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第二部
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しおりを挟む「……何で教えてくれなかったのよ」
口を尖らせるエラを見て、ジャックは眉を寄せ頭を掻いた。
「……殿下が逃げ出したのは、お前に会うことが目的らしい」
「は?」
エラは不快そうな表情を隠そうともしない。胸の中に戸惑いと呆れが渦巻いていた。
「……もう、顔も覚えていないわ」
「ふっ」
表情を固くしていたジャックが頬を緩めると、少しだけ冷静になれた。エラは混乱した頭を整理しようと口を開いた。
「……別にあの人のことなんて好きじゃなかったわ。あの人は……そうね、思い込みの激しい所があるからそうは思っていなかったけれど。でも、その後の裁判で散々言われていたわ。私があの人のことを好きでは無かったこと……口づけ一つしなかったこと。だから……」
「エラ」
エラの言葉を遮ると、ジャックはエラの手を取った。冷静だと思い込んでいたのは自分だけで、その手はカタカタと小刻みに震えていた。
「……お前にそんな顔させたくなかっただけだ」
「へ?」
「動揺して欲しくなかった、だから最後まで隠しておくつもりだったのに……お前がひでー顔してるから口が滑った」
「……っ、酷い顔って何よ!」
「ふん」
ぐいっと頬を抓られると「ほら、ひでー顔」と揶揄われ、エラはまた口を尖らせた。
「分かってるから」
「……え」
「お前があの時の振る舞いを後悔していることも、反省していることも」
「何言って……」
「俺もお前の先生たちも分かってる。だから心配するな」
「ジャック」
「だからちゃんと大人しく守られておけよ、お姫様」
「なっ……なっ……!」
顔を真っ赤に染め上げ、口をぱくぱくしているエラを心底可笑しそうに見つめた後「こんなんで照れんのかよ」と頬を撫でられる。
「扉の前にいるから」
そう言い残し、離れる背中が見えなくなってもエラの鼓動は高鳴ったままだった。
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