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「きょう、おうたうたったねぇ」
「みんなでダンス、たのしかったね」
「おえかき、じょうずだったでしょ」
颯は想像よりずっと早く子育て支援センターに慣れ、毎回行くのを心待ちにするようになった。子育て支援センターの職員には包み隠さず状況を伝え、他人である葉名の同席も特別に許可してもらった。少しずつ周りの子どもたちとの交流も増えていく。このまま保育園に通えるようになったら、そう期待せずにはいられなかった。
ただ、子育て支援センターへ行くのは少々億劫だった。子育て支援センターには旺也よりもずっと若い保護者達が子どもと過ごしていた。その様子を見ているとどうしても苦しくなってしまう。
(颯だって、本当なら澪とこうやって過ごせていた筈なのに)
(あの夫婦たちもこんな風に楽しく子どもと遊んでいるのか)
(もう、澪にはできないのに)
そんな思いを抱いていることを颯にも葉名にも知られたくなかった。だが苦しい思いは日々膨らんでいった。旺也は気が付くとまたメール画面を開いていた。
<みなさん、こんにちは。処方箋ラジオのお時間です。
今週のご相談は、先週ご紹介したラジオネーム:ガラス職人さんからのご相談です。“以前、家族に不幸があり子どもを一人で育てることになったと相談した者です。あれから助けてくれる方とは相談し少しずつ上手くやれるようになったかなと思います。その節はありがとうございました。
今日ご相談したかったのは亡くなった家族のことです。家族は見知らぬ子どもを庇い事故に遭って亡くなりました。見知らぬ子どもとその家族への怒りが未だに収まりません。私の家族は子どもを置いて亡くなったのに、その家族は誰も失わずに幸せに暮らしていることがどうしても許せないのです”とのことでした>
<ガラス職人さんの悲しみや辛さに対して、リスナーの皆様から共感するメールや心配のメールが届いています。今回も時間の許す限りみなさんのメールをご紹介していきたいと思います>
「みんなでダンス、たのしかったね」
「おえかき、じょうずだったでしょ」
颯は想像よりずっと早く子育て支援センターに慣れ、毎回行くのを心待ちにするようになった。子育て支援センターの職員には包み隠さず状況を伝え、他人である葉名の同席も特別に許可してもらった。少しずつ周りの子どもたちとの交流も増えていく。このまま保育園に通えるようになったら、そう期待せずにはいられなかった。
ただ、子育て支援センターへ行くのは少々億劫だった。子育て支援センターには旺也よりもずっと若い保護者達が子どもと過ごしていた。その様子を見ているとどうしても苦しくなってしまう。
(颯だって、本当なら澪とこうやって過ごせていた筈なのに)
(あの夫婦たちもこんな風に楽しく子どもと遊んでいるのか)
(もう、澪にはできないのに)
そんな思いを抱いていることを颯にも葉名にも知られたくなかった。だが苦しい思いは日々膨らんでいった。旺也は気が付くとまたメール画面を開いていた。
<みなさん、こんにちは。処方箋ラジオのお時間です。
今週のご相談は、先週ご紹介したラジオネーム:ガラス職人さんからのご相談です。“以前、家族に不幸があり子どもを一人で育てることになったと相談した者です。あれから助けてくれる方とは相談し少しずつ上手くやれるようになったかなと思います。その節はありがとうございました。
今日ご相談したかったのは亡くなった家族のことです。家族は見知らぬ子どもを庇い事故に遭って亡くなりました。見知らぬ子どもとその家族への怒りが未だに収まりません。私の家族は子どもを置いて亡くなったのに、その家族は誰も失わずに幸せに暮らしていることがどうしても許せないのです”とのことでした>
<ガラス職人さんの悲しみや辛さに対して、リスナーの皆様から共感するメールや心配のメールが届いています。今回も時間の許す限りみなさんのメールをご紹介していきたいと思います>
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