【完結】あなたから、言われるくらいなら。

たまこ

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 それから私は学園でクララに声を掛けるようになった。友人のリンは、初めは嫌がっていたが、私の説明を聞いて、渋々付き合ってくれた。



 クララは、思っていた以上に私やリンの声掛けに喜んでくれ、一緒に過ごす時間が増えた。女子生徒の友人がいないことは、彼女にとって、とても不安なことだったらしい。


 私やリンが声を掛けるようになったことで、他の女子生徒からのクララへの当たりも弱くなったようだ。少しずつ、クララに声を掛ける女子生徒も増えていった。



 そして、私とジェレミーは、というと……。






「……ジェレミー。」



「何だ?アマンダ?」



「お願いだから降ろしてちょうだい。」



「アマンダからのお願いでも、それは聞けないな。」



「~~っ!」



 仲直りしたあの日、バーサによって口づけを禁止されたジェレミーは、律儀に約束を守っている。守っているのだが……。


「膝に乗せないで、っていつもお願いしていますのに……。」



 学園の行き帰りの馬車の中、ジェレミーは必ず私を膝に乗せるようになった。不安定な馬車の中で、私は必然的にジェレミーに体を寄せなければならない。それがとんでもなく恥ずかしかった。



「俺の気持ちを、余すことなく伝えたいんだ。」



「……っ、分かっていますから。」



「ううん、全然足りないよ。」



 腕に力を込めて、抱きしめられると、私はジェレミーの胸元に顔を埋める形になり、もう異論は唱えられなくなる。




「明日のお茶会は、どうしますの?」


「すまない。殿下から呼び出しが入ってしまって……。」


 ジェレミーが忙しいのは変わらない。それでも、どんな要件か話せる範囲で話してくれるようになり、私はもう不安を感じることは無くなっていた。



「だから、夕方、アマンダの顔を見に来たいのだが良いだろうか?」



「……!ええ、もちろん!」



 ジェレミーは以前よりもたくさん会う時間を持とうと努力してくれる。私にとって、それがどれほど幸福か、ジェレミーはきっと知らないだろう。




「ジェレミー、あのね……。」


 私の気持ちを、こっそりと耳打ちする。私は文句を言いながらも、ジェレミーの緩んだ笑顔を見られる特等席を、とっても気に入っていた。






〈おしまい〉






 最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
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みんなの感想(2件)

yupi
2024.12.14 yupi

おもしろかったです。バーサ、最高!

2024.12.14 たまこ

ご感想ありがとうございます!
バーサ、お気に入りのキャラクターなので嬉しいです!

解除
Kita
2023.04.25 Kita

新作、読ませていただきました📖
今回もとっても面白かったです😍

1話目からとにかく切なく、胸キュン連発💘
こんなに次の更新が楽しみな作品はありませんでした💘

たまこ先生作品の登場人物は脇役も主役級に魅力的で、今回もアーロン&バーサはキラッキラに輝いてました✨

ヒロインちゃんの心にはしっかりと寄り添い、ヒーローには(慕っていながらも)辛辣🤣シリアス胸キュンだけではなく、爆笑を取り入れながら、物語を彩っていく手法はたまこ先生の十八番!!(バーサの箒、大爆笑でした🤣)

『ジェレミーが浮気?疑惑』『アマンダ、衝撃な婚約破棄宣言😡』を乗り越え、2人が幸せになって、本当に良かったです❤️

あぁ~面白かった😍
たまこ先生、素敵なお話をありがとうございました📖✨

2023.04.25 たまこ

Kitaさま

お読みいただきありがとうございます!

バーサの突っ走り加減が可愛くて、書いていて楽しかったです❣️笑ってもらえて嬉しい!!

すれ違いものが好きなのですが「浮気を誤解させるようなヒーローにもっとお仕置きするべき!」という、私の願いからバーサには暴れてもらいました🤣🤣


アーロンもちゃっかり箒を持っているなど、厳しくも、主人を思っての行動でした😆✨

胸キュンしてもらえて嬉しいです💕アマンダとジェレミー、二人とも可愛くて最後まで書くのが楽しかったです🎵

いつも素敵なご感想ありがとうございます!!

解除

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