【完結】君たちへの処方箋

番外編：三毛猫みぃの憂鬱 ④

　三毛猫は葉名の腕の中から彼女を睨んだ。


（ゆるさないから！）


　三毛猫とリッキーを一番から外したら許さない。


　沢山帰って来なかったら許さない。


　一人で泣いてたら許さない。


　悲しいくせに笑ったりしたら許さない。


　幸せにならなかったら許さない。




　葉名の腕に顔を擦り付ける三毛猫を、葉名とリッキーは優しく見つめていた。





　あっという間に葉名たちが帰る時間になった。三毛猫はリッキーに促され、渋々あのちびっ子に別れの挨拶をすることにした。三毛猫がちびっ子の足に顔をすりすりと寄せると、ちびっ子は満面の笑顔を浮かべた。

「みぃが……！」

（ふふん！チョロいちびっこ！）

　三毛猫は可笑しそうに笑っていたが、次の言葉に顔色を変えた。

「今日はごめんね、って言ってるのよ」

「みぃ、ごめんねできてえらいね」

（ちょっと！ばかにしないで！）

　腹を立てた三毛猫は踵を返すとあの男の足をわざわざ踏んづけてから、その場を後にした。本当はもう一度噛み付いてやりたかったが、ぐっと堪えた。これ以上リッキーと母ちゃんに怒られるのはごめんだった。


（なかせたら、いっぱいかむから！）


　だからどうか葉名を大切にしてほしい。

　葉名がずっと笑っていられますように、と二匹は願う。二匹が幸せを願うのが葉名だけでは無くなるのは、そう遠くない未来のお話。





〈君たちへの処方箋　番外編：完〉

　番外編までお付き合いいただきありがとうございました！

　ついつい三毛猫視点で書きたくなってしまいました。

　最後までお読みいただき、ありがとうございました！