
2つ目はこの試験中での魔法の使用だ。
この2つを確認し次第その試験生は失格とし、即座に寮へ戻って荷物をまとめて出て行ってもらう

 試験の解説が行われる。
 まぁ魔法とか今の俺には使えないからとりあえず俺が気を付ける事といえばカンニングだけだな。

 そして試験用紙が左側から配られそれを右隣に渡す。
 試験用紙を前にして心臓がバクバクと鳴っている……どうやら今更になって緊張しているようだ。

「それでは第一の試験、筆記試験を開始する。準備はいいか?それでは…………試験開始!!」

 開始の合図とともに試験生全員が一斉に机にある試験用紙に記入する。

 ついに試験が始まった。
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