上 下
13 / 13

13

しおりを挟む


 それから私は学園でクララに声を掛けるようになった。友人のリンは、初めは嫌がっていたが、私の説明を聞いて、渋々付き合ってくれた。



 クララは、思っていた以上に私やリンの声掛けに喜んでくれ、一緒に過ごす時間が増えた。女子生徒の友人がいないことは、彼女にとって、とても不安なことだったらしい。


 私やリンが声を掛けるようになったことで、他の女子生徒からのクララへの当たりも弱くなったようだ。少しずつ、クララに声を掛ける女子生徒も増えていった。



 そして、私とジェレミーは、というと……。






「……ジェレミー。」



「何だ?アマンダ?」



「お願いだから降ろしてちょうだい。」



「アマンダからのお願いでも、それは聞けないな。」



「~~っ!」



 仲直りしたあの日、バーサによって口づけを禁止されたジェレミーは、律儀に約束を守っている。守っているのだが……。


「膝に乗せないで、っていつもお願いしていますのに……。」



 学園の行き帰りの馬車の中、ジェレミーは必ず私を膝に乗せるようになった。不安定な馬車の中で、私は必然的にジェレミーに体を寄せなければならない。それがとんでもなく恥ずかしかった。



「俺の気持ちを、余すことなく伝えたいんだ。」



「……っ、分かっていますから。」



「ううん、全然足りないよ。」



 腕に力を込めて、抱きしめられると、私はジェレミーの胸元に顔を埋める形になり、もう異論は唱えられなくなる。




「明日のお茶会は、どうしますの?」


「すまない。殿下から呼び出しが入ってしまって……。」


 ジェレミーが忙しいのは変わらない。それでも、どんな要件か話せる範囲で話してくれるようになり、私はもう不安を感じることは無くなっていた。



「だから、夕方、アマンダの顔を見に来たいのだが良いだろうか?」



「……!ええ、もちろん!」



 ジェレミーは以前よりもたくさん会う時間を持とうと努力してくれる。私にとって、それがどれほど幸福か、ジェレミーはきっと知らないだろう。




「ジェレミー、あのね……。」


 私の気持ちを、こっそりと耳打ちする。私は文句を言いながらも、ジェレミーの緩んだ笑顔を見られる特等席を、とっても気に入っていた。






〈おしまい〉






 最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

Kita
2023.04.25 Kita

新作、読ませていただきました📖
今回もとっても面白かったです😍

1話目からとにかく切なく、胸キュン連発💘
こんなに次の更新が楽しみな作品はありませんでした💘

たまこ先生作品の登場人物は脇役も主役級に魅力的で、今回もアーロン&バーサはキラッキラに輝いてました✨

ヒロインちゃんの心にはしっかりと寄り添い、ヒーローには(慕っていながらも)辛辣🤣シリアス胸キュンだけではなく、爆笑を取り入れながら、物語を彩っていく手法はたまこ先生の十八番!!(バーサの箒、大爆笑でした🤣)

『ジェレミーが浮気?疑惑』『アマンダ、衝撃な婚約破棄宣言😡』を乗り越え、2人が幸せになって、本当に良かったです❤️

あぁ~面白かった😍
たまこ先生、素敵なお話をありがとうございました📖✨

たまこ
2023.04.25 たまこ

Kitaさま

お読みいただきありがとうございます!

バーサの突っ走り加減が可愛くて、書いていて楽しかったです❣️笑ってもらえて嬉しい!!

すれ違いものが好きなのですが「浮気を誤解させるようなヒーローにもっとお仕置きするべき!」という、私の願いからバーサには暴れてもらいました🤣🤣


アーロンもちゃっかり箒を持っているなど、厳しくも、主人を思っての行動でした😆✨

胸キュンしてもらえて嬉しいです💕アマンダとジェレミー、二人とも可愛くて最後まで書くのが楽しかったです🎵

いつも素敵なご感想ありがとうございます!!

解除

あなたにおすすめの小説

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

旦那様、離縁の申し出承りますわ

ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」 大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。 領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。 旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。 その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。 離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに! *女性軽視の言葉が一部あります(すみません)

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました

Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。 どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も… これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない… そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが… 5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。 よろしくお願いしますm(__)m

【完結】側妃は愛されるのをやめました

なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」  私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。  なのに……彼は。 「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」  私のため。  そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。    このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?  否。  そのような恥を晒す気は無い。 「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」  側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。  今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。 「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」  これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。  華々しく、私の人生を謳歌しよう。  全ては、廃妃となるために。    ◇◇◇  設定はゆるめです。  読んでくださると嬉しいです!

きっとやり直せる。双子の妹に幸せを奪われた私は別の場所で幸せになる。

しげむろ ゆうき
恋愛
 ある日、問題児である双子の妹が妊娠をしたと知らされる。  しかも、相手は私の婚約者らしい……。  すると、妹を溺愛する家族は容姿が似ている妹と私を交換しようと言いだしたのだ。  そして問題児の妹になった私は家族の縁を切られ追い出されてしまったのだった。  タイトルが全く思いつかず一時間悩みました(笑) ※8話ホラー要素あり。飛ばしても大丈夫です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。