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「…………誰と誰が愛し合っている、だって?」


 随分長く沈黙した後、リシャール様が低い声で尋ねた。


「そ、それは……っ!」


「ねぇ、私のこと覚えてないの?」

 言い争いになりかけた私たちの間に、美女は割って入ると見とれるほど美しく妖艶に笑った。


「……貴女のような美しい方、私の知り合いにはおりません。」


「まぁ!嬉しいこと言ってくれるじゃない!」


 美女は私に抱き着こうと両腕を大きく広げた……だがリシャール様が美女を突き飛ばした。


「リ、リシャール様!女性にそんなこと……。」


「アニエス。こいつはガブリエルだ。覚えていないか?」

「へ?」

「ちょっとぉ!今はオリヴィアって呼んでって言ってるでしょ!」

 美女……オリヴィア(ガブリエル)は身体をくねらせて声を上げた。私は記憶を必死に巡らせるが、私の知り合いにガブリエルは一人しか居ない。


「あの……ガブリエル様なの?」


「ええ。貴女にしょっちゅう意地悪していたガブリエルよ。」

 今はオリヴィアだけどね、と付け加える彼女の笑顔はどことなくガブリエルの面影がある。リシャール様が私を庇ってくれたあの頃、意地悪してきた男の子―――彼がガブリエル様だ。



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