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10(過去編)
しおりを挟むルーシーが師匠の家にやって来る前のこと。
国内トップレベルの魔力を持つ家系にルーシーは生まれた。父も母も優秀な人間だ。ルーシーが幼い頃は大事に育てられていた記憶が薄らと残っている。
だが、状況が変わったのはルーシーが三歳の時。この国の子どもたちは三歳になると神殿で魔力の測定検査を受けることが義務付けられている。
国内随一の魔力が高い家系の子どもということで、ルーシーの測定結果には注目が集まった。ルーシーの両親も当然ハイレベルな結果しか出ないと信じていた。
しかし、結果は『魔力無し』。両親は嘆き悲しみ、周りの魔法使いは魔力無しの子を持つ両親を馬鹿にした。散々侮辱を受けた両親は、その怒りをルーシーへぶつけるようになった。
「お前の顔を見るとうんざりする。」
そのうち両親はルーシーの顔を見ることすら嫌がり始め、ルーシーを離れに閉じ込めるようになった。
そんな中でルーシーがこれまで生きて来れたのは祖母がいたからだ。ルーシーの祖母もまた、魔力が低い人間で両親は祖母を蔑んでいた。家の中で軽く扱われていた祖母は、ルーシーを庇い一緒に離れで暮らすことにしてくれた。
離れに閉じ込められ、食事も足りないことが殆どだったルーシーだが、祖母に大切に育てられどうにか生き延びることが出来たのだった。
「おばあちゃん。これなあに?」
「うん?ああ、これはねケーキって言うんだよ。」
祖母は、知人に頼み絵本を譲ってもらっていた。離れには沢山の絵本があり、ルーシーと祖母はそれを読むことが日課だった。
「うわぁ~~おいしそう!」
「そうだねぇ。」
祖母は優しく笑っているけれど、その目はとても悲しそうでそれを見る度にルーシーはいつも苦しくなった。
「ルーシーがおおきくなったら、おばあちゃんにもいっぱいかってあげるよ!だからいっしょにたべようね。」
「あ、ああ、うん。楽しみだねぇ。」
「おばあちゃん、やくそくよ。わたしがおおきくなったらふたりでたのしいことをいっぱいするのだから、ながいきするのよ。」
「ああ、そうだねぇ。おばあちゃん、頑張らないとねぇ。」
「そうよ。おばあちゃん、ながいきしてルーシーといっしょにいてね。ずっと、ずっとよ。」
祖母は優しくルーシーを抱き締めた。ルーシーは、太陽のような温かい祖母の香りに包まれることが大好きだった。空腹ばかりの毎日だったけれど、ルーシーは祖母との日々を愛していた。
だが、無情にもルーシーと祖母との約束は守られることは無かった。
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