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しおりを挟む今までも冒険ギルドのお仕事で、何度も一緒の馬車に乗ったことがある。だけど、必ず斜め向かいに座って、決して触れない距離を二人は保っていた。だが今は隣同士、そして少し空いた空間も、クリストファーが詰め、ぴたりとくっついてしまい、マーガレットは心臓の音が聞こえてしまわないかと心配になるほどだった。
「マーガレット。俺は、情けない人間だ。ずっとアレクサンドラに公務も頼りきりだったし、こんな風にお膳立てしてくれたのもアレクサンドラだ。アレクサンドラが動かなかったら、そのまま嫌々と国王になり、アレクサンドラと結婚していたと思う。」
クリストファーはいつも正直な人間だ。だからこそ、国王としての仕事を毛嫌いしていた。だが、マーガレットはそんなクリストファーが好きだった。
「俺にはこんなことを言う資格なんてないと思う。それでも言いたいんだ。俺はずっとマーガレットが好きだった。これからもずっと好きだ。贅沢もさせてやれないけれど、大切にする。どうか俺と一緒にいてほしい。」
今まで聞けなかった、クリストファーの気持ちに胸が苦しくなるのを感じた。
「・・・私もずっとお慕いしておりました。」
頬を染めて、小さく微笑むマーガレットを、クリストファーはたまらず抱き寄せた。
「きゃっ!」
「はぁ~ようやくだ・・・。」
頬を寄せられ「ずっと、こうしたかった」と囁かれ、マーガレットは今までの態度とのあまりの違いに心臓が持ちそうになかった。
◇◇◇
「ふふふ。」
長い時間、抱き寄せられ、少しずつ心臓が落ち着いてきた頃、マーガレットは笑い声を上げた。
「どうしたんだ?」
「お姉様も、二週間前に、この道を辺境伯様と通ったんでしょう?今の私たちみたいに。」
「ああ。」
「お姉様、馬車の中でどんな風にされていたのかなぁって。」
あの強烈なアレクサンドラだが、憧れの騎士を目の前に、大人しくしているのか、とんでもないことをしているのか、想像がつかなかった。マーガレットは可笑しそうに笑い、クリストファーは考えるのも恐ろしくなり眉を寄せていた。
◇◇◇
お知らせ:
新作『堅物監察官は、転生聖女に振り回される』本日より投稿しておりますので、読んで頂けると嬉しいです!
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