【完結】お高い魔術師様は、今日も侍女に憎まれ口を叩く。

たまこ

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「ロナルド様、ロナルド様!」

 リイナが何度呼んでもロナルドは止まらなかった。もう誰もいない中庭の奥まで来ている。強く握られた腕も、履きなれないヒール靴で早歩きする足も悲鳴を上げていた。


「痛い、痛いですって!」


 リイナが情けない声を上げると、ロナルドは漸く止まり手を離した。ロナルドに握られた腕は赤くなっている。足も確実に靴擦れが出来ているだろう。怒りたいのはリイナの方なのに、ロナルドは不機嫌そうに言葉を吐いた。


「……っ、連れてこなければ良かった。」

 そう聞いた瞬間、リイナの目にじわりと涙が浮かんだ。

「……っ!じゃあ連れてこないで下さいよ!」


「……何?」


「私はもう!ロナルド様の隣には立てない立場なんです!学生時代とは違う!社交には出られないし、ドレスも一着も無い!マナーだってもう忘れてしまったのに。勝手に連れてきておいて、連れてこなければ良かったなんて……!」

 ぽろぽろと涙を流すリイナを見てロナルドは何も言わなかった。「着飾っても褒めてもくれないのに……。」と子どものように駄々を捏ねるリイナの言葉は闇へ消えてしまった。


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