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第一部
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しおりを挟む「魔法使いさまっ!」
声を上げたのはエラだ。頬は上気し恍惚とした表情を見せ、うっとりと男を見つめている。
「エ、エラ……」
あからさまなエラの態度の違いに、呆然とするチャーリーだがエラは構うことなく男に近付く。
「魔法使いさまっ!私、ずっと、ずっと、貴方にお会いしたくてっ……!」
あの可愛らしいエラから、うるうると上目遣いで見つめられたらどんな男でも陥落するだろう。だが、この男はエラに一瞥もせず、未だにナスタジアに縋りついていた哀れなチャーリーを躊躇なく思いっきり蹴り上げた。
「うっ……!なっ……!」
「ナスタジアに触るな」
痛みでのたうち回るチャーリーを睨みつけ、ナスタジアを引き寄せた。
「イザード、ありがとう」
「遅くなって悪い」
イザードはチャーリーが這いつくばっている間もナスタジアの腰を引き寄せたままだ。見つめ合う二人の間には親密な空気が流れている。
「ま、魔法使いさま、あ、あの……っ!私っ……!」
エラはそんな二人の空気には構わずイザードの腕に触れようと手を伸ばした。
「近付くな」
イザードはエラの方を見ることも無く、片手を上げた。何かしらの魔法を使ったのだろう。エラは抵抗する暇も無く、ふわりと身体が浮いたかと思うと気付いたらチャーリーの隣で這いつくばっていた。
「エ、エラ……大丈夫か」
「な、なんで……」
チャーリーの心配の声も聞こえていないようだ。イザードに優しく抱かれる義姉を嫉妬の炎で燃えた瞳で睨んだ。
「ナスタジアに散々迷惑を掛けたお前に用は無い」
「な、なんでお義姉さまなんですか!本当は私が……っ!」
イザードはぎろりとエラを睨みつけた。眉間に皺を寄せ、エラを嫌悪する空気を全身に纏っている。数えきれないほどの男を手玉に取ってきたエラですら流石に怯んだ。
「お前がナスタジアに勝る点など一つも無い」
エラは呆然とし、チャーリーが何を言っても反応しなくなった。そんな姿を気に留めることも無く「ナスタジア、行こう」と甘い笑みを浮かべ、出口へと向かう。
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