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しおりを挟むオリヴィア様の幼い頃、当時はガブリエルだった頃からオリヴィア様はファッションやメイクが大好きだった。だが侯爵家の嫡男だったことで、そのような趣味は許されず厳しい教育を受けていた。
そんな中、貴族の令息令嬢が集まるお茶会でリシャール様や私、クロエと会う機会も多かった。
「私、貴女に八つ当たりしていたの。私は着飾ることを許されないのに、貴女はこんなに可愛いくせに着飾ることをしないなんてって。」
酷いことしてごめんなさい、と頭を下げるオリヴィア様に私はふるふると首を振った。
「だけどね、あの時リシャールが教えてくれたの。アニエスはあのケバケバしい悪魔みたいな女に嫌なことをされてるって。」
「え……!」
「リシャールには口止めされてるのだけど、あの悪魔の所業を貴女のお父様に伝えたのはリシャールよ。不器用だから貴女に優しい言葉ひとつ掛けられなかったみたいだけど。」
「そんな……。」
確かにあの頃不思議に思っていた。お父様はどうして継母のしていることに気付いたのだろう、と。まさかリシャール様が助けてくれたなんて思っていなかったけれど。
「それから私は貴女への意地悪は止めて、丁度留学の話が上がったから他国へ留学したの。そこでメイク師の仕事を知って、のめり込んでいったわ。家には勘当されちゃったけどね。」
だから今はただのオリヴィアなの、と彼女は少し悲しそうに笑った。
「私はあの頃意地悪してた、華やかなことが苦手な引っ込み思案の可愛い女の子をどうしても着飾りたくて、またこちらに戻ってきたの。」
この前可愛くない、と私に言ったのは今の最低限のメイクやファッションのことを言いたかったのだとオリヴィア様は釈明した。
「オリヴィア様……。」
彼女が私を抱き締めようとした時「止めろ。」と低い声が聞こえ、ふわりと腕を引かれる。
「んもう!リシャール!邪魔しないでよ!」
「ガブリエル……お前の恋愛対象は女性だろう。アニエスに無闇に触れるな。」
「「え!?」」
私とクロエが声を合わせて驚くと、オリヴィア様は「自分が可愛くなるのも、可愛い女の子も大好きなの!」とにっこり笑った。
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