【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

たまこ

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「ソフィア。」



 ソフィアが退室すると、シャーロットの部屋の前でハロルドが待っていた。


「……お嬢様、心配していたんだろう?」



「ええ。急だったから驚いたみたいです。それに……。」


 貴方がもう少し愛想良くしてくれたら何も問題無いのに、と小声で恨みがましく呟いたソフィアはハロルドを睨んだ。



「それは難しいかな。」



「何故ですか?」



「これはソフィアにだけ、特別だから。」



 ソフィアの耳元で、甘く囁くこの男は何とも憎たらしい。ソフィアは睨むことを止めなかった。だがハロルドは、気にする様子なく、微笑みながら手を差し出した。




「さ、デート行こう。ミルフィーユの美味しいカフェ、また見つけたんだ。」




 こんなにも憎たらしいのに、どうして私はこの手を取ることが嫌では無いのだろう。






◇◇◇◇




「ハロルド、少し相談なのだけど。」




 ミルフィーユを楽しんだ後、お茶を飲みながらソフィアは切り出した。ソフィアからの、恐らく初めての相談に、ハロルドは目を輝かせた。



「聞かせてくれ。」



「実は、一番仲の良い友人に、貴方との婚約のことを報告して……。」



 ソフィアの学生時代の友人、ドロシーは大きな商家の娘であり、将来結婚してからも婚家で経営に携わりたいと勉強熱心でソフィアとも気が合った。ドロシーは、ワイナリーを経営しているマシュー家に嫁いでおり、経営手腕を発揮しているという。



「あそこのワインは、有名だよね。公爵家でもよく飲まれているよ。」



「ええ。それで、彼女が是非婚約のお祝いをしたいと言っていて、もしハロルドが迷惑でなければ……」



「行こう。」



「私、まだ何も言っていないのだけれど。」



 食い気味に答えるハロルドを、ソフィアはじろりと睨んだ。



「ごめん、ごめん。つい嬉しくて。」



「はぁ……とにかく、彼女に招待されているのです。一緒に行ってくれると助かります。」



「喜んで。」



 ハロルドは、心底嬉しそうに微笑んだ。ソフィアは、なぜハロルドがこれほど喜んでいるのか理解できなかった。逆の状況、例えばハロルドの友人に会うとなったら、ソフィアは多少気が重くなるだろう。




「ソフィアの大事な人を紹介してくれることが、嬉しいんだよ。」



 何も聞いていないのに、ソフィアの疑問を察したハロルドがそう説明した。ソフィアはあまり納得いかないながらも、嫌ではないことに気付いた。
 
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