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第二部

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 チャーリーと見知らぬ魔法使いがエラの部屋に来たあの夜、エラはありったけの魔力を彼らにぶつけた。その結果、二人は警護に当たっていた王宮騎士がわんさかといる窓の外に放り出され、彼らは無事捕らえられた。


 エラが予想した通り、あの魔法使いはかなり凄腕だったようだ。だが、怯えるエラを見てまさか反撃するとは夢にも思わなかったようだ。ほんの少しの油断から、エラの魔力をまともに喰らってしまったらしい。取り調べによると彼はエラの義姉ナスタジアが暮らす隣国の反王政派だった。チャーリーを唆し、エラを塔から連れ出すことに成功していたら、エラはお尋ね者になっていた筈だ。王太子イザードが溺愛するナスタジアの家族が犯罪者であることで、王家への不信感を煽る腹積もりだったようだ。


「お義姉さま……」

 隣の国に住む自分でも狙われてしまうなら、ナスタジア本人はもっと危険なのではないか。エラが青褪めていると講師が優しく告げた。


「大丈夫ですよ」


「でも」


「あのイザード殿下がナスタジア様を危険に晒すと思いますか?」


「……そうね」

 ナスタジアから受け取った手紙に書かれていた、あの粘着質な王太子を思い出しエラは苦い顔で頷いた。


「……あの人は?」


「チャーリー殿下は強制労働施設に行くことになりました」


「そう……」

 エラは顔を曇らせた。彼は愚かな人間だ。だが、そこまでの罰を受ける必要があったのだろうか。エラの甘い言葉に騙され、あの魔法使いに唆され、彼一人だったらとても犯せないような過ちを二度も決行させてしまった。


「エラさん、陛下はあなたに感謝していました」


「……どうして」


「もしエラさんが殿下と共にここから逃げ出していたら、殿下は極刑になっていたかもしれません。幽閉中に逃げ出したことに加え、王族が他国の王族を脅かすような行動を取ったことになりますからね。殿下の命を守れたことに感謝していました」


「……」


「それに、殿下もきちんと労働をこなすことが出来ればそう長くない時間で強制労働施設から出られることになっています。後は殿下の努力次第です」

 講師はエラを元気づけるようににっこり笑った。そして部屋の隅で不機嫌そうに座り込んでいたジャックに視線を移した。

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