8 / 13
8
しおりを挟む「お嬢様、何かあればすぐお呼びくださいね。」
ベッドに寝かされた私は、バーサの言葉に小さく頷いた。バーサは心配そうにしながら退室した。
あの後、わんわんと大声で泣き続けた私を助けてくれたのはバーサだった。「今日はもうこれまでにして下さい。」と、鬼のような表情でジェレミーに言い放ち、私は幼子のようにバーサに手を引かれ帰宅した。
帰宅してすぐ、泣きすぎたせいか、ストレスが大きかったせいか、発熱してしまった。慌てた使用人たちが、あっという間に寝支度をしてくれ、お医者様を呼んでくれ、熱さましを処方された。
「……今日は、散々だったわね。」
いくら寝ようとしても、全く寝付けない。溜息をつき、言葉を漏らすと、コロンと、寝返りを打った。
「だけど、良かったのかもしれないわ。」
あんな醜態を晒してしまったけれど、それでも思っていたことを全て伝えることが出来た。ジェレミーに引かれていても構わないと思えた。
私は、目をぎゅっと閉じると、無理矢理眠ろうと試みた。
◇◇◇◇
「……アーロン。」
帰り道の馬車の中、絶望に打ちひしがれた主に名を呼ばれたアーロンは、渋々返事をした。
「何でしょうか。」
「俺は、あれほどアマンダを傷付けていたのか。」
アマンダは幼い頃から、引っ込み思案で優しく、控えめに笑う女の子だった。今日のように感情を爆発させることなど、今までに無かった。
「そうですね。」
「……はぁ。どうしたらいいんだ……。」
がっくりと肩を落としたジェレミーを、アーロンは慰めなかった。アマンダに言葉が足りないと散々忠告したのに、聞かなかったのはジェレミーだ。
「ともかく、謝られるしかないかと。今日、アマンダ様もご自分の気持ちを伝えて、多少は気持ちが収まっている筈です。次は、もう少し聞いて下さるかもしれません。」
「……ああ。」
アーロンは、この不器用な主を複雑な思いで見ているしかなかった。
741
お気に入りに追加
809
あなたにおすすめの小説

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し

君に愛は囁けない
しーしび
恋愛
姉が亡くなり、かつて姉の婚約者だったジルベールと婚約したセシル。
彼は社交界で引く手数多の美しい青年で、令嬢たちはこぞって彼に夢中。
愛らしいと噂の公爵令嬢だって彼への好意を隠そうとはしない。
けれど、彼はセシルに愛を囁く事はない。
セシルも彼に愛を囁けない。
だから、セシルは決めた。
*****
※ゆるゆる設定
※誤字脱字を何故か見つけられない病なので、ご容赦ください。努力はします。
※日本語の勘違いもよくあります。方言もよく分かっていない田舎っぺです。

私を侮辱する婚約者は早急に婚約破棄をしましょう。
しげむろ ゆうき
恋愛
私の婚約者は編入してきた男爵令嬢とあっという間に仲良くなり、私を侮辱しはじめたのだ。
だから、私は両親に相談して婚約を解消しようとしたのだが……。

どうか、お幸せになって下さいね。伯爵令嬢はみんなが裏で動いているのに最後まで気づかない。
しげむろ ゆうき
恋愛
キリオス伯爵家の娘であるハンナは一年前に母を病死で亡くした。そんな悲しみにくれるなか、ある日、父のエドモンドが愛人ドナと隠し子フィナを勝手に連れて来てしまったのだ。
二人はすぐに屋敷を我が物顔で歩き出す。そんな二人にハンナは日々困らされていたが、味方である使用人達のおかげで上手くやっていけていた。
しかし、ある日ハンナは学園の帰りに事故に遭い……。

父の大事な家族は、再婚相手と異母妹のみで、私は元より家族ではなかったようです
珠宮さくら
恋愛
フィロマという国で、母の病を治そうとした1人の少女がいた。母のみならず、その病に苦しむ者は、年々増えていたが、治せる薬はなく、進行を遅らせる薬しかなかった。
その病を色んな本を読んで調べあげた彼女の名前は、ヴァリャ・チャンダ。だが、それで病に効く特効薬が出来上がることになったが、母を救うことは叶わなかった。
そんな彼女が、楽しみにしていたのは隣国のラジェスへの留学だったのだが、そのために必死に貯めていた資金も父に取り上げられ、義母と異母妹の散財のために金を稼げとまで言われてしまう。
そこにヴァリャにとって救世主のように現れた令嬢がいたことで、彼女の人生は一変していくのだが、彼女らしさが消えることはなかった。

【完結】あなたに嫌われている
なか
恋愛
子爵令嬢だった私に反対を押し切って
結婚しようと言ってくれた日も
一緒に過ごした日も私は忘れない
辛かった日々も………きっと………
あなたと過ごした2年間の四季をめぐりながら
エド、会いに行くね
待っていて

姉が私の婚約者と仲良くしていて、婚約者の方にまでお邪魔虫のようにされていましたが、全員が勘違いしていたようです
珠宮さくら
恋愛
オーガスタ・プレストンは、婚約者している子息が自分の姉とばかり仲良くしているのにイライラしていた。
だが、それはお互い様となっていて、婚約者も、姉も、それぞれがイライラしていたり、邪魔だと思っていた。
そこにとんでもない勘違いが起こっているとは思いもしなかった。

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる