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しおりを挟む戸惑うキャロラインの顔を見て、エリックは説明してくれた。
「ロビンは学園で優秀な成績を納めているので、前々から側近にならないか打診していたのです。最近になって漸く受けてくれて、今日も執務の為に来ているんですよ。」
この10日ほど避けていたロビンが同じ敷地内にいることを聞き、キャロラインは血の気が引いた。
「ロビンは、昔からよくキャロライン嬢の話をしてくれていましたからね。どうしてもお話したかったのです。」
優しく笑うエリックに、キャロラインは必死で平静を保ち、微笑んだ。キャロラインの心の乱れを察したパトリシアが、話題を変えてくれ、スムーズにお茶会は進んだ。キャロラインは筒がなく受け答えしていたが、ロビンのことで頭がいっぱいだった。
◇◇◇
「キャロライン嬢、良かったら庭園を案内させて頂けませんか。」
お茶会も終盤に差し掛かった頃、エリックから誘いを受けた。
「エリック、兄の前でデートの誘いか?ヤンチャな弟だ。」
「寧ろ兄思いの弟だと思いますよ。兄上、最近お忙しくてパトリシア様と碌に会えていないでしょう。二人っきりにさせてあげよう、という気遣いですよ。」
キャロラインは、パトリシアの頬が染まったのが見えた。これは二人っきりにしないといけないだろう。エリックのエスコートを受け、庭園へと向かった。
「付き合わせてしまい、すみません。」
「いえ。パトリシアも嬉しそうだったので、良かったです。」
エリックのエスコートは、とてもスマートでキャロラインも緊張することなく庭園散策をする事ができた。そろそろパトリシア達の所へ戻ろうか、という頃。
「キャロライン嬢は、今度の舞踏会は誰にエスコートされるのですか。」
「お恥ずかしい話ですが、相手がおりませんの。」
いつもはロビンがエスコートしてくれていた。だが、それはキャロラインが頼んだからだ。今回はキャロラインからお願いはしていないし、勿論ロビンから連絡は来ていない。
「でしたら、私にエスコートさせて頂けませんか。」
「え•••。」
キャロラインは思わず戸惑ってしまう。エリックは確か婚約者は決まっていない。そんな状況で、キャロラインをエスコートしたら根も葉もない噂が飛び交うのではないか。だが、エリックへ上手く断る術が無い。
「ロビンにエスコートされる予定かな?」
「いえ•••。」
そう。もうロビンにはエスコートして貰えない。だから社交を頑張って、婚約者探しをしないといけないのだ。エリックにエスコートされることで、不躾な視線に晒されるだろうが、新たな出逢いも得られるかもしれない。
「エリック殿下、私で宜しければ是非お願い致します。」
「ありがとう。楽しみだよ。」
エリックが笑顔を見せた。その時、後ろから「エリック殿下。」と掛けられた声に、キャロラインは硬直した。
「キャロライン、何故•••。」
そこにいたのは十日ぶりに会う、大好きな人だった。
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