【完結】就職氷河期シンデレラ!

たまこ

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第二部

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 講師の一人が前に出て、声を荒げた。

「それなら、そう仰ってくれたら良かったんですよ!」


「……先生?」


 エラは少し戸惑った。講師たちはエラに対していつも穏やかで優しかった。大声を聞いたことなんて一度も無かった。だが目の前の彼は顔を真っ赤にして怒っていた。


「おい、少し落ち着け」


「だって悔しいだろう!せっかく、毎日勉強して、仕事もして、頑張っているのだと王宮まで届いていたんだ!ここまで頑張って来たのに、たった数時間のことで悪い評価になるんだと思ったら……ここにいたいのだとそう言ってくれたら良かったのに……!」

 エラはハッとした。信頼を得るにはとても長い時間と労力が必要だ。ここに来て何度も何度もそう思ったのに。ジャックと講師たちは何度もそれを教えてくれたのに。エラの瞳にじわりと涙が浮かんだ時、いつの間にかエラの傍に来ていたジャックがエラの背中を押した。


「せ、先生……ごめんなさい。心配かけてしまって、それに応援してくれていたのにがっかりさせてしまって……私が考え無しでした」


「いえ……私も熱くなり過ぎました」


「エラさん、彼の言葉は他の講師たちの思いでもあります。反省の期間が終わってもあなたがここにいたいのなら、いられるように私たちも動きたいと思っているんですよ。どうか覚えておいてくださいね」


「はい」


「あと……ナスタジア様にお会いになったのは、長くここにいたいという理由だけでしたか?」

 優しく笑う壮年の講師に尋ねられ、エラは首を振った。


「お義姉さまに縁を切って貰うようお願いしに行ったのです」


「は?」

 ジャックの声が響いた。エラがどうしてナスタジアと縁を切ったのか、理由が分かってしまった講師たちはまたジャックを睨み付け、各々溜め息を吐いた。
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