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第二部
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しおりを挟む最初は恩人であるエラの父への恩返しのようなつもりだった。そして彼の墓前で強がっていた少女が一人で泣くことが無いようにという思いからこの仕事に志願した。
彼女は想像以上にひねくれ者で、全てを諦めているようだった。投げやりで自分を粗末に扱う姿を見ていると、エラの父に出会う自分を見ているようで腹が立ったが、同時にどうにかして助けてやりたかった。
末端とはいえ貴族令嬢で、義姉の婚約者である王太子を略奪した筈の彼女は、妙に庶民じみていた。ジャックの作った食事は大きな口を開けてぺろりと食べるし、料理をしたがるし、掃除は下手なくせに諦めようとはしない。淑女教育はサボってばかりだったと報告を受けていたが、実際は勤勉で毎日の授業を楽しみにしているし予習復習は欠かさない。夕食中はその日学んだことを得意げにジャックに報告する姿が可愛らしかった。
ジャックの手料理を、嬉しそうに頬張る。ジャックが体調を崩せば、下手くそな看病を必死でする。ジャックの過去を聞けば、ジャックを想って怒り出す。そんな彼女を見て心が揺らがない訳が無かった。
日に日にエラへの想いが膨らんできた頃に、あの事件が起きた。曲がりなりにも騎士だと言うのに、何の手出しも出来なかっただけでなく、想い人に助けられ、そのせいで彼女が眠り込んでしまった時の絶望を言い表すことはできない。目覚めない彼女の前で打ちひしがれて毎日を過ごしていた。
漸く目覚めたと思ったら、彼女は何よりもまずジャックの身体を心配していた。愛おしさと自分への情けなさでいっぱいになったところにあの告白だ。ジャックだってあの答えが不味かったと分かってはいるが、仕方が無かった彼の心情も分かってほしい。
「ふん、やっぱりクソガキだな」
「な、何ですって!馬鹿にしないでちょうだい!」
胸の中できゃんきゃん喚く彼女の耳元で囁く。こんな姿すら可愛くて堪らないから不思議だ。
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ぽかんと呆けている顔すら愛おしい。自分の浮かれ具合にジャックは苦笑いを浮かべた。
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