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しおりを挟む「ごめんな。」
師匠に会いたくて夜のベッドの中でメソメソしている私にヴァンは隣でしょんぼりとそう言った。
王宮に来た日、ピーターは夜も私から離れないと言い、リリーさんたちから反対されて口論していた。そして結局ヴァンの姿で一緒に眠ることで決着がついたのだ。それから毎日ヴァンと一緒に眠っている。
「ううん。ここにいて楽しい気持ちもあるの。みんな優しいし、お仕事も楽しいよ。それに……ピーターとヴァンも一緒だし。」
「ん。」
「だけど、師匠に会いたくなっちゃうんだよね。」
「ああ……ルーシーがはやく、もりのまじょにあえるように、がんばるから。」
私は頷いて、ヴァンをぎゅっと抱き締めて眠った。寂しさを振り払うようにして。心配そうに私を見つめるヴァンの瞳には気付かなかった。
目が覚めると、サイドデスクにガーベラの花が四本飾られていた。ピーターはソファに座ったまま動かない。慌てて師匠からもらった花言葉の本を開くと“ガーベラの花言葉:希望”と書かれている。ピーターの優しさに、頬が緩んだ。
「ピーター、ありがとう!」
「ん。」
ピーターの所まで走って行って、ぎゅっと手を握るけどなかなか目が合わない。そこにコンコンとノックの音が聞こえ、リリーさんが入って来た。
「ルーシー様、身支度を始めましょうか。」
「はい。ピーター、後でね。」
「ん。」
のそのそとピーターが出ていく様子を不思議そうに見ていたリリーさんだけど、サイドテーブルを見て可笑しそうに笑った。
「なるほど……。」
「素敵でしょう?ガーベラの花言葉は『希望』なんだって。」
私が花言葉の本を見せるとリリーさんは更に笑みを深めた後、首を振った。
「確かにガーベラの花言葉は『希望』ですが、四本のガーベラには別の花言葉があるんですよ。」
「へ?そうなの?」
「ええ、花言葉は……。」
リリーさんの説明を聞き、私の顔の熱は暫く経っても引かなかった。今日の作業を始めるのが遅くなるほどに私の心は動揺してしまっていた。
四本のガーベラの花言葉『あなたを一生愛する』
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