19 / 63
第二部
1
しおりを挟む「もうっ!!何で私がこんなことしなくちゃいけないのよっ!!」
辺境の地、その森の奥に一人の美しい女性がいた……言葉遣いや怒りに満ちた表情は美しいとは言い難いが。彼女の美しい容貌とは裏腹に身に着けている衣服はみすぼらしいものだった。
暗い塔の中、女性は慣れない手つきで窓を拭いていた。埃まみれになり、エプロンの裾には蜘蛛の巣まで付いている。
「ほら、さっさとしねーと日が暮れるぞ」
「もう五月蠅いわねっ!!口出さないでちょうだい!!」
「へーへー分かりましたよ、お嬢様」
「馬鹿にしないでっ!!」
「ふん」
女性の隣には、一見荒くれ者にしか見えない、武骨で髭は伸びっぱなしの男が壁に寄りかかり彼女を監視しているようだ。男の身に着けている騎士服により、漸く彼が騎士だと判断できる。彼はそれほど騎士らしくない風貌だった。
「もうっ!!何で私がこんなことしなくちゃいけないのよっ!!」
彼女は怒りが堪え切れず、また叫んだ。森中に響き渡るような大声だった。
◇◇◇◇
ナスタジアがイザードと隣国に行ってしまってから、チャーリーとエラはそれぞれ裁判を受けた。チャーリーは生涯幽閉が決定したが、エラの刑についてはチャーリーよりずっと軽いものとなった。
それには二つの理由があった。
一つ目はエラが、チャーリーとナスタジアの婚約破棄に乗り気では無かったこと。これは、国王陛下が秘密裏にチャーリーに付けていた影によって、婚約破棄に燃えるチャーリーに対してエラが止める発言を幾度もしていたことが証明されたからだ。
そして、二つ目はエラ自身が魔力を持っていたこと。
魔法使いに誰よりも憧れていた彼女自身が、魔法使いだったのだ。
17
お気に入りに追加
218
あなたにおすすめの小説
婚約破棄は綿密に行うもの
若目
恋愛
「マルグリット・エレオス、お前との婚約は破棄させてもらう!」
公爵令嬢マルグリットは、女遊びの激しい婚約者の王子様から婚約破棄を告げられる
しかし、それはマルグリット自身が仕組んだものだった……

ごめんなさい、お父様が選んだ相手でも婚約したくありません。
Mayoi
恋愛
貧乏貴族の令嬢ミシェルは父親が勧める相手と縁談することになった。
相手のダグは商人を自称するものの、信用できるような相手ではなかった。
婚約したくないと言おうが父親は許さず、ミシェルはどうにかして婚約を回避しようとした。

婚約者を交換ですか?いいですよ。ただし返品はできませんので悪しからず…
ゆずこしょう
恋愛
「メーティア!私にあなたの婚約者を譲ってちょうだい!!」
国王主催のパーティーの最中、すごい足音で近寄ってきたのはアーテリア・ジュアン侯爵令嬢(20)だ。
皆突然の声に唖然としている。勿論、私もだ。
「アーテリア様には婚約者いらっしゃるじゃないですか…」
20歳を超えて婚約者が居ない方がおかしいものだ…
「ではこうしましょう?私と婚約者を交換してちょうだい!」
「交換ですか…?」
果たしてメーティアはどうするのか…。

[完結]君に好きだと伝えたい〜婚約破棄?そうですか、貴方に愛を返せない私のせいですね〜
日向はび
恋愛
表情は動かず、愛の言葉は囁けない。そんな呪いをかけられた伯爵令嬢の元に愛する人から婚約破棄の手紙がとどく。さらに彼は腹違いの妹と恋をしているという。絶望しながらも、全ては自分の責任と別れを決意した令嬢は愛するひとに別れを告げるために彼の家へ訪れる。そこで煌めくナイフの切っ先を目にした彼女は、愛する人を守るためその身をナイフの前に曝け出すのだった。

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!
志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。
親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。
本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

記憶喪失を理由に婚約破棄を言い渡されるけど、何も問題ありませんでした
天宮有
恋愛
記憶喪失となった私は、伯爵令嬢のルクルらしい。
私は何も思い出せず、前とは違う言動をとっているようだ。
それを理由に婚約者と聞いているエドガーから、婚約破棄を言い渡されてしまう。
エドガーが不快だったから婚約破棄できてよかったと思っていたら、ユアンと名乗る美少年がやってくる。
ユアンは私の友人のようで、エドガーと婚約を破棄したのなら支えたいと提案してくれた。

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる