【完結】君たちへの処方箋

たまこ

文字の大きさ
上 下
17 / 48

17

しおりを挟む
「きょう、おうたうたったねぇ」

「みんなでダンス、たのしかったね」

「おえかき、じょうずだったでしょ」

 颯は想像よりずっと早く子育て支援センターに慣れ、毎回行くのを心待ちにするようになった。子育て支援センターの職員には包み隠さず状況を伝え、他人である葉名の同席も特別に許可してもらった。少しずつ周りの子どもたちとの交流も増えていく。このまま保育園に通えるようになったら、そう期待せずにはいられなかった。

 ただ、子育て支援センターへ行くのは少々億劫だった。子育て支援センターには旺也よりもずっと若い保護者達が子どもと過ごしていた。その様子を見ているとどうしても苦しくなってしまう。

(颯だって、本当なら澪とこうやって過ごせていた筈なのに)

(あの夫婦たちもこんな風に楽しく子どもと遊んでいるのか)

(もう、澪にはできないのに)


 そんな思いを抱いていることを颯にも葉名にも知られたくなかった。だが苦しい思いは日々膨らんでいった。旺也は気が付くとまたメール画面を開いていた。



 <みなさん、こんにちは。処方箋ラジオのお時間です。

 今週のご相談は、先週ご紹介したラジオネーム:ガラス職人さんからのご相談です。“以前、家族に不幸があり子どもを一人で育てることになったと相談した者です。あれから助けてくれる方とは相談し少しずつ上手くやれるようになったかなと思います。その節はありがとうございました。

 今日ご相談したかったのは亡くなった家族のことです。家族は見知らぬ子どもを庇い事故に遭って亡くなりました。見知らぬ子どもとその家族への怒りが未だに収まりません。私の家族は子どもを置いて亡くなったのに、その家族は誰も失わずに幸せに暮らしていることがどうしても許せないのです”とのことでした>


<ガラス職人さんの悲しみや辛さに対して、リスナーの皆様から共感するメールや心配のメールが届いています。今回も時間の許す限りみなさんのメールをご紹介していきたいと思います>

しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

立花家へようこそ!

由奈(YUNA)
ライト文芸
私が出会ったのは立花家の7人家族でした・・・―――― これは、内気な私が成長していく物語。 親の仕事の都合でお世話になる事になった立花家は、楽しくて、暖かくて、とっても優しい人達が暮らす家でした。

風船葛の実る頃

藤本夏実
ライト文芸
野球少年の蒼太がラブレター事件によって知り合った京子と岐阜の町を探索するという、地元を紹介するという意味でも楽しい作品となっています。又、この本自体、藤本夏実作品の特選集となっています。

希望が丘駅前商店街 in 『居酒屋とうてつ』とその周辺の人々

饕餮
ライト文芸
ここは東京郊外松平市にある商店街。 国会議員の重光幸太郎先生の地元である。 そんな商店街にある、『居酒屋とうてつ』やその周辺で繰り広げられる、一話完結型の面白おかしな商店街住人たちのひとこまです。 ★このお話は、鏡野ゆう様のお話 『政治家の嫁は秘書様』https://www.alphapolis.co.jp/novel/210140744/354151981 に出てくる重光先生の地元の商店街のお話です。当然の事ながら、鏡野ゆう様には許可をいただいております。他の住人に関してもそれぞれ許可をいただいてから書いています。 ★他にコラボしている作品 ・『桃と料理人』http://ncode.syosetu.com/n9554cb/ ・『青いヤツと特別国家公務員 - 希望が丘駅前商店街 -』http://ncode.syosetu.com/n5361cb/ ・『希望が丘駅前商店街~透明人間の憂鬱~』https://www.alphapolis.co.jp/novel/265100205/427152271 ・『希望が丘駅前商店街 ―姉さん。篠宮酒店は、今日も平常運転です。―』https://www.alphapolis.co.jp/novel/172101828/491152376 ・『日々是好日、希望が丘駅前商店街-神神飯店エソ、オソオセヨ(にいらっしゃいませ)』https://www.alphapolis.co.jp/novel/177101198/505152232 ・『希望が丘駅前商店街~看板娘は招き猫?喫茶トムトム元気に開店中~』https://ncode.syosetu.com/n7423cb/ ・『Blue Mallowへようこそ~希望が丘駅前商店街』https://ncode.syosetu.com/n2519cc/

伊緒さんのお嫁ご飯

三條すずしろ
ライト文芸
貴女がいるから、まっすぐ家に帰ります――。 伊緒さんが作ってくれる、おいしい「お嫁ご飯」が楽しみな僕。 子供のころから憧れていた小さな幸せに、ほっと心が癒されていきます。 ちょっぴり歴女な伊緒さんの、とっても温かい料理のお話。 「第1回ライト文芸大賞」大賞候補作品。 「エブリスタ」「カクヨム」「すずしろブログ」にも掲載中です!

深夜水溶液

海獺屋ぼの
ライト文芸
鴨川月子は海に反射するネオンが好きだった。 人工的な明かりは彼女をゆっくりと東京という街に溶かしていく―ー。 タイトル作品「深夜水溶液」他4人の人物の成長と葛藤を描いた短編集。

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

雨上がりの虹と

瀬崎由美
ライト文芸
大学受験が終わってすぐ、父が再婚したいと言い出した。 相手の連れ子は小学生の女の子。新しくできた妹は、おとなしくて人見知り。 まだ家族としてイマイチ打ち解けられないでいるのに、父に転勤の話が出てくる。 新しい母はついていくつもりで自分も移動願いを出し、まだ幼い妹を含めた三人で引っ越すつもりでいたが……。 2年間限定で始まった、血の繋がらない妹との二人暮らし。 気を使い過ぎて何でも我慢してしまう妹と、まだ十代なのに面倒見の良すぎる姉。 一人っ子同士でぎこちないながらも、少しずつ縮まっていく姉妹の距離。   ★第7回ライト文芸大賞で奨励賞をいただきました。

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました

かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中! そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……? 可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです! そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!? イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!! 毎日17時と19時に更新します。 全12話完結+番外編 「小説家になろう」でも掲載しています。

処理中です...