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「待ってください。クリストファー様と私が仮に結ばれたとして、お姉様はどうなるのです。公爵家の後を継ぐということですか?」
マーガレットが詰め寄りながら尋ねてきた。
「まさか。あのお父様が婚約破棄された娘を家に入れてはくれないでしょうね。」
「だったら!駄目です、絶対駄目です!お姉様の居場所が無くなるのなら、この計画は無しですよ!」
「マーガレット、誰が居場所がないと言ったのですか。私はちゃんと次の居場所を見つけています。」
クリストファーとマーガレットに驚きの表情で見つめられ、アレクサンドラは最上級の笑顔で口を開いた。
「アルバート=キャンベル辺境伯様の元へ参ります。」
二人の驚きの表情は徐々に呆れ顔に変わり、肩を落として溜め息をつかれた。
「なぁんだ、お姉様ったら散々私たちのためのようなことを言っておいて、全部辺境伯様と結婚するためじゃない。」
「アレクサンドラの騎士好きっぷりは全くぶれることは無いな。」
二人の小さな反撃に、アレクサンドラは息を吐き、不満げに返した。
「最初にお伝えしたでしょう、三名ともに利のある話だと。」
◇◇◇
「アレクサンドラ、確かにこれは三名に利のある話だと思う。だが恥を偲んで言うが、君がいなくなると国の仕事が回らなくなる。」
「ご心配なく。数年前からクリストファー様の妹君のキャサリン王女を鍛えておりましたの。私がしている公務の殆どを任せられますわ。勿論難しい部分は辺境の地からサポート致します。」
「キャサリンの利は?」
「ネルソン伯爵令息。」
間髪入れずに答えると、クリストファーは「まだ別れていなかったのか」と小さく呟き、項垂れた。
「ネルソン伯爵家が陞爵出来るよう、いくつか功績を作って手を回しています。侯爵家になれば婚約は難しく無いでしょう。」
「次の王太子は?」
「国王陛下の弟であるベンジャミン様を、と考えています。まだお若いですが、人望も能力もあり、また国王陛下になりたいという野心もあります。ベンジャミン様には既に秘密裏に話をつけています。公務に慣れるまではキャサリン王女に頑張ってもらえるようお願いしています。」
「公爵家はどうだ?アレクサンドラが王太子妃になるから、跡継ぎの事も考えてマーガレットを連れてきた面もあるのだろう。二人していなくなったらどうなる?」
「親戚の中で、本人に公爵家を継ぐ意欲があり、公爵家当主の素質がある者が見つかりましたので、教育係を送っています。」
抜け目ない計画にクリストファーは目を剥いた。恐らく、他にも手を回している事は膨大にあるだろうに、アレクサンドラは涼しい顔をしていた。クリストファーは白旗を挙げ、アレクサンドラの指示を仰いだ。
◇◇◇
長い長い作戦会議が終わると、マーガレットはクリストファーに囁いた。
「お姉様、大丈夫かしら?」
「こんなに完璧な計画を立てている本人が失敗するとは思えないけど。」
「そうではなくて」
マーガレットは視線をキョロキョロと動かし思案しているようだった。
「お姉様、辺境伯様の事になると途端にポンコツになるでしょう?」
先程思案していたのは、言葉を選んでいたからではないのか、と思ったが口に出すことは出来なかった。
マーガレットが詰め寄りながら尋ねてきた。
「まさか。あのお父様が婚約破棄された娘を家に入れてはくれないでしょうね。」
「だったら!駄目です、絶対駄目です!お姉様の居場所が無くなるのなら、この計画は無しですよ!」
「マーガレット、誰が居場所がないと言ったのですか。私はちゃんと次の居場所を見つけています。」
クリストファーとマーガレットに驚きの表情で見つめられ、アレクサンドラは最上級の笑顔で口を開いた。
「アルバート=キャンベル辺境伯様の元へ参ります。」
二人の驚きの表情は徐々に呆れ顔に変わり、肩を落として溜め息をつかれた。
「なぁんだ、お姉様ったら散々私たちのためのようなことを言っておいて、全部辺境伯様と結婚するためじゃない。」
「アレクサンドラの騎士好きっぷりは全くぶれることは無いな。」
二人の小さな反撃に、アレクサンドラは息を吐き、不満げに返した。
「最初にお伝えしたでしょう、三名ともに利のある話だと。」
◇◇◇
「アレクサンドラ、確かにこれは三名に利のある話だと思う。だが恥を偲んで言うが、君がいなくなると国の仕事が回らなくなる。」
「ご心配なく。数年前からクリストファー様の妹君のキャサリン王女を鍛えておりましたの。私がしている公務の殆どを任せられますわ。勿論難しい部分は辺境の地からサポート致します。」
「キャサリンの利は?」
「ネルソン伯爵令息。」
間髪入れずに答えると、クリストファーは「まだ別れていなかったのか」と小さく呟き、項垂れた。
「ネルソン伯爵家が陞爵出来るよう、いくつか功績を作って手を回しています。侯爵家になれば婚約は難しく無いでしょう。」
「次の王太子は?」
「国王陛下の弟であるベンジャミン様を、と考えています。まだお若いですが、人望も能力もあり、また国王陛下になりたいという野心もあります。ベンジャミン様には既に秘密裏に話をつけています。公務に慣れるまではキャサリン王女に頑張ってもらえるようお願いしています。」
「公爵家はどうだ?アレクサンドラが王太子妃になるから、跡継ぎの事も考えてマーガレットを連れてきた面もあるのだろう。二人していなくなったらどうなる?」
「親戚の中で、本人に公爵家を継ぐ意欲があり、公爵家当主の素質がある者が見つかりましたので、教育係を送っています。」
抜け目ない計画にクリストファーは目を剥いた。恐らく、他にも手を回している事は膨大にあるだろうに、アレクサンドラは涼しい顔をしていた。クリストファーは白旗を挙げ、アレクサンドラの指示を仰いだ。
◇◇◇
長い長い作戦会議が終わると、マーガレットはクリストファーに囁いた。
「お姉様、大丈夫かしら?」
「こんなに完璧な計画を立てている本人が失敗するとは思えないけど。」
「そうではなくて」
マーガレットは視線をキョロキョロと動かし思案しているようだった。
「お姉様、辺境伯様の事になると途端にポンコツになるでしょう?」
先程思案していたのは、言葉を選んでいたからではないのか、と思ったが口に出すことは出来なかった。
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