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第一部
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しおりを挟む「あ、あの……ナスタジア……」
チャーリーは恐る恐るナスタジアに声を掛けた。ナスタジアはにっこり笑うと美しく礼をした。
「チャーリー王太子殿下。婚約破棄の件、承りましたわ。どうぞ義妹をお願い致します」
「ちょ、ちょっと待て……っ!」
顔を青くしてプライドを取っ払いナスタジアに縋りつくチャーリー。ナスタジアは突き飛ばしてしまおうか、流石にそれは不敬になるのか考えあぐねていると……。
「待つのはお前の方だ、チャーリー」
力強い、低い声が会場に轟いた。コソコソと……というよりガッツリ会話していた貴族達も口をつぐんだ。今まで不在だったチャーリーの父親、国王陛下が現れたのだ。
「ちっ、父上……」
ナスタジアに縋りついたままという、情けない姿でチャーリーは国王を見上げた。
「馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、ここまで馬鹿だったとは……」
国王は表情に憎悪を滲ませ、額には青筋が浮かんでいた。
「どんなに教育しても成長が見えないお前の為に、ナスタジア嬢と彼女の母上に頭を下げてお前の婚約者に据えたというのに」
「ひっ……」
国王の静かな怒りを感じ、チャーリーはガタガタと恐怖に震えた。国王はチャーリーには用は無いとばかりに視線をナスタジアへ向け頭を下げた。
「ナスタジア嬢、今まですまなかった」
「私こそ、力及ばず申し訳ありません」
「いや、ナスタジア嬢はあれの婚約者としてよくやってくれた。婚約破棄の慰謝料として、例のことを認めよう。他にもナスタジア嬢の希望があればいくらでも言ってくれ」
「いえ、陛下、例のことをお許し頂けるだけで十分ですわ。ご配慮くださりありがとうございます」
ナスタジアは麗しい笑みを浮かべ、国王へ礼をした。その時、国王の後ろから真っ黒なローブを身に着けた端正な顔立ちの男が颯爽と現れた。その美しさに会場にいる女性たちは目を奪われ、騒めきだした。
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