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第二部
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しおりを挟む「……起きましたか?」
朝の光が眩しくて目を覚ましたエラに、講師の一人が声を掛ける。
「……先生?」
「はい。覚えていますか?エラさんは魔力を全て使い切ってしまって倒れてしまったんですよ」
ナスタジアへの手紙に必死で魔力を込めている途中でエラは意識を失ってしまった。周りに目を向けると、今寝かされているのはおそらく講師たちが運び込んだであろう、簡易ベッドに寝かされている。
「エラさんの手紙は無事ナスタジア様に届いて、ナスタジア様からこちらへご連絡をして下さったのです。よく頑張りましたね」
「……ジャックは?」
「大丈夫ですよ。先程お医者様に診てもらって、過労による体調不良とのことでした。今日一日休めば治るそうですよ」
「そう……」
「エラさんも魔力が回復するよう、今日は一日眠っていてください。食事などは準備しておきますので」
「ありがとうございます」
エラが横たわったまま小さく頷くと、講師は首を振った。
「いえ……こちらが謝罪しなくてはならないです。エラさんから他の人も雇って欲しいと言われていたのに、対応できておらず申し訳ありません。言い訳になりますが……森に結界魔法が掛かっていることもあり、夜間はジャック殿も休める環境だと考えていたのです。」
講師は申し訳なさそうに頭を下げた。そう、エラは初日に他の人間を雇って欲しいとお願いしてからも何度か講師たちに確認していた。だが、煮え切れない回答ばかりだった。だからこそ手紙を送る時に彼らを思い出さなかったのだろう。
「物置の一つをジャック殿の部屋に出来るよう準備しました。ベッドはナスタジア様が準備されると仰ったのでお願いしております。暫くしたら到着するかと思いますよ」
「お義姉さまが……」
ナスタジアは手紙を受け取った後、すぐに対応して人をよこしてくれた。そればかりかベッドの準備までしてくれているらしい。手紙を書いた時は動転していて、ごめんなさいの一言すら書いていなかったのに。優しすぎる義姉を思い出しながら、エラはまた眠りに落ちた。
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