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第1章 転移!学園!そして……
【5話】 買い物へ!
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体がとっても軽い。
俺は地下牢から解放され荷物も返され外に出させてもらった。
青く晴れ渡った空、見たことの無い不思議な店が立ち並ぶ街、そしてここが異世界という事実……
店の文字は俺の世界にあるカタカナのようなものだった恐らくさっきセリティアさんに記憶を貰ったから俺の頭でわかる文字に置き換わっているのだと思う。
初めてのものが多く驚きを隠さないでいた。
これから行く先々で何があるのかに少し興味を持ち胸を弾ませていた……ただ俺の隣にいるのが男だって事は気になる所だが。
「どうだ?いい都市だろ」
俺の隣で歩きながら笑いかけてくる男がいる。
この人はディーオンと言って先ほどセリティアさんと一緒にいてバケツを持ってきた灰色の髪の男だ。
なんでもこの都市にある騎士団の大隊長というこの都市で1番強いとされる役職の人らしい。
この人はセレティアさんに頼まれ、俺の生活品の買い物の手伝いや護衛の為について来てくれているそうだ。
「あっ大隊長!今日もお疲れ様です!!」
「おう!」
ディーオンは街でも支持があるのか俺達の近くを通る人達はディーオンに注目し気軽に話しかけてくる人は多くいた。
そんなディーオンの隣を歩く俺はそのついで感覚で見てくる人達もいた。
でも、俺が見た感じこの人は他の人から尊敬されるとは思えない程気が抜けていて陽気てふざけたの感じでそんなに強くは無さそうだなぁと思い俺は怪しむ目でその男を見ていた。
すると、ディーオンは俺の目線に気付いたのか俺の方を向く。その瞬間もの凄い衝撃が俺の背中を襲った。
「なんだ?ジロジロ見てないでなんか言いたいことが聞くが??」
ディーオンは俺の背中を叩きながら気軽そうに言う、しかし叩いたというにはあまりにも威力が大き過ぎてまるで背中が爆弾か何かで爆発させられたような感覚に襲われた。
あまりの衝撃に俺はその場でむせこむ。
さっきの強く無さそうという感想は前言撤回させてもらう、この人めっちゃ強い。
ガバンを背負ってなくてよかった……
とりあえず、何か喋らないとそう思い話す話題を頭の中で探した。
俺はふっと空を見上げた。青空が広がって綺麗だな……ん?青空?
さっき空から見た時にはオレンジ色のドームが広がっていた筈だそれがここからでは確認出来ない。
「えっと……空から落ちてくる時なんか壁らへんにオレンジ色のが見えたなぁって……」
とりあえず疑問を問いかけてそこから話を繋げなくてはそう思い真っ先に浮かんだ事を話した。
「あぁ、そうだったな他の奴と違って空から落ちて来たんだったな。
あれはゾーンと言い、都市を統治する家系……ここならパゼーレ家が代々受け継いで来たこの都市を守る為の結界だ。
無許可で入ってくる者がいれば城に警報を鳴ったり外からの攻撃を防ぐ役割を備えている。
都市の内部からは景観を損なわないよう透明で見え、外側からは警告の為にドームを外側から見えるようにしてるって感じだ。」
と明るい口調で普通に教えてくれた。
先程までの雰囲気や強く背中を叩かれた事で多少の苦手意識があったがなんだか楽に話せそうだ。
「普通の転移者がやってくる時は外から入って来たんじゃなくて元からいた判定になっていてゾーンは反応しないのだが……お前の場合ゾーンの外から転移して無許可でゾーンに入ったから反応されたんだな。」
なる程、ゾーンに反応されたから転移者とは違う対応をされたのか。
「空から見た時、この都市以外にも集落があったんですけどそれは……?」
上空から下を見た際、この都市以外にも何か集落みたいなものがあったのを思い出した。
「あぁあれはあれは独立集落といい、何か事情があってその場所を離れない者達が住む集落の事だ。
偶にこちらから出向いて物品を交易する事もあったりする」
独立集落という名前だから何か差別とかの関係かと思ったが、別にそうという訳ではないらしい。
結構この世界にも事情があるんだな。
「それとお前に1つだけ……」
「チャーチスについてだが、彼をあまり悪く思わないでやってほしい。」
チャーチス、俺がこの世界に恐らく初めてあった男だろう。
茶色の口髭が物凄く生えていてで俺の足に槍を突き刺した男だ。
「彼はだな……セリティアへの信仰が強くてな……
今回暴走してしまったのも来たのが凶震戒の奴らだったらと心配した結果なのだろう俺が言うのもなんだが許してやってくれ」
凶震戒?また知らない言葉が出てきたが、とりあえずそれは後で質問することにして……。
その言葉を聞いて俺の中のチャーチスの印象は少し変わった。
憧れている相手に危険な目に遭って欲しくはない、そんな行動理由に俺は共感してしまったのだ。
なる程なら先程セリティアさんが来た時に見せた恐怖の顔はセリティアさんに対する恐怖ではなく勝手な行動を取った自分がセリティアさんに嫌われてしまう事に対しての恐怖だった。俺はそう捉えた。
そういう理由なら俺は彼に対して怒りの感情をぶつける事が出来ない。
「勘違いはもう解けたましたし、傷も塞がりましたから。大丈夫です。
まぁ苦手意識はありますけどね……」
あはは……と苦笑する。
「……まぁとりあえず服屋行くぞ。お前の格好じゃ目立って仕方ない」
俺の苦笑いをスルーするようにディーオンは近くにあった服屋へと俺を連れて行く。
ディーオンの発言を聞き、俺は改めて自分の格好を見る。
確かにこの異世界に俺と同じような制服を着ている奴はいない、しかも俺のズボンはさっき刺された時に空いたズボンの穴がまだ開いたままで周りから視線を集めるのは当然だった。
視線が気になり俺はディーオンに続いて店に入った。
こっちの世界とは違ってN○KEだとかAD○DASといったメーカーみたいな物は無く柄もそんなにない様な感じだった。
「あっ大隊長!どうかされたんですか?」
「彼の制服、それに普段着なども欲しい。
採寸を頼めるか?」
「はい!喜んで!!」
服屋の店主が出てきてディーオンが要件を伝えると体のサイズ測定が唐突に始まった。
店主である女性は寸法を測る最中、不思議そうにジロジロと俺の方を見ていたのにだいぶ神経がすり減った。
採寸が終わり、ディーオンと店主が話すことがあるそうなので俺は店の外で待機するよう言われて外へ出る。
その際、会話が少し聞こえた余り内容はわからなかったが「転移者」という単語が聞こえたのはわかった。
転移者の事とか他の人に話していいのか?それともこの店が特別なんだろうか?
「キャー!誰かその男を捕まえて!」
そんな事を考えていた時、少し離れた場所で女性の悲鳴が聞こえた。
その悲鳴がした方を振り返ると……倒れている女性と俺の方へカバンを持ちながら全力で走ってくる男がいた。
状況からしてひったくり……あの男を止めないと。
俺はすぐに飛び出して男の進路を妨害する。
「邪魔だっ!どけ!!」
逃走を邪魔する俺に対してひったくりの男は指を真正面にいる俺に指してくる。
な、何してくるんだ?
不思議そうに構えていると男の指が光ったと思ったら光の玉が俺に向かって放たれたのだ。
「あぶねっ!!」
顔を横にし光の玉を回避する。
なんだろう?いつも以上に体が動く……なんでだ?ってひったくり犯は目前まで迫ってきてるそんな事考えてる場合じゃない!!
ひったくり犯は驚いた表情で俺に突撃してくる。
真正面から向かってくる相手の対処は簡単だ、ただ相手の顔面に……
拳をぶつけにいけばいい。
拳を全力でひったくり犯の顔面目掛けて突き出して直撃する。
そのまま俺は拳を振り切ってひったくり犯を地面に倒して制圧する。
「はぁ……はぁ……あっ」
制圧しきって少し落ち着いて周りを見渡した……周りにいる人達全員俺とひったくり犯の方を見ていた。
やばい……よそ者がいきなりこんな事して大丈夫だったのか?
そして通行人の1人が口を開いた。
「す、すげぇぇ!!」
唐突な称賛の言葉に意識が遅れる。
そしてその声をかわきりに……
「いや拳1つでひったくり犯倒すなんて兄ちゃんかっこよかったぜ!!」
「どこの子?お名前は!?」
と周囲にいた人たちが俺に向かって押し寄せ称賛やら質問の言葉を浴びせまくる。
こんな大勢に話しかけられたことのない俺はどうしていいか分からず頭が真っ白になる。
「いったん離れてはもらえないか?俺の連れが困ってる」
そんな時服屋から出てきたディーオンが俺の周囲にいる人達に声をかける。
そんなディーオンを見た瞬間、周りの人達はすぐさま俺から離れた。
「大隊長の連れ!?そりゃすげぇわけだ!!」
「ってことは『転移者』か!?」
周囲にいた人達はざわつく、その際確かに『転移者』という単語が聞き取れた。
割と都市の人達にも転移者って広がっているのだろうか?
「まぁな……とりあえず俺はコイツの面倒を見るからこの倒れてる奴を他の騎士団員に引き渡してくれ」
「「はい!!」」
ディーオンがそう言葉を発すると通行人は元気よく返事を返す。
これが彼の人望……思っていた以上にすごい。
「大丈夫か?魔法とか使われたか?」
通行人達がひったくり犯を縛っている最中にディーオンが俺を心配するように聞いてきた。
「あぁ光の玉みたいなのは撃たれました、でも避けたから大丈夫です。
……にしてはいつも以上に体が動けました」
「そりゃお前が転移者だからだ、転移者は基本的に元いた世界よりも身体能力が上がっているんだとか
まぁ魔法を避けられたんならそれでいい」
転移者は身体能力が高くなる……なるほどだからさっきから体が軽いって感じていたわけか。
「あの……」
俺とディーオンが話している最中、1人の女性が声をかけてきた。
この人は確かひったくり犯に襲われていた人……少し気弱そうな見た目をしているが俺は彼女の腹部を見て驚く。
「ありがとうございました、お腹の子も無事そうです」
そう彼女は妊娠しているのだった。
そんな女性を狙うなんてなんて卑劣な奴なのだろうか!?
「いえ、あなた達が無事でよかったです!」
俺は取られていたカバンを女性に返す。
「この子もあなたのようなやさしい子に育ってほしいです」
「……そうですか!」
お腹をさすりながら彼女は話す、俺みたいなやさしい子……その言葉に一瞬だけ固まったがちゃんと返事できたっけ?
その後俺は再び服屋に入れられて適当な服をディーオンに買ってもらいその店で着替えさせてもらい、店の外へ出た。
学園の制服は俺が試験に合格してから作り、そのまま送ってくれるという事をディーオンから教えてもらう。
少し気になる点はあるが、今の所とても楽しいと思える、初めて見る物は多いし人は優しそうだし……いや優しすぎる。
なんでこの人達は別の世界から来た俺にこんなに優しいんだ?俺にこんなに良い待遇をしてなにか得があるわけではないだろうに……
「な、なぁちょっと聞きたい事が……」
その時だった。
空腹でディーオンの腹が大きくこちらに届く程に鳴ったのは。
そういえば明るさ的には今はもう昼の飯時の様だ。
「すまない、お腹が空いていたのか、とりあえず飯屋で話を聞こうか」
ディーオンは飯屋に行こうと提案
俺も昼……ではなくてあっちの世界では夜にこの世界に飛ばされた為まだ夕飯を食べてなく、少しばかり腹が空いていた為にその提案に俺は頷いた。
そうして俺はディーオンに連れられて飯屋へと入る。
飯屋……というよりは中世の酒場の様な場所だった俺達はその中に入った。
中にいる客の人達はそれぞれで食事をしていて店中が賑わっていた。
俺達は端っこの方で空いている席に腰をかけた。
その後店の店員が水を持って来る。
その時にディーオンは店員に注文をした。
俺が何がいいかも聞かずに勝手にだ。
そして注文を聞いた店員が離れていき再び2人だけになった。
「……それで?さきほど何を聞こうとしていた?」
とディーオンはこちらを見つめ聞いてくる。
俺は少し呼吸を整えてさっき聞こうとしていた質問を出す。
「なんで貴方達は俺みたいな転移者にこんなに良くしてくれるんですか。そこまでして貴方達になにかメリットがあるんですか。」
俺はセレティアさんの行為に疑問を感じていた。
なぜここまでしてくれるのだろうかと。
「簡単に言ってしまえば情報提供のお礼だ」
「情報提供のお礼?」
「この世界にはお前達の世界みたいに車や家電っていった機械全般がない。
だからこの世界の発展のためにこの世界に来てもらった転移者達からセレティアが魔法で記憶を読み取って情報を見させてもらってる。
そのお礼だ」
機械全般か……確かに街中には機械みたいな物はなく、魔法だけで店の宣伝とかしていたな。
そしてセレティアさんの魔法で記憶を読み取って機械の情報を得るとはなんとも効率的だ。
セリティアさんから文字の記憶を与えられた時、言葉ではなく感覚みたいな物で覚えられた。
そして記憶を読み取るのと記憶を与えるのが同じ要領ならこのことは簡単に出来る。
なるほどこれで不思議だった事が全て繋がった。
「その方法で様々な機械の情報を貰ったが、それだとこっちだけが特になって不公平だろ?だから転移者は記憶を読み取らせて貰った礼としてこの街での安定した暮らしの手助けを受けれっていう事だ。」
これでさっきまでの疑問は解消できた。
記憶を読み取らせて貰ったお礼としてのこの待遇という事か案外悪くは無い交換条件だと思うお互いに何も不利益な事はないからな。
「今俺達が取り組んでいるのは車の制作でな、車ってのはセレティアから記憶をもらったが車はいいな!俺達の世界には馬車くらいしかなくて移動とか不便だしなにより車は武器にもなるこれで奴等を更に追い込められる。」
車を武器に……
本来の使い方ではない事に対して少し怒りを感じてしまっている自分がいる。
俺は車に対しての嫌な記憶を思い出す、絶対忘れては
いけない過去を……少し思い出して気分が悪くなる。
いやこの世界の人にだって事情はあるんだからあまり深く気にしない方がいいのかもしれないとりあえずこの事は一旦置いておこう。
そして奴等という事はこの世界では何かと戦っているのか?
「奴等……?」
少し衝撃的な事を聞いた俺は少し動揺して思った言葉を呟いてしまった。
それにしても奴等って誰の事なんだろうか?さっき言っていた凶震戒と何か関係があるのか?
「あぁ、奴等っていうのは今俺達と敵対している凶震戒という組織だ。
ここ5、6年の間に現れた組織でな、相当手練れの集団って奴だ。俺達も討伐に尽力を尽くしてはいるが今のところ奴等の……十戒士という10人の奴等の幹部の内3人までしか殺せていなくて俺達も苦戦しているんだ。」
凶震戒……そんな組織がこの世界にはいるのか……でも、俺がいるのは1年だけだからそんなに気にしなくてもいいのかな?
それにしてとこの人多分相当強いはずなのにそんなに苦戦する奴等なのか?
「そんなに強いんですか?その十戒士っていうのは?」
気にしなくていいといっても、もしかしたらがあるかもしれないと一応その集団の危険性を聞いてみた。
「そうだな、十戒士はたった1人で都市1つを滅ぼせる程の実力の持ち主で1人倒すのでさえ、相当な被害を受けた。
俺も奴等と戦った事があるがぁ、結構手こずたものだ。
まぁ他にもこの都市の近くに武装集団がいるって話だがまぁ凶震戒共々お前がいる間には遭遇しないだろうし大丈夫だろ。」
俺が心配しないように最後に一言加えて言った。
それにしても、この都市は見た感じ相当大きな所だっていうのにそれたった1人で滅ぼせる?
それ程にその十戒士は強いのか……
それなら何か俺に他にも提供出来ないかと持っていたカバンを漁った。
あんまり意味は無いと思うが少しでも現物があった方が少しは役に立てる物があるかとカバンの中の物を探った。
しかしそんなにディーオンに渡せる物はなくカバンを閉じる。
その時ポケットの中にスマホを入れてあるのを思い出した。
俺はポケットの中のスマホを取り出した。
スマホの電源を入れてみる……異世界なのか電波が入っておらず写真の機能しか使えないようだ。
「もし良ければなんですが、これもお役に立たせてやってください。実物があった方が少しはいいでしょう」
今は写真くらいしか使えないが、これを渡すことによって電波が通り、この世界限定だが、スマホが使えるかもしれない、そう思った俺はディーオンにスマホを差し出した。
「いいのか?これはお前の物だろ?」
俺のことを心配してかディーオンは許可を聞いて来た。
それについては大丈夫だ、たったそれだけでこの世界が発展するなら軽い物だ。
そう思いスマホを渡す。
ディーオンは俺の気持ちを察してくれたのか素直に受け取ってくれた。
そしてさっきディーオンが頼んでいた料理が今届いた、来た料理はパンのような物と少し大きめの肉だった。
そして俺達は来た料理を食べ始めた。
……凄い!こんな美味しい料理初めて食べたパンは柔らかくてふわふわして口の中にパンの香りが広がっているし、肉もジューシーで香ばしく直ぐに口に溶けていくような感じでパンに合って食が進んだ。
ディーオンによると小麦などの作物は元いたの世界の肥料とかは使ってはおらず、栽培に関する魔法使いが研究しており、その魔法は元いた世界の肥料より性能が高く、その作物を動物にも食べさせているようでだからパンや肉といった料理もこれほど美味しいそうだしかし問題があってこの世界にはどうやら米とかが無いようでそこは少しがっかりした。
そして食事が終わり店を出ようとする。
ディーオンが店員に銀貨を2枚程手渡して銅貨を数枚受け取っていた多分料理の代金だろう。
そして店を出て次は日用品や試験の為の勉強道具を買いに行った。
しかし、行く先々でディーオンが俺の事を異世界人と紹介しているようで店の人にジロジロと見られ恥ずかしくて顔が赤くなる。
他にも行く先々でディーオンがちょっかいかけてくるのが少しうざかった。
そして店を巡って結構な荷物を抱えて歩く。
この魔法の世界独特の物を買って少し機嫌が良くなっている。
「次は何を買いにいくんですか?」
俺はディーオンに尋ねた。
「次の場所で最後だ!次はお前さんの待ち望んでいる魔法を使う為に必要な魔性輪を買いに行くぞ!」
そうディーオンは笑いかけながら言った。
俺は地下牢から解放され荷物も返され外に出させてもらった。
青く晴れ渡った空、見たことの無い不思議な店が立ち並ぶ街、そしてここが異世界という事実……
店の文字は俺の世界にあるカタカナのようなものだった恐らくさっきセリティアさんに記憶を貰ったから俺の頭でわかる文字に置き換わっているのだと思う。
初めてのものが多く驚きを隠さないでいた。
これから行く先々で何があるのかに少し興味を持ち胸を弾ませていた……ただ俺の隣にいるのが男だって事は気になる所だが。
「どうだ?いい都市だろ」
俺の隣で歩きながら笑いかけてくる男がいる。
この人はディーオンと言って先ほどセリティアさんと一緒にいてバケツを持ってきた灰色の髪の男だ。
なんでもこの都市にある騎士団の大隊長というこの都市で1番強いとされる役職の人らしい。
この人はセレティアさんに頼まれ、俺の生活品の買い物の手伝いや護衛の為について来てくれているそうだ。
「あっ大隊長!今日もお疲れ様です!!」
「おう!」
ディーオンは街でも支持があるのか俺達の近くを通る人達はディーオンに注目し気軽に話しかけてくる人は多くいた。
そんなディーオンの隣を歩く俺はそのついで感覚で見てくる人達もいた。
でも、俺が見た感じこの人は他の人から尊敬されるとは思えない程気が抜けていて陽気てふざけたの感じでそんなに強くは無さそうだなぁと思い俺は怪しむ目でその男を見ていた。
すると、ディーオンは俺の目線に気付いたのか俺の方を向く。その瞬間もの凄い衝撃が俺の背中を襲った。
「なんだ?ジロジロ見てないでなんか言いたいことが聞くが??」
ディーオンは俺の背中を叩きながら気軽そうに言う、しかし叩いたというにはあまりにも威力が大き過ぎてまるで背中が爆弾か何かで爆発させられたような感覚に襲われた。
あまりの衝撃に俺はその場でむせこむ。
さっきの強く無さそうという感想は前言撤回させてもらう、この人めっちゃ強い。
ガバンを背負ってなくてよかった……
とりあえず、何か喋らないとそう思い話す話題を頭の中で探した。
俺はふっと空を見上げた。青空が広がって綺麗だな……ん?青空?
さっき空から見た時にはオレンジ色のドームが広がっていた筈だそれがここからでは確認出来ない。
「えっと……空から落ちてくる時なんか壁らへんにオレンジ色のが見えたなぁって……」
とりあえず疑問を問いかけてそこから話を繋げなくてはそう思い真っ先に浮かんだ事を話した。
「あぁ、そうだったな他の奴と違って空から落ちて来たんだったな。
あれはゾーンと言い、都市を統治する家系……ここならパゼーレ家が代々受け継いで来たこの都市を守る為の結界だ。
無許可で入ってくる者がいれば城に警報を鳴ったり外からの攻撃を防ぐ役割を備えている。
都市の内部からは景観を損なわないよう透明で見え、外側からは警告の為にドームを外側から見えるようにしてるって感じだ。」
と明るい口調で普通に教えてくれた。
先程までの雰囲気や強く背中を叩かれた事で多少の苦手意識があったがなんだか楽に話せそうだ。
「普通の転移者がやってくる時は外から入って来たんじゃなくて元からいた判定になっていてゾーンは反応しないのだが……お前の場合ゾーンの外から転移して無許可でゾーンに入ったから反応されたんだな。」
なる程、ゾーンに反応されたから転移者とは違う対応をされたのか。
「空から見た時、この都市以外にも集落があったんですけどそれは……?」
上空から下を見た際、この都市以外にも何か集落みたいなものがあったのを思い出した。
「あぁあれはあれは独立集落といい、何か事情があってその場所を離れない者達が住む集落の事だ。
偶にこちらから出向いて物品を交易する事もあったりする」
独立集落という名前だから何か差別とかの関係かと思ったが、別にそうという訳ではないらしい。
結構この世界にも事情があるんだな。
「それとお前に1つだけ……」
「チャーチスについてだが、彼をあまり悪く思わないでやってほしい。」
チャーチス、俺がこの世界に恐らく初めてあった男だろう。
茶色の口髭が物凄く生えていてで俺の足に槍を突き刺した男だ。
「彼はだな……セリティアへの信仰が強くてな……
今回暴走してしまったのも来たのが凶震戒の奴らだったらと心配した結果なのだろう俺が言うのもなんだが許してやってくれ」
凶震戒?また知らない言葉が出てきたが、とりあえずそれは後で質問することにして……。
その言葉を聞いて俺の中のチャーチスの印象は少し変わった。
憧れている相手に危険な目に遭って欲しくはない、そんな行動理由に俺は共感してしまったのだ。
なる程なら先程セリティアさんが来た時に見せた恐怖の顔はセリティアさんに対する恐怖ではなく勝手な行動を取った自分がセリティアさんに嫌われてしまう事に対しての恐怖だった。俺はそう捉えた。
そういう理由なら俺は彼に対して怒りの感情をぶつける事が出来ない。
「勘違いはもう解けたましたし、傷も塞がりましたから。大丈夫です。
まぁ苦手意識はありますけどね……」
あはは……と苦笑する。
「……まぁとりあえず服屋行くぞ。お前の格好じゃ目立って仕方ない」
俺の苦笑いをスルーするようにディーオンは近くにあった服屋へと俺を連れて行く。
ディーオンの発言を聞き、俺は改めて自分の格好を見る。
確かにこの異世界に俺と同じような制服を着ている奴はいない、しかも俺のズボンはさっき刺された時に空いたズボンの穴がまだ開いたままで周りから視線を集めるのは当然だった。
視線が気になり俺はディーオンに続いて店に入った。
こっちの世界とは違ってN○KEだとかAD○DASといったメーカーみたいな物は無く柄もそんなにない様な感じだった。
「あっ大隊長!どうかされたんですか?」
「彼の制服、それに普段着なども欲しい。
採寸を頼めるか?」
「はい!喜んで!!」
服屋の店主が出てきてディーオンが要件を伝えると体のサイズ測定が唐突に始まった。
店主である女性は寸法を測る最中、不思議そうにジロジロと俺の方を見ていたのにだいぶ神経がすり減った。
採寸が終わり、ディーオンと店主が話すことがあるそうなので俺は店の外で待機するよう言われて外へ出る。
その際、会話が少し聞こえた余り内容はわからなかったが「転移者」という単語が聞こえたのはわかった。
転移者の事とか他の人に話していいのか?それともこの店が特別なんだろうか?
「キャー!誰かその男を捕まえて!」
そんな事を考えていた時、少し離れた場所で女性の悲鳴が聞こえた。
その悲鳴がした方を振り返ると……倒れている女性と俺の方へカバンを持ちながら全力で走ってくる男がいた。
状況からしてひったくり……あの男を止めないと。
俺はすぐに飛び出して男の進路を妨害する。
「邪魔だっ!どけ!!」
逃走を邪魔する俺に対してひったくりの男は指を真正面にいる俺に指してくる。
な、何してくるんだ?
不思議そうに構えていると男の指が光ったと思ったら光の玉が俺に向かって放たれたのだ。
「あぶねっ!!」
顔を横にし光の玉を回避する。
なんだろう?いつも以上に体が動く……なんでだ?ってひったくり犯は目前まで迫ってきてるそんな事考えてる場合じゃない!!
ひったくり犯は驚いた表情で俺に突撃してくる。
真正面から向かってくる相手の対処は簡単だ、ただ相手の顔面に……
拳をぶつけにいけばいい。
拳を全力でひったくり犯の顔面目掛けて突き出して直撃する。
そのまま俺は拳を振り切ってひったくり犯を地面に倒して制圧する。
「はぁ……はぁ……あっ」
制圧しきって少し落ち着いて周りを見渡した……周りにいる人達全員俺とひったくり犯の方を見ていた。
やばい……よそ者がいきなりこんな事して大丈夫だったのか?
そして通行人の1人が口を開いた。
「す、すげぇぇ!!」
唐突な称賛の言葉に意識が遅れる。
そしてその声をかわきりに……
「いや拳1つでひったくり犯倒すなんて兄ちゃんかっこよかったぜ!!」
「どこの子?お名前は!?」
と周囲にいた人たちが俺に向かって押し寄せ称賛やら質問の言葉を浴びせまくる。
こんな大勢に話しかけられたことのない俺はどうしていいか分からず頭が真っ白になる。
「いったん離れてはもらえないか?俺の連れが困ってる」
そんな時服屋から出てきたディーオンが俺の周囲にいる人達に声をかける。
そんなディーオンを見た瞬間、周りの人達はすぐさま俺から離れた。
「大隊長の連れ!?そりゃすげぇわけだ!!」
「ってことは『転移者』か!?」
周囲にいた人達はざわつく、その際確かに『転移者』という単語が聞き取れた。
割と都市の人達にも転移者って広がっているのだろうか?
「まぁな……とりあえず俺はコイツの面倒を見るからこの倒れてる奴を他の騎士団員に引き渡してくれ」
「「はい!!」」
ディーオンがそう言葉を発すると通行人は元気よく返事を返す。
これが彼の人望……思っていた以上にすごい。
「大丈夫か?魔法とか使われたか?」
通行人達がひったくり犯を縛っている最中にディーオンが俺を心配するように聞いてきた。
「あぁ光の玉みたいなのは撃たれました、でも避けたから大丈夫です。
……にしてはいつも以上に体が動けました」
「そりゃお前が転移者だからだ、転移者は基本的に元いた世界よりも身体能力が上がっているんだとか
まぁ魔法を避けられたんならそれでいい」
転移者は身体能力が高くなる……なるほどだからさっきから体が軽いって感じていたわけか。
「あの……」
俺とディーオンが話している最中、1人の女性が声をかけてきた。
この人は確かひったくり犯に襲われていた人……少し気弱そうな見た目をしているが俺は彼女の腹部を見て驚く。
「ありがとうございました、お腹の子も無事そうです」
そう彼女は妊娠しているのだった。
そんな女性を狙うなんてなんて卑劣な奴なのだろうか!?
「いえ、あなた達が無事でよかったです!」
俺は取られていたカバンを女性に返す。
「この子もあなたのようなやさしい子に育ってほしいです」
「……そうですか!」
お腹をさすりながら彼女は話す、俺みたいなやさしい子……その言葉に一瞬だけ固まったがちゃんと返事できたっけ?
その後俺は再び服屋に入れられて適当な服をディーオンに買ってもらいその店で着替えさせてもらい、店の外へ出た。
学園の制服は俺が試験に合格してから作り、そのまま送ってくれるという事をディーオンから教えてもらう。
少し気になる点はあるが、今の所とても楽しいと思える、初めて見る物は多いし人は優しそうだし……いや優しすぎる。
なんでこの人達は別の世界から来た俺にこんなに優しいんだ?俺にこんなに良い待遇をしてなにか得があるわけではないだろうに……
「な、なぁちょっと聞きたい事が……」
その時だった。
空腹でディーオンの腹が大きくこちらに届く程に鳴ったのは。
そういえば明るさ的には今はもう昼の飯時の様だ。
「すまない、お腹が空いていたのか、とりあえず飯屋で話を聞こうか」
ディーオンは飯屋に行こうと提案
俺も昼……ではなくてあっちの世界では夜にこの世界に飛ばされた為まだ夕飯を食べてなく、少しばかり腹が空いていた為にその提案に俺は頷いた。
そうして俺はディーオンに連れられて飯屋へと入る。
飯屋……というよりは中世の酒場の様な場所だった俺達はその中に入った。
中にいる客の人達はそれぞれで食事をしていて店中が賑わっていた。
俺達は端っこの方で空いている席に腰をかけた。
その後店の店員が水を持って来る。
その時にディーオンは店員に注文をした。
俺が何がいいかも聞かずに勝手にだ。
そして注文を聞いた店員が離れていき再び2人だけになった。
「……それで?さきほど何を聞こうとしていた?」
とディーオンはこちらを見つめ聞いてくる。
俺は少し呼吸を整えてさっき聞こうとしていた質問を出す。
「なんで貴方達は俺みたいな転移者にこんなに良くしてくれるんですか。そこまでして貴方達になにかメリットがあるんですか。」
俺はセレティアさんの行為に疑問を感じていた。
なぜここまでしてくれるのだろうかと。
「簡単に言ってしまえば情報提供のお礼だ」
「情報提供のお礼?」
「この世界にはお前達の世界みたいに車や家電っていった機械全般がない。
だからこの世界の発展のためにこの世界に来てもらった転移者達からセレティアが魔法で記憶を読み取って情報を見させてもらってる。
そのお礼だ」
機械全般か……確かに街中には機械みたいな物はなく、魔法だけで店の宣伝とかしていたな。
そしてセレティアさんの魔法で記憶を読み取って機械の情報を得るとはなんとも効率的だ。
セリティアさんから文字の記憶を与えられた時、言葉ではなく感覚みたいな物で覚えられた。
そして記憶を読み取るのと記憶を与えるのが同じ要領ならこのことは簡単に出来る。
なるほどこれで不思議だった事が全て繋がった。
「その方法で様々な機械の情報を貰ったが、それだとこっちだけが特になって不公平だろ?だから転移者は記憶を読み取らせて貰った礼としてこの街での安定した暮らしの手助けを受けれっていう事だ。」
これでさっきまでの疑問は解消できた。
記憶を読み取らせて貰ったお礼としてのこの待遇という事か案外悪くは無い交換条件だと思うお互いに何も不利益な事はないからな。
「今俺達が取り組んでいるのは車の制作でな、車ってのはセレティアから記憶をもらったが車はいいな!俺達の世界には馬車くらいしかなくて移動とか不便だしなにより車は武器にもなるこれで奴等を更に追い込められる。」
車を武器に……
本来の使い方ではない事に対して少し怒りを感じてしまっている自分がいる。
俺は車に対しての嫌な記憶を思い出す、絶対忘れては
いけない過去を……少し思い出して気分が悪くなる。
いやこの世界の人にだって事情はあるんだからあまり深く気にしない方がいいのかもしれないとりあえずこの事は一旦置いておこう。
そして奴等という事はこの世界では何かと戦っているのか?
「奴等……?」
少し衝撃的な事を聞いた俺は少し動揺して思った言葉を呟いてしまった。
それにしても奴等って誰の事なんだろうか?さっき言っていた凶震戒と何か関係があるのか?
「あぁ、奴等っていうのは今俺達と敵対している凶震戒という組織だ。
ここ5、6年の間に現れた組織でな、相当手練れの集団って奴だ。俺達も討伐に尽力を尽くしてはいるが今のところ奴等の……十戒士という10人の奴等の幹部の内3人までしか殺せていなくて俺達も苦戦しているんだ。」
凶震戒……そんな組織がこの世界にはいるのか……でも、俺がいるのは1年だけだからそんなに気にしなくてもいいのかな?
それにしてとこの人多分相当強いはずなのにそんなに苦戦する奴等なのか?
「そんなに強いんですか?その十戒士っていうのは?」
気にしなくていいといっても、もしかしたらがあるかもしれないと一応その集団の危険性を聞いてみた。
「そうだな、十戒士はたった1人で都市1つを滅ぼせる程の実力の持ち主で1人倒すのでさえ、相当な被害を受けた。
俺も奴等と戦った事があるがぁ、結構手こずたものだ。
まぁ他にもこの都市の近くに武装集団がいるって話だがまぁ凶震戒共々お前がいる間には遭遇しないだろうし大丈夫だろ。」
俺が心配しないように最後に一言加えて言った。
それにしても、この都市は見た感じ相当大きな所だっていうのにそれたった1人で滅ぼせる?
それ程にその十戒士は強いのか……
それなら何か俺に他にも提供出来ないかと持っていたカバンを漁った。
あんまり意味は無いと思うが少しでも現物があった方が少しは役に立てる物があるかとカバンの中の物を探った。
しかしそんなにディーオンに渡せる物はなくカバンを閉じる。
その時ポケットの中にスマホを入れてあるのを思い出した。
俺はポケットの中のスマホを取り出した。
スマホの電源を入れてみる……異世界なのか電波が入っておらず写真の機能しか使えないようだ。
「もし良ければなんですが、これもお役に立たせてやってください。実物があった方が少しはいいでしょう」
今は写真くらいしか使えないが、これを渡すことによって電波が通り、この世界限定だが、スマホが使えるかもしれない、そう思った俺はディーオンにスマホを差し出した。
「いいのか?これはお前の物だろ?」
俺のことを心配してかディーオンは許可を聞いて来た。
それについては大丈夫だ、たったそれだけでこの世界が発展するなら軽い物だ。
そう思いスマホを渡す。
ディーオンは俺の気持ちを察してくれたのか素直に受け取ってくれた。
そしてさっきディーオンが頼んでいた料理が今届いた、来た料理はパンのような物と少し大きめの肉だった。
そして俺達は来た料理を食べ始めた。
……凄い!こんな美味しい料理初めて食べたパンは柔らかくてふわふわして口の中にパンの香りが広がっているし、肉もジューシーで香ばしく直ぐに口に溶けていくような感じでパンに合って食が進んだ。
ディーオンによると小麦などの作物は元いたの世界の肥料とかは使ってはおらず、栽培に関する魔法使いが研究しており、その魔法は元いた世界の肥料より性能が高く、その作物を動物にも食べさせているようでだからパンや肉といった料理もこれほど美味しいそうだしかし問題があってこの世界にはどうやら米とかが無いようでそこは少しがっかりした。
そして食事が終わり店を出ようとする。
ディーオンが店員に銀貨を2枚程手渡して銅貨を数枚受け取っていた多分料理の代金だろう。
そして店を出て次は日用品や試験の為の勉強道具を買いに行った。
しかし、行く先々でディーオンが俺の事を異世界人と紹介しているようで店の人にジロジロと見られ恥ずかしくて顔が赤くなる。
他にも行く先々でディーオンがちょっかいかけてくるのが少しうざかった。
そして店を巡って結構な荷物を抱えて歩く。
この魔法の世界独特の物を買って少し機嫌が良くなっている。
「次は何を買いにいくんですか?」
俺はディーオンに尋ねた。
「次の場所で最後だ!次はお前さんの待ち望んでいる魔法を使う為に必要な魔性輪を買いに行くぞ!」
そうディーオンは笑いかけながら言った。
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