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しおりを挟む「よーしっ、作るぞ~!」
今日はカモミールのポプリを作ることにしていた。ラベンダーと同じくリラックス効果や安眠効果のあるカモミールは、おばあちゃんやピーターへの次のプレゼントにぴったりだと思えたからだ。
「あー、ルーシー。ちょっと待ちな。」
「へ?」
師匠からストップがかかり、私は手を止める。師匠は少し難しい顔をして、口を開いた。
「悪いんだけどね、カモミールのポプリ作りは今度にして他のことをしてほしいんだ。」
「他のこと?」
「ああ。」
師匠は頷き、理由を説明した。
「今、国内である病が流行っている。治癒魔法も効かないらしい。これまでに無かった病だから治療方法を必死で探していると『タラノプ』という薬草が効くことが分かってね。だが薬草を扱える者は殆どいない……そこでこっちにまで依頼が来ちまった。」
おばあちゃんに聞いたことがある。この国では治癒魔法が盛んだから、病気になっても薬を飲む習慣がないし、薬草を扱う人を見下す傾向がある、って。「……それでは、いけないんだよ。」と悲しそうに話す顔をはっきりと思い出せる。
「……師匠は依頼を受けるの?」
「ん?ああ、仕方ないからね。」
手伝うことは嫌ではなかった。師匠の手伝いが出来る方が嬉しかった。だけど、ヴァンが話していた「もりのまじょは、だれもたすけようとはしなかった」という言葉が引っかかる。師匠は依頼を受けていいのかな。苦しい思いをしていないのかな。
「どうしたんだい?」
師匠に顔を覗き込まれて、私はふるふると首を振り「私がお手伝いできることはあるの?」と尋ねた。師匠は大きく頷き、庭へ出た。庭の空いたスペースにタラノプの種を植えるよう言われ、私は一つずつ蒔いていった。
「『育ちの魔法』を掛けておくれ。」
『育ちの魔法』は植物を一気に成長させることができる魔法だ。最近では私も使えるようになってきた魔法で、ポプリにするカモミールにも使ったばかりだった。
(大きくなりますように。大きくなりますように。)
そう願うと、タラノプは一気に生い茂り、青々とした葉で畑は覆いつくされた。よかった、成功した。私はほっと胸を撫で下ろしたけれど、師匠は複雑な顔をしていた。
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