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それからの話をしましょう
しおりを挟むふわふわの毛布の中、少しずつ覚醒していく。少しずつ瞼を開ける。
「瑞樹、おはよう」
「…っ!お、はようございます。」
朝起きて、好きな人が隣にいることに私の心臓は全然慣れてくれない。
あの後、雅也さんは慌てて謝ってくれた。「こんな流れで結婚の話をして悪かった。プロポーズはちゃんとした場所でさせてほしい」と。何だか並々ならぬ拘りがあるようで、色々とロケーションをチェックしているみたい。…私は、あの言葉で充分嬉しかったんだけどね。
とりあえず婚約期間ということで、雅也さんと悦子さんのお家での同棲生活が始まった。元々、雅也さんの祖父母が使っていた離れがあったので私と雅也さんはこちらで生活している。
私が暮らし始めることを悦子さんは大歓迎してくれて「瑞樹ちゃんが呼びたいタイミングでお義母さんって呼んでね」と目をキラキラさせて言われたけど、未だに照れ臭くて呼べていない。早く呼べるようになりたいな。
一緒に暮らし始めてから、悦子さんは程よい距離で付き合ってくれて、これがとても心地良い。食事は教えてもらっていて、三人で一緒に食べている。
手芸教室でも報告して、皆にニヤニヤお祝いされたのはこそばゆいけど、それでも楽しく続けている。
そういえば、ここで暮らす前に本格的に運転の練習をしないと、と思っていたのだけど、ある日来てみたら道を広くする作業中だった。よくよく聞いてみると、一番難関の部分は、雅也さんたちの山、つまり私有地で道を整備することは可能だったらしい。業者を雇い、今も整備中だ。悦子さんは「何でもっと早くしてくれないの!」と怒っていたけれど、雅也さんは「道が悪くて、一緒に住めないと言われたら敵わんからな」とそっぽを向いて呟いていた。
私の在宅ワークに必要なネット回線の工事も私が言う前に終わらせていて、私のために道を作ってくれて、雅也さんに歓迎されているのが伝わって、私は胸がいっぱいで言葉にならなかった。
「雅也さん、王子様みたいです。」
と、大真面目に言ったのに
「からかうな。」
と、信じてくれなかった。
◇◇◇
もうしばらく続きます。お付き合い頂けたら嬉しいです!
◇◇◇
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