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「お嬢様、何かあればすぐお呼びくださいね。」


 ベッドに寝かされた私は、バーサの言葉に小さく頷いた。バーサは心配そうにしながら退室した。


 あの後、わんわんと大声で泣き続けた私を助けてくれたのはバーサだった。「今日はもうこれまでにして下さい。」と、鬼のような表情でジェレミーに言い放ち、私は幼子のようにバーサに手を引かれ帰宅した。


 帰宅してすぐ、泣きすぎたせいか、ストレスが大きかったせいか、発熱してしまった。慌てた使用人たちが、あっという間に寝支度をしてくれ、お医者様を呼んでくれ、熱さましを処方された。




「……今日は、散々だったわね。」


 いくら寝ようとしても、全く寝付けない。溜息をつき、言葉を漏らすと、コロンと、寝返りを打った。


「だけど、良かったのかもしれないわ。」


 あんな醜態を晒してしまったけれど、それでも思っていたことを全て伝えることが出来た。ジェレミーに引かれていても構わないと思えた。



 私は、目をぎゅっと閉じると、無理矢理眠ろうと試みた。




◇◇◇◇




「……アーロン。」


 帰り道の馬車の中、絶望に打ちひしがれた主に名を呼ばれたアーロンは、渋々返事をした。



「何でしょうか。」



「俺は、あれほどアマンダを傷付けていたのか。」


 アマンダは幼い頃から、引っ込み思案で優しく、控えめに笑う女の子だった。今日のように感情を爆発させることなど、今までに無かった。



「そうですね。」



「……はぁ。どうしたらいいんだ……。」


 がっくりと肩を落としたジェレミーを、アーロンは慰めなかった。アマンダに言葉が足りないと散々忠告したのに、聞かなかったのはジェレミーだ。


「ともかく、謝られるしかないかと。今日、アマンダ様もご自分の気持ちを伝えて、多少は気持ちが収まっている筈です。次は、もう少し聞いて下さるかもしれません。」



「……ああ。」


 アーロンは、この不器用な主を複雑な思いで見ているしかなかった。
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