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番外編:アルバートが愛する二人のレディ

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「ベアトリス。こちらへいらっしゃい。」


 アレクサンドラが厳しい声色で呼ぶと、ベアトリスはびくりとした後、アレクサンドラの傍に近づいた。


「はい。おかあさま。」


「貴女、また近所の子どもを泣かせたでしょう。」


「だって、ノエルをなかせるから!」


「勿論、相手の子も良くないけれど、貴女が泣かせるのも良くないことだわ。」


「おかあさま……ごめんなさい。」


 しょんぼりと謝るベアトリスは、アレクサンドラとアルバートの愛娘である。そしてノエルは、アレクサンドラの義妹マーガレットとクリストファーの息子だ。二人は五歳で、仲の良い遊び仲間だ。


「いいこと?こんな時、相手の子をどうお仕置きするか教えるから、よく聞きなさい。」


「はい!おかあさま!」


「ちょ、ちょっと待て。」


 アレクサンドラの英才教育を止めるのは、アルバートの役目だ。だが、愛する二人から不思議そうに見つめられてしまう。


「あら?どうしてかしら?」


「おとうさま!わたくし、ノエルをまもりたいんです!」


「……っ、ベアトリス、君は女の子だ。そんなに勇ましくならなくても良いんじゃないか?」


「いいえ。ノエルはいつもぼんやりしているから、わたしがまもらないと!」


 ノエルは、マーガレットとクリストファーに似て、穏やかな性格だ。そのせいでよく近所の子どもたちに揶揄われている。その子どもたちを蹴散らすのがベアトリスの役目だった。


「だが……。」


 納得できない様子のアルバートに、ベアトリスは一撃を繰り出した。


「おとうさま。わたくし、ノエルとけっこんしたいんです!」


「なっ……!」


 狼狽するアルバートを、アレクサンドラは可笑しそうに見つめた。


「だいすきなひとをまもる。おとうさまとおかあさまがよくおはなしされていることよ!」


「そ、それは……。」


「まえはおとうさまとけっこんするっていいましたけど、おとうさまとはけっこんできなくなりました。」


 ごめんなさい、と小さな頭をぺこりと下げる様子は可愛らしい。が、謝られたアルバートは目に薄っすら涙を溜め、言葉が出ないようだ。



「それじゃあ。」


 ふわりとお淑やかな動作で、アレクサンドラはアルバートの膝に座った。


「サンドラ……。」


 いつもなら子どもの前で、と怒るところだが、愛する娘に振られたばかりのアルバートは、心が救われる思いだった。


「おかあさま!だっこなんてずるいです!」


「あら?ベアトリスはノエルが大好きなのでしょう?お母様は、お父様が大好きなので抱っこしてもらえるんですよ。」


 貴女はノエルの所にでも行きなさい、と追い払うかのように手を振ると、ベアトリスは顔を真っ赤にしてアルバートの空いた方の膝に飛び乗った。


「わたくしだって、おとうさまのことだいすきなのに!」


 ぎゅうぎゅうに抱き着かれ、怒りながら愛の告白をされたアルバートは破顔した。両膝にそれぞれ、愛する妻と娘を乗せている幸せを感じていた。ベアトリスは怒りながら、泣いた後、うとうとと微睡み始めた。



「ふふ、忙しい子ですこと。」


「ああ。君によく似ている。」


「あら?そうかしら?」


 アルバートは頷きながら、ベアトリスの目元の涙を拭った。


「……この子がいつかお嫁にいくことが恐ろしい。」


「あらあら。気の早いお父様ですね。」


 くすくすと小さい笑い声を上げた後、アレクサンドラは言葉を続けた。


「だけど、私はこの子に愛する方を見つけてほしいわ。」


「なっ……。」



 言葉を無くした夫の顔を優しく撫でると、アレクサンドラは耳元で囁いた。「だって、貴方に愛されて、私はこんなにも幸せなんですもの。」と。










〈王太子妃候補の悪役令嬢は、どうしても野獣辺境伯を手に入れたい:完〉



 これにて完結となります。終わることが名残惜しくなってしまい、予定していたより長くなってしまいました。たくさんの方々に読んでいただき、嬉しかったです!最後までお読みいただきありがとうございました!
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みんなの感想(44件)

牡丹GO
2024.11.12 牡丹GO

とても楽しかったです!

たまこ
2024.11.14 たまこ

ご感想ありがとうございます!お楽しみいただけてとても嬉しいです♪

解除
Kita
2023.05.13 Kita

たまこ先生✨
完結おめでとうございます㊗️

3ヶ月もの間、毎日楽しませてくださり、ありがとうございました🥰💕

そして、本当にお疲れ様でした🙇

たまこ先生の作品、全てに共通するのが『脇役が主役を食う程、魅力的✨』という所です😍

そんな脇役さん達にスポットを当てた『番外編』も本編と同じくらい楽しくて、毎回夢中で読ませていただきました📖

個人的には、アルと共に懸命に辺境の安全を支えてきた、不遇キャラ(ロマンチックの犠牲者🤣)ジャンが、みんな大好きジェニーちゃんと結ばれたお話が、本当に嬉しくて、大好きでした💘💘💘

そして何と言っても、ベアトリスちゃんとノエル君😍💕(たまこ先生作品で、お子様登場👶初めてじゃないですか??)
ビックサプライズでした(゚Д゚)!!

ベアトリスちゃんがサンドラちゃんにそっくりなところが、とても良かったです( *´艸`)
また、サンドラちゃんの『正しいお仕置き講座✏️』それをアルが『英才教育✒️』と呼ぶ、たまこ先生節に大爆笑してしまいました🤣

3ヶ月間、共に過ごした、大好きなお話が終わってしまうのはとてもさびしいですが、また何度も読み返したいと思います📖✨

あぁ~本当に面白かった❤️
たまこ先生✨素敵な作品をありがとうございました📕✨

たまこ
2023.05.13 たまこ

Kitaさま

素敵な感想ありがとうございます!!😭😭

アレクサンドラを始め、濃すぎるキャラばかりのこの作品はお別れするのが寂しくて、ついつい番外編もたっぷりになってしまいました😆

ジャンとジェニーのお話は、私も書いていて楽しかったです!Kitaさまにも気に入っていただけて良かった!🎵

そうなんです!子ども登場は初なんです👶どうしても娘にデレるアルバートを書きたくて、ベアトリスとノエルに登場してもらいました😆💕

読み返して頂けるなんて、感無量です!!長い時間かけて書く中で、Kitaさまの感想にいつも励まされていました!最後までお読みいただきありがとうございました!!😆✨

解除
Kita
2023.05.12 Kita

たまこせんせー😭

不遇キャラの名を欲しいままにしていたジャンが…😭世界一の果報者になりましたよー😭

良かった…本当に良かった~😭
この2人大好きなので、とっても嬉しいです🎉🎊👏

そして下の感想、ジェニーちゃんを何故かソフィアちゃんと書いてしまった私をお許しください🙇‍♀️

たまこ
2023.05.12 たまこ

漸く、ジャンの想いが実りました〜!!
良かった〜〜!!😭😭
アレクサンドラとアルバートを支える二人が幸せになれて良かった良かった🎵


大丈夫ですよ〜〜私も、並行して書いているせいかしょっちゅう「混ざってないか⁉️」とドキドキしてます🤣
逆に、どの作品も読んで頂けて嬉しすぎます!😭😭いつもありがとうございます〜〜!!

解除

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