【完結】社畜が溺愛スローライフを手に入れるまで

たまこ

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素敵な場所へ行きましょう

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「雅也さん、どうしてレシピカード、持ってきていたんですか?」

 父と叔父夫婦と別れ、今日宿泊するホテルに向かう電車の中、私は不思議に思っていたことを尋ねる。

「ああ。もしかしたらお父さんが来るんじゃないか、って思っていたんだ。来ていなくても、叔父さんたちに見せたいと思っていたから。」


 雅也さんの気遣いに、胸が暖かいものでいっぱいになる。私は、この人がくれた分だけで返せているのかなぁ。そんなことを考えていたら、頬を軽く引っ張られる。


「・・・また、変なこと考えてないか。」

「か、かんがえてないでひゅ・・・。」

「じゃあ、何考えてた?」

「雅也さんから、貰うものが多すぎて・・・私は返せているかなぁって。」

 小さく呟く私の言葉に、雅也さんは少し戸惑ったように目を見張った後。



「・・・言っただろう。俺の方が貰いすぎてるって。」


 視線を逸らして、素っ気なく話すあなたが、愛しくて。以前の会話を覚えてくれていることに、満たされて。駅に着くまで、無言のままだったけれど、繋いだ手はずっと強く握られていた。




◇◇◇



「えっ・・・ここって・・・。」

 到着したホテルを見て、私の口はあんぐりと開いてしまった。ホテルの予約は雅也さんがしてくれて、私は叔父夫婦への挨拶やお土産のことで頭がいっぱいで、どんなホテルかも気にしていなかった。


「ここって、高級ホテルじゃないですか・・・。」

 田舎暮らしが長くなった私でも知っている、よくテレビでも紹介されているようなラグジュアリーホテルだ。



「・・・たまにはいいだろ。」

 そっぽを向いた雅也さんは、どこもピカピカ眩しい内装をキョロキョロと眺める私の手を、ぐいっと引っ張りフロントへと進んでいった。


◇◇◇

 


 残り二話となっております。最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。
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