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しおりを挟む「少し、寄りたい所があるんだ。」
コース料理を楽しんだ後、再びアルバートの馬に乗ると、来た時と違う道を進み始めた。
アレクサンドラは、来た時と同様に至近距離にいるアルバートをうっとりと眺めていた。
「あー•••サンドラ?」
「はい。」
「そんなに見ないでくれ•••。」
少し照れたようなアルバートの声に、アレクサンドラの鼓動は高鳴っていく。見つめるのを止めることは出来ずにいると、アルバートから額に口付けられ、アレクサンドラは思わずアルバートの胸元に顔を埋めた。
「ず、ずるいですわ•••。」
「サンドラが止めないのが悪い。」
悪戯が成功した子どものように声を弾ませたアルバートに、アレクサンドラはまた鼓動を高鳴らせた。
◇◇◇
アルバートが連れてきてくれたのは、少し小高い丘の上で、東屋がいくつか設置されている広場だった。大きな噴水もあり、昼間は領民の憩いの場となっているようだ。
噴水の前にある、一つのベンチに二人で腰掛ける。それだけで、アレクサンドラの頬は緩んでしまう。
「サンドラ、見てごらん?」
アルバートが指差す夜空を見上げると、瞬く満天の星空だった。あまりの美しさに息を呑んだ。
「きれい•••。」
「ああ。辺境伯領が自然が豊かだからこそ見える景色だ。」
「王都では絶対見られない星空ですわ。」
しばらく星空に見惚れていると、アルバートがアレクサンドラの手を取った。
「アル?」
「•••サンドラ。私たちの婚約は、君から持ち掛けてくれたものだ。」
「はい。」
「だが、私は君にプロポーズしたい。サンドラと過ごした時間は短い時間だが、私は君にすっかり魅了されている。サンドラ、愛してる。生涯大切にするから、結婚してほしい。」
「アル•••。」
アルバートが差し出した指輪には、アレクサンドラが好む赤色のルビーが配われている。左薬指に優しく嵌められると、アレクサンドラは胸がいっぱいになる。
アルバートは熱っぽくアレクサンドラを見つめ、唇同士が触れた。アレクサンドラは身体中が熱くなるのを感じた。名残惜しく唇が離れる。息を切らしたアレクサンドラをアルバートはきつく抱き締めた。
「アル•••!」
「うん。」
「私も愛しております。私がアルを幸せにしますわ。」
完璧な淑女でありながら、この国一番の腹黒さを持つ、彼女はアルバートの前でだけは甘く可愛らしい婚約者になる。彼女の腰が砕けるまで、口づけは続く。「もう十分幸せだ」と囁かれながら。
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