【完結】落ちこぼれと森の魔女。

たまこ

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「本当にいいのかい?」

 翌日、私はもう一度クロウさんに会いに行った。前日の非礼を詫びると「こちらこそすまなかった。」とクロウさんは頭を下げた。そして私は、師匠の言った“償い”の意味を伝えた後、クロウさんへある物を差し出した。


「ルーシー、それはばあさんがお前の為にって持たせて……。」


「それにこんな貴重な物……きっとエレンが必死で魔力を溜めて君に渡したのだろう。それを私が受け取るのは……。」


 そう、師匠と別れる時に師匠から貰った転移用の魔道具。貴重なものだとは分かっているけれど、私はクロウさんにあげることにした。


「クロウさんはまだ体調が万全じゃないんでしょう?馬車で移動すると身体に負担がかかるから、これ使って下さい。」


「そしたら君が使えなくなってしまうじゃないか。」


「私は大丈夫です。帰るときになったらピーターが師匠の家まで送ってくれるでしょう?」


「あ、ああ、勿論。」


「私はもう暫くここで薬を作らなくてはいけないし、それに……。」

 クロウさんの目をじっと見つめて、私は願った。それは私の自己満足なのかもしれないけれど。


「もうこれ以上師匠を待たせてほしくないんです。」


 クロウさんの目にみるみる涙が溜まっていった。「……恩に着る。」そう小さく呟いたかと思うと、クロウさんは見えなくなってしまった。



◇◇◇◇



 カタン、と響いた物音に彼女は怪訝そうに玄関の扉を開いた。物音の正体を見て、一瞬目を見開いた後彼女は笑った。



「随分、遅かったじゃないか。」



 彼女はもう孤独な魔女では無い。目の前の男が愛する、唯一である。



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