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第二部
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しおりを挟む「……それで……何があったのよ」
ジャックが運んで来たマグカップにたっぷりと入ったホットレモネードをごくごくと飲み干した後、エラは窺うように尋ねた。いつも横柄なところのある彼女を自分の言動のせいで臆病にさせてしまっている……ジャックは顔をくしゃくしゃに顰めエラの頭を乱暴に撫でた。
「ちょっと……!髪が乱れるでしょ!」
「ふん、元々寝癖付いてたぞ」
「え!?」
慌てて手櫛で髪を整えるエラを見て表情を緩めたジャックは、小さく息を吐いて話し始めた。
「チャーリー殿下が逃げ出した」
「逃げ出した……って、どうやって……」
「殿下は王城の敷地内の塔に幽閉されていた。あっちの騎士の話じゃ、出入口にも周辺にも大勢の騎士たちは付けられていた……だが塔から急に消えたなんて馬鹿げたこと言ってやがる」
「消えたって……」
「伝令が来てすぐお前の先生たちが調べに行った……塔には魔力の痕跡が残っていたらしい」
「……どういうこと?」
「殿下の逃亡を手引きした者の中に魔法使いがいるってことだ」
「そんな……」
あの勉強家の義姉と違って、エラには国政の難しいこと等は全く分からない。恐らく、チャーリーが逃亡することで何か利益のある者がいて、チャーリーを誑し込み逃亡を企てたのだろう。
通常ならチャーリーの方が自分の駒に無理矢理命じて逃亡を手助けさせた可能性を考えなければならないだろう。だが短い期間ではあるがチャーリーと一緒に過ごしていたエラには分かる。彼にはそんな信用の置ける駒はいない。
「……何を考えてる」
「悪いことを考える人の口車に乗せられたんだろうなぁって。あの人が自分で考えたとして動いてくれる人はいないもの」
エラの分析にジャックは目を見開くが、すぐ頷き「騎士団の方もそう考えているみたいだ」と答える。
「ほんと、馬鹿ね。大人しくしていたらいつか出してもらえたかもしれないのに。何だかんだ言いながら陛下はあの人に甘いもの。こんな問題起こしたら、もっと厳しい罰が下されるだけだわ……何よ、その顔は」
呆気に取られたジャックの顔をエラは怪訝そうに見つめた。
「いや……お前の成長に驚いている」
「はぁ?……馬鹿にしないでよ」
「馬鹿になんてするかよ」
そう言ってジャックはまた乱雑にエラの頭を撫でた。エラは憤るが、胸の中はもうずっと感じたことの無い温かさで包まれていた。
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