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しおりを挟む「……そろそろ、婚約破棄を言い渡されるかしらね。」
ジェレミーの屋敷に向かう馬車の中、ぽつりと呟いた私の言葉に、私の専属侍女バーサは目を吊り上げた。
「お嬢様に無礼な行動の数々……あの男、絶対に許しません!」
「ふふふ。ありがとう。」
もうヘトヘトになってしまい、怒ることも忘れた私の代わりに怒ってくれるバーサの言葉が嬉しかった。
「なぜ、私が婚約破棄を言い渡されないといけないのかしらね?私は何も悪いことはしていないはずだけど。」
「お嬢様……。」
心許せるバーサの前だからこそ、つい不満を口にしてしまう。バーサから労わられていると、馬車はジェレミーの屋敷に着いた。ジェレミーの従者、アーロンに案内され、いつも通り、中庭の東屋に通された。
「アマンダ!会いたかった。」
嬉しそうに迎えるジェレミーが腹立たしい。大体、前回ジェレミーがクララとの約束を優先しなければ、もっと早く会えたというのに、何が会いたかった、だ。
「ジェレミー。」
言葉を探していると、そわそわとしながら、ジェレミーが私の席に案内してくれた。そして自身も席に座るが、今日は何だか落ち着きがないように見える。体を不自然に動かしたり、ぎこちない笑顔を浮かべたりしている。
「……ジェレミー、どうかしたの?」
「あ、ああ。落ち着きが無くてすまない。もうすぐ俺たちも卒業だろう?」
「ええ、そうね。」
「だから、結婚式のことをそろそろ相談したいと思ったんだ。」
結婚?一体、誰と誰が……?私は、思いっきり眉間に皺を寄せていたようで、ジェレミーは慌てたように私の名を呼んだ。
「アマンダ?」
「……結婚式、って、誰と誰の話ですの?」
「それは勿論、俺とアマンダの結婚式のことだよ。」
花を綻ばせるように笑うジェレミーに、私はこの三か月間の怒りや悲しみが最高潮になった。なぜ、他の女性を侍らせておいて、私との結婚をこれほど嬉しそうに話せるのか。ジェレミーの気持ちが全く分からなかった。
「……ですわ。」
「アマンダ?」
「婚約破棄ですわ……!他の女性と散々二人で過ごしておいて、よくも抜け抜けと私と結婚の話なんて出来ますわね!」
「アマンダ……。」
「私は絶対に許しません!ジェレミーのことなんて、だいっきらい!結婚なんて絶対しません!」
私は大声で叫んだ後、早足で玄関まで向かった。ジェレミーが追いかけることは無かった。
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