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しおりを挟む自室でしょんぼりと項垂れていると、ドアをノックされる。返事をするとレナードお兄様が入ってきた。
「父上に久しぶりに雷落とされたんだって?何仕出かしたんだよ?」
にやにやと笑うお兄様に、渋々説明すると、お兄様は徐々に真顔になり、最後にはため息をついた。
「ルシル、お前さ、ベンジャミンにちゃんと聞いたのか?ヴィクトリア嬢のこと。」
「この三年間、殆ど会話していないのに?聞いたって、どうせ答えてなんか……。」
そう口にした途端、私の目からぼろぼろと涙が溢れ出す。三年間ずっと我慢していた涙だ。私の涙を見て、お兄様はわたわたと慌て出す。お兄様の前で泣くのなんて、もう何年もしていない。
「わ、悪い!俺が悪かったから泣くなよ……。そうだ!明日、お前の好きなチーズケーキ、食べに行こう。いくつでも食べて良いからさ。」
「へ?チーズケーキ?」
私の涙がぴたりと止まったのを見て、お兄様は「現金なやつだな。」と笑い、私の鼻をつまんだ。私が痛がるのを見て、更に可笑しそうに笑っている。……チーズケーキが嬉しいのも本当だけど、いつも私に意地悪なお兄様が、どうにか慰めようとしてくれたことが嬉しかったなんて、お兄様には絶対に言わない。
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