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第二部
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しおりを挟むエラは寝付けずにぼんやりと天井を眺めていた。どれくらい長い時間が経っただろうか。
「……喉、乾いた」
だが、水を飲むためにはジャックがいるであろう扉の外を通らなくてはいけない。エラは首を振り、喉の渇きを忘れようとするが、一度気になってしまうと気になって仕方ない。
「別に、あんなやつ無視したらいいわ」
ごそごそと立ち上がり、扉の方へ向かう。エラが扉を開けようとする前に、扉の外からガタンと物音が聞こえた。
「な、なによ」
思わず身体を硬直させるエラだが、それから物音は聞こえない。恐々と扉を開ける。
「ちょ、ちょっと、ねぇ!あんた、ちょっと!ねぇ!」
そこに見えたのは、全身に汗を滲ませ、息遣い荒く倒れているジャックの姿だった。
◇◇◇◇
「ハァ、ハァ、こんなものかしら」
エラは慌てて自分のベッドへジャックを運ぶ。勿論自分の倍以上の体重がある大男をエラの細腕で運べる訳もなく、エラは飛行魔法を駆使してベッドまで運んだ。自分の身体だって浮かせてはいけないと言われていたエラだが、緊急事態ということでかなりの魔力を注ぎ込んで、ジャックをベッドへ寝かせた。
「後は……」
エラは自分が寝込んだ時のことを思い出す。ナスタジアはいつも冷たくて気持ちの良いタオルを額に当ててくれた。エラはバタバタとタオルを引っ張り出して、桶に水を汲みタオルを濡らすとジャックの額へ当てる。
「……っ、へたくそ」
「お、おきたの?!」
「こんなベチャベチャなもの頭に置かれて、眠っていられるか」
「もう!うるさいわね!」
エラは乱暴にジャックの額に置いたタオルを奪うと力任せに絞る。再度額に置くと「やっぱりへたくそ」と力なく笑うジャックにエラは胸が詰まり、言葉が出なかった。
◇◇◇◇
「どうしよう……」
ジャックが一度目覚めてから何時間も経ったが、ジャックの熱は下がることは無くむしろ上がっている。ジャックの息遣いは苦しそうになるばかりだ。
エラはこの森から出ることはできない。医者を呼びに行くことも、薬屋に走ることもできない。エラは頭を必死に働かせ、ハッと気付き紙を引っ張り出した。
「お義姉さま……」
書いた手紙にエラは必死で魔力を込めた。先程ジャックをベッドに寝かせた飛行魔法のせいで魔力は殆ど使ってしまったが、残りの魔力を振り絞る。
いつもこの塔に来る講師たちの方が、森のある男爵領で暮らしているのだから届く可能性も上がるだろう。だが、エラの頭には講師のことは抜け落ちており、必死でナスタジアへ届くよう祈った。
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