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番外編:三毛猫みぃの憂鬱 ③
しおりを挟むリッキーの言葉に、つい頷きそうになった三毛猫は慌てて首を振った。
(あたらしいかぞくなんてイヤ!)
(どうして?みぃ、家族が好きって言ってた)
そう指摘されて三毛猫は元々吊り上がっていた目を更に吊り上げた。
(だって……!)
(うん)
(だってかぞくができたら、ハナもっとかえってこなくなっちゃう……)
葉名は急に帰って来なくなった。正確には、葉名から「引っ越しする」とは聞いていたが三毛猫には意味が伝わっていなかった。
ある日、急に帰って来なくなった葉名を三毛猫は待ち続けた。綺麗になった葉名の部屋の前でみゃあみゃあと鳴き続けた。
それでも最初のうちは葉名は頻繁に帰って来ていた。だから三毛猫も我慢していたのだ。それなのに。
(ハナがかえってこないのはイヤなの!リッキーだってずっとまってたくせに!)
(それは……)
(だからあたらしいかぞくなんていらない!)
「みぃ、ここにいたの?」
三毛猫がそう叫んだ時、葉名が顔を出した。ちらりと家の中を見るとちびっ子は昼寝しているようだ。
「みぃ、リッキー、なかなか帰ってこなくてごめんね」
ガシガシと撫でられ、リッキーは尻尾を千切れんばかりに振った。抱き上げられた三毛猫は身を捩るが葉名の腕から抜け出すことは叶わなかった。
「今まで忙しくて……これからは沢山帰ってくるからね」
「わん!」
リッキーは飛び上がり心底嬉しそうに鳴いた。
(うそつき!)
葉名は嘘つきだ。
三毛猫はずっとずっと待っていたのに帰って来なかった。
三毛猫がずっとずっと呼んでいたのに帰って来なかった。
葉名は嘘つきだ。
泣いてるくせに、大丈夫だと言って笑ってた。
葉名の涙で濡れてしまった三毛猫を拭きながら「ごめんね」と悲しいくせに笑ってそう言った。
葉名は嘘つきだ。
一番かわいい、って三毛猫とリッキーに何度も言っていたのに、三毛猫とリッキーは一番じゃなくなってしまった。
「みぃ、一番かわいい」
(うそつき!)
「リッキーも一番かわいい」
「わん!」
「かわいい子が三人……一人と二匹になったの。あの子も一番仲間に入れてあげてくれる?」
「わん!」
「大好きな子が増えるのは嬉しいね」
(ハナのばか!)
三毛猫がカプリと腕を噛んでも葉名は三毛猫を離さなかった。ぎゅっと抱きしめたまま、三毛猫を優しく撫でた。
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