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「わ、私に……?」
自分の口から戸惑いの声が漏れた。ピーターの伯父さんは療養中だったので、私はまだ一度も会っていない。ピーターの伯父さんがどんな人かはよく分からないけれど、ピーターの恩人で素晴らしい人だと思う。だけど、国王様のお兄様だと思うと畏れ多く思ってしまう。
「ルーシーと話がしたいって。薬のお礼だけでは無いようなんだけど……。」
隣でピーターも首を捻っていた。何を話されるかは不安だけれど、断ることはできない。ピーターの伯父さんの私室へ足早に向かった。
◇◇◇◇
「君が、ルーシーだね?」
ベッドに横になったままのピーターの伯父さん、クロウさんは穏やかな笑みを浮かべて私たちを迎え入れてくれた。
「は、はい……。」
「緊張しないで、大丈夫だよ。ルーシーのおかげで元気になれたんだ。ありがとう。」
「い、いえ!」
優しい声にほっと胸を撫で下ろす。
「急に会いたいと言って驚かせてしまったかな?君にお礼が伝えたかったんだ。そして、話を聞きたかった。」
「私の話、ですか?」
ピーターは怪訝そうにクロウさんを見た。そんなピーターを見て、クロウさんは可笑しそうに笑った。
「使用人たちの話は本当だったんだね。」
「え?」
「ピーターがルーシーを大好きだってこと。」
「なっ……。」
ピーターはしかめっ面になったけど、耳が赤くなったのが見えた。私まで顔が熱くなる。クロウさんは「揶揄ってごめんね。」と笑った後、話を戻した。
「エレン……森の魔女のことを教えてくれるかい?」
彼は笑っているのに、その瞳は悲しみに塗れていた。
自分の口から戸惑いの声が漏れた。ピーターの伯父さんは療養中だったので、私はまだ一度も会っていない。ピーターの伯父さんがどんな人かはよく分からないけれど、ピーターの恩人で素晴らしい人だと思う。だけど、国王様のお兄様だと思うと畏れ多く思ってしまう。
「ルーシーと話がしたいって。薬のお礼だけでは無いようなんだけど……。」
隣でピーターも首を捻っていた。何を話されるかは不安だけれど、断ることはできない。ピーターの伯父さんの私室へ足早に向かった。
◇◇◇◇
「君が、ルーシーだね?」
ベッドに横になったままのピーターの伯父さん、クロウさんは穏やかな笑みを浮かべて私たちを迎え入れてくれた。
「は、はい……。」
「緊張しないで、大丈夫だよ。ルーシーのおかげで元気になれたんだ。ありがとう。」
「い、いえ!」
優しい声にほっと胸を撫で下ろす。
「急に会いたいと言って驚かせてしまったかな?君にお礼が伝えたかったんだ。そして、話を聞きたかった。」
「私の話、ですか?」
ピーターは怪訝そうにクロウさんを見た。そんなピーターを見て、クロウさんは可笑しそうに笑った。
「使用人たちの話は本当だったんだね。」
「え?」
「ピーターがルーシーを大好きだってこと。」
「なっ……。」
ピーターはしかめっ面になったけど、耳が赤くなったのが見えた。私まで顔が熱くなる。クロウさんは「揶揄ってごめんね。」と笑った後、話を戻した。
「エレン……森の魔女のことを教えてくれるかい?」
彼は笑っているのに、その瞳は悲しみに塗れていた。
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