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「そ、そんなことって……。」


 私の悲鳴のような声に、クロウさんは小さく頷くと悲しそうに笑った。


「その頃、エレンの味方は僕以外にもう一人だけ。それがルーシーのおばあさんだよ。」


「え……。」


「彼女はその頃エレンの元で侍女として働いていてね、エレンのことを必死に庇った。それこそ自分の立場が悪くなるくらい。その後で嫁いだ後もあまり良い扱いをされていないと聞いて、何度か会いに行ったんだ。力になりたくて。」


 確かにおばあちゃんはおじいちゃんからも私の両親からも疎まれていた。魔力が弱いせいだとばかり思っていたけれど、他の理由もあったなんて知らなかった。


「だけど彼女は僕の助けを拒否した……彼女もまたこの国に絶望していたんだ。」


「おばあちゃん……。」


「だけどね、ルーシー、彼女はきっとルーシーが生まれてからは希望を持った筈だ。だから君はこんなにも優しい子に育っている。そして君を守るものを彼女から受け取っているね。」


「へ?」


 ぽかんとしていると、クロウさんは私の胸元を指さした。ガサゴソと首に付けていた紐を引っ張り上げる。ここには師匠から貰った転移用の魔道具と、おばあちゃんから貰ったお守りを下げていた。


「そう、そのお守りがルーシーを守っていたんだ。」


 きっとエレンは君にちゃんと説明していないだろう、と聞かれて頷いた。「彼女は、天邪鬼な人だからね。」と話す彼の瞳は、愛おしそうに揺れた。


 ◇◇◇◇

 ルーシーの祖母は、魔力は少ないものの他者の魔力を測定するスキルに長けており、このスキルを持っている者は稀だった。彼女はルーシーが生まれた時に、ルーシーが膨大な魔力を持っていることに気付き、その将来を恐れた。


 ルーシーの両親は、魔力至上主義の人間であり、また人の心を持っていない人間でもあった。ルーシーが彼ら以上に魔力を持っていると知ったら、馬車馬のように働かせ、ルーシーの力を悪用するだろう。また、王家に力を狙われるかもしれない。そう、エレンを絶望させたあの王族たちだ。


 ルーシーの祖母は、ルーシーを想ってお守りを作った。


 それは『ルーシーが幸せになれますように』と想いが込められていた。



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