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再会しましょう 2
しおりを挟む「なっ、何でいるの・・・。」
意を決して叔父宅のチャイムを押し、リビングに通される。私たちのことを待っていたのは、叔父夫婦と・・・何故か外国にいるはずの十二年ぶりに会う父だった。
「瑞樹ちゃん、驚かせてごめんね。今日の朝、急に兄貴が来て・・・俺たちも知らなかったんだ。」
先日私と電話で話した叔父は、その後すぐに父に連絡して、私の婚約のことも伝えてくれたらしい。その時に、叔父宅へ挨拶しにくることやその日程を話していた、ということだ。申し訳なさそうに謝る叔父と、気まずそうにしている父。叔父は全く悪くない。
「えーっと、お父さん?まず、急に帰国するなんて、仕事は大丈夫なの?」
父は、目を見開き、みるみるうちに目には涙が溜まっていた。え、私、そんなに怖かった?確かに怒ってはいるけれど、冷静に話したつもりだ。思わず雅也さんと顔を見合わす。すると、父が叔父へ小さく語りかける声が聞こえてきた。
「瑞樹が、お父さんって、お父さんって、呼んでくれた・・・!」
感極まって叔父を揺する父を見て、私と雅也さんは呆気にとられた。確かに幼少期はたまに会うおじさん、としか思っていなかったし、祖母や叔父が「お父さんだよ」と促してもピンと来ず、お父さんとは呼んでいなかった。思春期に入ってからは、正直父に対してあまり良い感情を持てずに、ちゃんと話もしていなかったっけ。
「お父さん、ちょっと聞いてくれる?」
「う、うん。」
「まず、叔父さんに連絡無しで帰国するのはおかしいと思う。叔父さんに連絡してくれたら、叔父さんは私に連絡をくれたと思うし・・・私も叔父さんたちも準備があるんだよ。」
「うっ・・・すまない。」
関係性が出来ている相手なら、急に会っても何も問題はない。だけど、十二年ぶりに会う、私を置き去りにした父と会うのは、少なくとも私は心の準備が必要だった。
「ごめん。俺が来ると思ったら、瑞樹が来るの嫌になるかと思って。黙ってきてしまった。」
「黙ってこられる方が嫌だよ。」
思った以上に、冷たい言葉が出てしまう。ぽんぽん、と雅也さんに背中を優しく叩かれ、少し気持ちが落ち着いてくる。
「叔父さん、叔母さん、ごめんなさい。せっかく時間を作ってもらったのに、こんなに騒いでしまって。」
「大丈夫よ。瑞樹ちゃんの言ってることが全部正しいと思うわ。」
「ああ、兄貴はいつだって常識がないんだからこれくらい言っていいと思う。瑞樹ちゃんも良い機会だから、言いたいこと言っておいたらどうだろう。」
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