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第二部
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しおりを挟む「ひゃ!ちょっと……っ!下ろして!それに……ちゃんと説明してよっ!」
甘く囁かれたかと思ったら、急に抱き上げられエラは大声を上げた。
「うるせー」
ジャックは抱き上げたまま自室に戻った。ぎゃあぎゃあと喚きたてるエラとうんざりしたジャックの姿をこっそり見た講師たちは漸く収まるところへ収まったと胸を撫で下ろした。
扉を閉め、ジャックのベッドに下ろされたエラは混乱した。
(まさかお義姉さまの言っていた”共寝”をする、ってこと?!)
一気に全身が熱くなり鼓動が早くなる。顔を赤らめるエラへジャックは呆れた視線を向けた。
「何期待してんだ」
「なっ、き、期待なんてしてないわよ!」
「どうだか」
にやりと笑ったジャックの顔を見ていたら、悔しいのにときめいてしまう。
「……ずるい」
「何が」
「私ばっかりドキドキさせられてるから」
「……っ、お前は」
ふいと視線を逸らされてしまい彼の顔が見えなくなってしまった。もどかしく思い、身体を起こそうとすると制止されベッドに戻される。
「とにかく今日は眠れ」
「何で?まだ聞きたいことが……っ」
「はぁ……いいか、お前は病み上がりだった。それなのに無理して転移魔法とかいう難しい魔法を使って隣国まで行って帰って来たんだ。しかもその後も休みもせず恥ずかしい話を長々とぺらぺら話しやがって」
「う……」
「頼むからもう寝てくれ。また眠り込んだらと思ったら落ち着かねーんだよ。起きたら何でも話すから」
必死に頼むジャックを見ていたら、エラは嫌とは言えなかった。エラが眠り込んでいた間、ジャックはそれほど恐ろしい思いをしていたのだと苦しいほど伝わってくる。
「分かったわ。でもね」
「ん?」
「……眠るまで隣にいて欲しい」
今ジャックが部屋を出てしまったら、エラはきっと告白して断られたあの時のことを鮮明に思い出してしまう。ジャックが出ていく背中を見るのは想像するだけで寂しかった。
「ああ、ここにいるから」
「一緒に眠る?」
「……っ、ほんと、勘弁してくれ」
「何よ」
エラは口を尖らせるが、頭を抱えたジャックを見ていたら笑いが込み上げてきた。くすくすと笑っていると「もう寝ろ」と頭を撫でられる。一晩であんなにも様々なことが起きて、考えたいことが沢山あったのに、余程疲れていたのだろう。エラはあっという間に眠りについた。
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