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しおりを挟むクリームシチューを食べ終わると、お仕事の再開だ。午前中にたくさん取って来たラベンダーを乾燥するために紐をつけて作業部屋に吊るしていく。ラベンダーを取った時に、イチゴの苗にも水を掛けてきたんだった。早く大きくならないかなぁ。
「ルーシー。」
「はぁい。」
「他のことを考えているだろう。」
師匠は怒ったように眉と眉の間に皺を寄せてそう尋ねた。
「う……。ごめんなさい。」
「はぁ、いいかい。どの作業もちゃんと気持ちを込めるんだよ。お前がちゃんと気持ちを込めた時、魔力も込められるんだからね。」
「うん。師匠は今どんな気持ちを込めているの?」
そう聞くと、師匠は少し考えた後で教えてくれた。
「そうだね……。このラベンダーはポプリにするつもりだろう。ラベンダーにはよく眠れる効果やリラックスする効果があるからね。」
「うん。」
師匠が私がここに来て最初の頃に教えてくれたことだ。
「そんなポプリを使いたい人間はどんな状況だと思う?」
「ええっと……疲れている人とか、あんまり眠れていない人?」
「ああ、そうだ。そんな人に込める気持ちは?」
「うーんっと、えっと、元気になりますように、とか、ゆっくり休めますように、とか?」
「そんなとこだ。ほら、最初からやってみな。」
師匠はさっき私がラベンダーにつけた紐をほどいて、ラベンダーと紐を置いた。さっきより緊張しながら、ラベンダーをまとめて紐を巻き付けていく。
(ええっと……元気になりますように。ゆっくり休めますように。)
心の中でそう祈ると、ラベンダーは淡く白い光に包まれた後、すぐその光は消えた。
「わ!びっくりした!」
「ふん。ちゃんと集中してやったみたいだね。」
「成功ってこと?」
「ああ。ちゃんと魔力を込められた物は一瞬だけ光るんだ。」
「やったぁ!!」
「ったく、いちいち騒ぐんじゃないよ!」
師匠は大きな声でそう言ったけれど、私がラベンダーの束をしばらく眺めているのを師匠は叱ったりはしなかった。
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