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第一部
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しおりを挟む「はぁっ?!嘘だろう!」
チャーリーは声を荒げ、目を丸くした。男爵家と言っても、王太子の婚約者である家に使用人がいない等と夢にも思わない。それでは平民と同じような暮らしではないか。しかし、周りの貴族たちは驚く様子もない。
「嘘ではございません……殿下。昨年この国を襲った大災害を覚えていらっしゃいますか?」
「あ、ああ」
1年前、この国を襲った大きな嵐は田畑や家屋などに甚大な被害を齎し、その被害を受けたのは国土の半分近くになる。そして、ナスタジアの母親が領主代理を務める男爵領周辺の被害が特に酷かった。
「領民を守るために、私たち男爵家は使用人を雇うお金も切り詰め、領民が少しでも苦しい思いをしないよう尽力してまいりました」
「なっ……お前のような令嬢に出来ることは無いだろう!」
チャーリーのこの一言が不味かった。先程まで小声で囁いていた周りの貴族たちの声は、怒りと興奮でざわざわと大きくなっていった。
「ナスタジア嬢が陛下へ進言してくれたお陰で、災害の被害者への見舞金が支給された」
「ナスタジア嬢は領地を隅々まで自分の足で回り、困っていることは無いか、必要なものは無いか、尋ねては生活を整えていた。そんな彼女の功績を見習い、近隣の領主もまた被害者支援に力を入れるようになった」
「ナスタジア嬢の姉も男爵領への支援を約束に、隣国の貴族との求婚を受けた。彼女からの支援を受け、早い段階で男爵領の領民は普段通りの生活に戻ることができた」
「なっ、なっ……!」
チャーリーは仮にも婚約者であるナスタジアの功績一つ知らなかったのかという視線に晒され、恥ずかしさと怒りで真っ赤になった。貴族達、そしてナスタジアにここまで馬鹿にされ、それでもチャーリーは引くことは無かった。いや、もう、引くことはできなかったのだ。
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