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第二部
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しおりを挟む「良かった」
「だけどよ」
「うん」
「一人で食べるとやっぱり何の味もしねー。すっかり忘れてたわ」
その瞬間、エラの目から涙がぼたぼたと溢れ出した。ぎょっとしたジャックが拭く物を探しに行くため立ち上がろうとするが、腕を掴まれ阻まれてしまう。
ここに来てから、二人は毎日一緒に食事を取っていた。ジャックの作る、男らしい食事をエラはいつもぺろりと平らげていた。ジャックはいつも満足そうにそれを見ていた。
食事中はいつも他愛ない話をした。エラがその日学んだ授業の内容を話せば、ジャックは「へぇ」とか「ふぅん」とか気の無い返事ばかりの癖に、最後まで話を聞きたがった。講師たちの誉め言葉もエラを嬉しくさせたけど、ジャックの「お前にしちゃ、よくやってるな」なんて憎まれ口が一番聞きたい言葉だった。
「……好き」
「……は?」
「ジャックが好きなの。だから、あの時あなたを守りたいって必死だった。自分はどうなってもいいからあなただけは助けたかった」
「何、言って……」
「好き、大好き」
ぽろりぽろりと口から言葉が零れた。ジャックは見たことも無い難しい顔を見せ、エラは聞かなくても答えが分かってしまった。胸が掴まれたように苦しく、上手く息が出来なかった。またじわりと目に涙が浮かぶ。好きで好きで堪らなくて、彼の意地悪な笑顔が見たかった。いつからかずっと一緒にいたいと願ってしまっていた。
「……ごめんね」
「……もう寝ろ」
大事な人を困らせるつもりなんて無かった。そんな顔をさせたい訳では無かった。エラが小さく謝るとジャックは布団を掛け直し、背を向けて扉に向かった。
「……俺とお前じゃ身分が違うだろ」
部屋を出るジャックがそう呟いたのをエラは聞き逃さなかった。
その夜、彼女は忽然と姿を消した。
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