【完結】就職氷河期シンデレラ！

第一部

２

　周りの貴族たちが騒めく声が徐々に大きくなっていく。目の前の王太子はナスタジアの言葉に怒り心頭で今にも爆発しそうになっていた。


「おっ、お前という奴はっ！いけしゃあしゃあと！」

　チャーリーは詰るがナスタジアは気にする様子もない。


「時に、チャーリー王太子殿下。使用人のような真似と仰いましたが、この王城には使用人が何名いるか把握されておりますか？」


「はっ……、何だ、いきなり？」


「お答えください」


「はぁ、100名くらいか？」


「いえ。正確には572名の使用人が雇用されております。王太子殿下には把握しておいていただかなければ困りますね」

　適当に口にした答えに呆れた顔を見せるのはナスタジアだけではない。周りの貴族達も渋い表情を隠そうとしない。「使用人の数すら把握していないのか……」「これだから無能王太子は……」という貴族の言葉がさざ波のように広がっていく。ナスタジア主導で話が進んでいくことにチャーリーは苛立ち始めた。


「おい、ナスタジア。使用人の数と婚約破棄と何の関係が……」


「では、私の家には何名ほど使用人がいるでしょうか？」

　ナスタジアはチャーリーの問いをあっさりと無視し、話を進めた。

「は、話を聞け！そんなの知る訳……！」

「勘で構いませんよ」

　チャーリーは早くこの話を終わらせたくて、頭を巡らせた。ナスタジアは先程、王城には572名の使用人がいると言った。ナスタジアの家は彼女の母が領主代理を務めている男爵家で、貴族としての地位は低いが領地経営は国一番だと国王である父に聞いたことがある……ということはそれなりの数の使用人はいるだろう。


「50名くらいか？」





「いえ。私の家に使用人は1名もおりません」