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しおりを挟むどこをどうやって走って来たのか分からない程、私は動揺していたらしい。辺りは既に真っ暗になっていた。漸く辿り着いた屋敷の前に、大きな人影を見つける。
「ララ。」
「……っ!ラファエル……どうして。」
走って逃げだしたいが、もう体力は残っておらずへとへとだ。私は立ち尽くしてしまった。
「ララ。中に入ってもらいなさい。」
後ろからひょっこりお母様が顔を出した。
「家の中で待っていて良いって言ったのに、ずっと外で待っているんだから。」
呆れたように、だけど優しい口調でお母様はそう教えてくれた。私にはもう逃げるという選択肢は残されておらず、渋々お母様の後に続いた。
応接室に入ると、「ちゃんと話しなさいね。」とお母様は言い残し、その場を離れた。私は自分の家だというのに居心地の悪さを感じながら、ソファに小さく腰掛けた。ラファエルは、てっきり向かい側のソファに座ると思ったのに、私の隣に座ろうとするのでギョッとして止めた。
「だ、だめ!」
「ララ?」
悲しそうな瞳を向けられ、私の胸はぎゅっと掴まれたように痛い。本当は、隣に座ってくれたら、天にも昇る気分になる程に嬉しい。だけど……。
「……ブリトニーが、悲しむわ。私とは距離を取ってちょうだい。」
絞りだした私の声に、ラファエルは不思議そうに首を傾げた。
「ブリトニー?何でブリトニーが関係あるの?」
「……っ!当たり前でしょ!今日、二人で役所に行っていたじゃない!籍を入れてきたんでしょ!」
見たくなかった、あんな光景なんて。知りたくなかった、あんな表情なんて。好きで好きで堪らなくて、私のちっぽけな心臓なんて壊れそうな程なのに。
「ララ、まっ……。」
「おっ、お似合いだったわ二人とも!留学に行くって聞いたけど、二人で行くのかしら?そ、それなら私は……。」
私は、私は、どうしたらいいんだろう。大好きなラファエルが、他の人と結婚して、他の国に行って、私は、どう生きていけばいいんだろう。
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