【完結】君たちへの処方箋

たまこ

文字の大きさ
上 下
16 / 48

16

しおりを挟む

 葉名からの提案は、保育園では無く子育て支援センターを利用する、というものだった。そこでは子どもと保護者で通い、他の親子と交流したりイベントや遊びを楽しむ場所のようだ。町内ではいくつかの子育て支援センターがあったが、そこから保育園が運営しているものを彼女は勧めた。その保育園は颯が元々通っていた保育園とは別の園だった。

「これまで通っていた保育園にまた通うのはもしかしたら難しいかもしれません」

 颯の昼寝中、葉名はそう言った。

「勿論戻れたら戻れたで良いんですが、戻れない時のことも考えていた方が良いかなと思います」

 “保育園に行っている間にお母さんと会えなくなってしまったから、ここにいることが不安なのかもしれません”―――以前保育士がそう話していたことを思い出す。旺也がそれを伝えると葉名も大きく頷いた。

「今、旺也さんと離されるのは颯ちゃんにとってすごく辛いことだと思います」

「……そうか?」

 葉名が来ている間は旺也を羽虫のように追い払うし、葉名がいない間は葉名の話ばかりしている甥を思い出し、旺也は首を捻った。

「そうですよ。なのでまずは保育園の場所に慣れていく練習をしましょう。楽しい場所だと、安全な場所だと思えることを目指せたらいいかな、と」

「ああ」

「ここに慣れて、この保育園なら行けそうと思えたら保育園へ相談してみましょう。颯ちゃんに合わなかったら、また別の方法を考えてみましょ」

 颯が昼寝から目覚め、子育て支援センターのホームページを見せると「はなちゃんといく」と即答する。せめて三人で行こうと説得するのに随分と時間が掛かった。

しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

小さなお客さま

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ライト文芸
【私の人生を大きく変えたのは小さなお客さまでした】 祖父から受け継いだ、レトロなレンタルショップ。いつもお客が来なくて閑古鳥が鳴いていた。いい加減店仕舞いして、OLとして働く事を考えていた時、小さなお客さまが私の店に訪れた。そして私の人生は大きく変わっていく―。 ※苦手な短編小説が書けるように取り組んでいます。読んで頂けると光栄です

立花家へようこそ!

由奈(YUNA)
ライト文芸
私が出会ったのは立花家の7人家族でした・・・―――― これは、内気な私が成長していく物語。 親の仕事の都合でお世話になる事になった立花家は、楽しくて、暖かくて、とっても優しい人達が暮らす家でした。

猫がいた風景

篠原 皐月
ライト文芸
太郎が帰省した実家で遭遇した、生後2ヵ月の姉妹猫、ミミとハナ。 偶に顔を合わせるだけの準家族二匹と、彼のほのぼのとした交流。 小説家になろう、カクヨムからの転載作品です。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました

かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中! そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……? 可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです! そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!? イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!! 毎日17時と19時に更新します。 全12話完結+番外編 「小説家になろう」でも掲載しています。

雨上がりの虹と

瀬崎由美
ライト文芸
大学受験が終わってすぐ、父が再婚したいと言い出した。 相手の連れ子は小学生の女の子。新しくできた妹は、おとなしくて人見知り。 まだ家族としてイマイチ打ち解けられないでいるのに、父に転勤の話が出てくる。 新しい母はついていくつもりで自分も移動願いを出し、まだ幼い妹を含めた三人で引っ越すつもりでいたが……。 2年間限定で始まった、血の繋がらない妹との二人暮らし。 気を使い過ぎて何でも我慢してしまう妹と、まだ十代なのに面倒見の良すぎる姉。 一人っ子同士でぎこちないながらも、少しずつ縮まっていく姉妹の距離。   ★第7回ライト文芸大賞で奨励賞をいただきました。

私の主治医さん - 二人と一匹物語 -

鏡野ゆう
ライト文芸
とある病院の救命救急で働いている東出先生の元に運び込まれた急患は何故か川で溺れていた一人と一匹でした。救命救急で働くお医者さんと患者さん、そして小さな子猫の二人と一匹の恋の小話。 【本編完結】【小話】 ※小説家になろうでも公開中※

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

処理中です...