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13(過去編)
しおりを挟む「さて。お前のばあさんにお前が目を覚ましたって手紙を出してこようかね……お前はまだ駄目だよ。足の怪我が治るまでは大人しく寝てな。」
起き上がれるようになったらいくらでも書けばいいさ、と森の魔女は言った。
「だけど、目を離したら無理しそうなガキだねぇ。」
「そんなこと……。」
コツンコツン。
窓の方から小さな音がした。
「ああ。ちょうどいいところに帰って来た。」
「みゃあん!」
「か、かわいい……!」
森の魔女が窓を開け入って来たのは毛並みの良い黒猫だった。ルーシーは絵本で何度も見て大好きになった猫を間近で見ることができ胸を高鳴らせた。
「やっとめがさめたのか?」
「しゃ……しゃべった……!」
目を丸くしているルーシーを見て、森の魔女は苦笑いを浮かべた。
「こいつは……ヴァンは、普通の猫とは違うのさ。」
「へ?」
「私の使い魔なんだよ。だから口が利けるんだ。ヴァン。私はちょっと出てくるからこの子が無理しないよう見ていてくれ。」
「ん。」
「ルーシー。すぐ戻って来るけど、大人しく寝ているんだよ。」
森の魔女の言葉にルーシーは小さくこくこくと頷いた。それを確認した後、森の魔女はふわりと消えてしまった。
「き、消えた……。」
「ゆうびんやまで、とんでいったんだ。」
「それならおばあちゃんのところへ行けないの?」
「ルーシーのおばあちゃんにはまだあえないみたいだ。だからてがみにしたんだ。」
先程森の魔女が説明していた、「お見舞いは出来ない」の言葉を思い出し、ルーシーの胸は痛んだ。
「……ルーシー。いっしょにねてもいい?」
「へ?も、もちろん!いいよ!」
「ん。」
ヴァンはピョンとベッドの上に上がる。ルーシーが遠慮がちに持ち上げた布団にいそいそと入り、身体を寄せた。
「ルーシー、ヨシヨシして。」
「い、いいの?」
目を輝かせたルーシーにヴァンは頷いた。おずおずと触れるとヴァンの毛並みは艶々で、触れると心地良い。ルーシーは飽きることなくヴァンを撫で続けた。
「……ヴァン。」
「ん?」
「森の魔女ってすごい魔女なの?」
ルーシーの疑問に、ヴァンは大きく頷いた。
「ああ。くにいちばんのまじょだよ。だれもかなわないんだ。」
「ルーシーがもりにはいったとき、すぐきづいたんだ。だからもりのなかでたおれていたルーシーをみつけられたんだ。」
「ルーシーとおばあちゃんに、ルーシーのおやがちかづかないよう、まほうをかけたんだよ。だからもうだいじょうぶだ。」
ルーシーは頷いた。ずっと離れに閉じ込められていたルーシーだが、祖母に魔法について一通り教えてもらっていた。さっき目の前で消えた森の魔女。あんな風に今いる場所から一瞬で移動できるような魔法をルーシーは聞いたことがない。あの魔法だけでも森の魔女が特別だと分かる。
「……そんなすごい魔女の所に、私……いていいのかな?」
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