【完結】愛くるしい彼女。

たまこ

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 エリックは小さく息を吐き、肩を竦めると、諌めるようにロビンへ声を掛けた。


「ロビン。この部屋は貸してあげるよ。ちゃんと、拗れたものを修復してからホールにおいで。」


 そして、キャロラインに「大丈夫だよ。」と笑顔を見せ、退室していった。ロビンは、エリックが退室するのを見届けると、キャロラインを抱き締める腕に、更に力を込めた。



「ちょっと•••!ロビン!」


「•••エスコート、エリック殿下の方が良かった?」


「そうじゃなくて!離してちょうだい。」


 自分は、ロビンの婚約者にはなれないから。こんな風に、ロビンの熱を知ってしまったら、余計離れられなくなるから。いつか他の誰かがロビンの熱を知るのだと、いつかロビン以外の誰かに抱き締められるのだと、そう自覚させられて、涙が迫り上がる。



「なんで、離れようとするの?この間からそうだよね?」


「だって、私は•••そろそろ誰かと婚約しないと。」


 責めるように低い、ロビンの声に対して、ロビンと密着しているのは許されないことだと必死に訴える。




「だから、その婚約って何?」


 明らかに怒っているロビンの声色に、びくりと、身体を硬直させてしまう。ロビンは感情の起伏が乏しい人間だ、キャロラインに対して、憤ることなんて無かった。




「•••キャロラインは、僕とずっと一緒にいてくれるんじゃないの?」




「な、なんで。」




「キャロラインがそう言ったんだ。」


 悲しそうに絞り出された一言。それは幼い頃の感情に任せた一言で、私にとっては大事な気持ちで。だけど、まさかロビンが覚えているなんて思わなかった。


「•••ロビン、私たちずっと一緒にいる為には婚約しないといけないのよ。」



「そうだよ。」


「そうだよって!ロビンが、私と婚約したくないって言ったんじゃない•••!だから、私、ロビンと離れないとって、思って!」



 胸の奥底に仕舞い込んだ気持ちは、涙と共に決壊し、止めどなく溢れてきた。ロビンは、丁寧に涙を拭い、気持ちが収まるまで根気強く待ってくれていた。幼い頃と全く同じように。


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