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しおりを挟む作業部屋に置いていたポプリを手に取る。一度にいくつも作っていたので、おばあちゃんにも二つくらい贈ろうかと考えていたところだった。ピーターが望むなら二つでも三つでも喜んで渡してあげたいと思う。
「本当に一つで良いのかなぁ?」
ぽつりと呟いた後、手に取ったポプリを箱に戻すと、そのまま箱ごと持って行こうと思い付き箱を抱えた。
「ピーターに選んでもらおうっと。」
ポプリ袋の柄は、一つずつ違っている。先程ピーターに渡したものは、私がピーターをイメージして縫ったものだ。どうせ渡すならピーターの家族の好みに合うものを渡したかった。そこで一つじゃなくてもいいよ、と伝えよう。
「おい、チビ。何、一人でぶつぶつ言ってるんだよ。」
「ピーター!」
不機嫌そうな声に振り向くとムッツリと口を一文字に結んだピーターが立っていた。遅いから迎えに来てくれたのだろうか?私が箱からポプリを選ぶように促すと、箱の中を見渡した後ですぐ青いポプリを手に取った。
「いくつでもいいよ?たくさんあるから。」
「いや……大丈夫だ。」
ピーターの顔は晴れない。苦しそうな顔を見ると心がぞわぞわして落ち着かない。
「ピーター。ポプリは半年くらい経つと香りが少なくなるみたい。もしそうなったら、いつでも言ってね。また作るから。遠慮は無しよ?」
「……ルーシー。」
「ポプリに入れるお花やハーブで効能が変わるの。だから、ピーターが必要な効能があれば教えてね。私、いっぱいいっぱい魔力を込めて作るから。」
ピーターに伝えたい事があり過ぎて、つい早口になってしまう。ピーターは呆れたように笑い、ぐしゃぐしゃと乱暴に私の頭を撫でた。「……その時は頼む。」と聞き取れないほど小さな声で呟いて。
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